これまでにも、逆流性食道炎についての解説をさまざましてきましたが、反響が大きく多くの方が逆流性食道炎で苦しんでいることをあらためて実感しています。
逆流性食道炎を改善するには、生活習慣と食生活の改善が一番大切です。ただし、これらの効果が現れるまでには時間がかかります。
生活習慣と食生活の改善中に起こる逆流性食道炎の症状を抑えるために、一時的に薬が処方されることがあります。
今回は、病院でどのような薬が処方されるのか、逆流性食道炎の治療薬について解説します。
逆流性食道炎は、胃酸(塩酸)が食道に逆流してくることで食道の粘膜がびらんやただれなどの炎症を起こし、胸やけや痛みなどの症状が出る病気です。
手に塩酸がかかるとやけどをしてしまいますが、食道でそれと同じ状態が起こる病気が逆流性食道炎です。食道の粘膜は手の皮膚と同じように弱いため、そこに主成分が塩酸である胃酸が逆流してきてかかることで、食道の粘膜にやけどのような炎症が起こります。このように胃酸が食道へ逆流してしまうことで、胸やけや胃痛などのさまざまな症状の原因となるのが逆流性食道炎です。
逆流性食道炎の症状によって生活に支障を来すことがあれば、治療が必要になります。治療には、食事療法、理学療法、薬物療法があり、まずは食事療法と理学療法から行われます。
食事療法や理学療法で改善が見込めない場合や治療中に症状がひどくなる場合などに、薬物療法が選択されます。
逆流性食道炎の治療薬は、胃から食道へ胃酸が逆流するのを抑えることや胃酸の影響を食道の粘膜に出にくくし症状を緩和することを目的として処方されます。
治療薬は、大きく分けると4つあります。
・胃酸を抑える薬
・消化管機能改善薬
・胃酸中和薬
・粘膜保護薬
それぞれの治療薬について解説します。
胃酸を抑える薬は、胃酸そのものの分泌を抑える薬で、逆流性食道炎の治療でもっともよく使われる薬です。胃酸が食道に逆流する量を減らし、逆流性食道炎を起こしにくくする目的で使用されます。
薬の種類は以下の3つです。
・H2ブロッカー
胃酸は、神経伝達物質であるヒスタミン、アセチルコリン、ガストリンの伝達物質が胃壁細胞にある受容体に作用して分泌されます。H2ブロッカーはH2受容体拮抗薬のことで、胃酸を分泌するために必要な神経伝達物質をブロックし、胃酸の分泌を抑えます。
・プロトンポンプ阻害薬(PPI)
胃粘膜の壁細胞には、プロトンポンプというものがあります。プロトンポンプが、胃酸分泌を行う最終段階で働くことで胃酸が分泌されます。プロトンポンプ阻害薬は、プロトンポンプの働きを阻害するので、胃酸の分泌を抑えられます。
・カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)
カリウムイオン競合型アシッドブロッカーはボノプラザンとも呼ばれる薬で、胃粘膜壁細胞の酵素を阻害し、胃酸の分泌を抑える効果があります。プロトンポンプ阻害薬よりも効果が期待できる反面、副作用もみられるため長期の使用を控えなければならない薬です。
上記の薬は、すべて胃酸の量を抑え炎症を和らげる効果が期待できます。また、即効性があるため多くの医師が「逆流性食道炎」の診断をしたときに症状がある方に対して最初に処方する薬です。
食道は、口から食べ物が送られると収縮運動によって胃へ食べ物を送ります。また、胃も食べ物を消化しながら収縮運動を行い食べ物を十二指腸へ送ろうと働きます。
胃の中に食べ物が残っていると、食べ物を消化するために胃酸が出続けます。このため胃の動きが悪く、食べ物が胃の中に残る時間が長くなれば長くなるほど、胃酸の分泌量は増加し、食道へ逆流する胃酸も増えてしまいます。
消化管機能改善薬は、食道や胃の運動をよくすることで、食道への逆流を抑えつつ、胃から十二指腸への食べ物の流れを手助けすることが目的の薬です。
食道や胃の動きは、自律神経のひとつである副交感神経が調節しています。消化管機能改善薬は、この副交感神経を調節するアセチルコリンという神経伝達物質の働きを調節し胃の動きをよくします。
食道の収縮運動がサポートされ強化できれば、仮に胃酸が逆流しても押し戻すことができるだけでなく、胃で消化吸収した食べものをスムーズに十二指腸へと流すことが可能になります。食べ物が胃の中にとどまる時間が短くなれば、相対的に胃酸の分泌量も低下し、食道へ胃酸が逆流しにくくなることにも繋がります。
胃酸中和薬は出過ぎてしまった胃酸を中和することで、胃酸による炎症が起こるのを防ぐ薬です。
アルミニウム、カルシウム、マグネシウムなどの金属は、酸を中和する働きを持っているため、胃酸中和薬には主成分として水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウムが配合されています。市販の胃薬にも配合されている成分です。
医師は、逆流性食道炎の治療薬として使用する他の薬をサポートするために処方する場合がありますが、そこまで強い効果は期待できないため胃酸中和薬だけを単独で処方することはあまりありません。
粘膜保護薬は、食道の粘膜を薬で保護し胃酸が逆流してきても粘膜が刺激を受けにくくする薬です。主成分は海藻の滑り成分でドロッとした液体の薬です。粘膜保護薬を飲むと、食道の粘膜を薬が覆うため、胃酸が逆流してきても粘膜に直接胃酸が触れにくくなるため、炎症を起こしにくくなります。
食道は、胃の粘液のように自らの粘膜を守れるような機能を持っていません。このため粘膜保護薬を服用することで、食道も胃と同じように粘膜を覆うことで炎症を起こしにくくします。
逆流性食道炎の治療薬には、大きく分けて胃酸を抑える薬、消化管機能改善薬、胃酸中和薬、粘膜保護薬の4つありますが、どの治療薬を選択するのかは次のような条件によって異なります。
・年齢
・逆流性食道炎の程度
・食道の炎症の強さ
これらの条件を参考にしながら、4つの薬をそれぞれ単独、もしくは組み合わせながら治療していきます。
繰り返しになりますが、逆流性食道炎の治療で最も大切なことは生活習慣と食生活の改善です。ただし、これらによる症状の改善には時間がかかるため、症状がひどい場合には、逆流性食道炎の症状を抑えるために、薬が処方されることがあります。
治療薬はあくまで症状を軽減させるためのサポートとして使用し、症状を緩和しながら生活習慣と食生活の改善という根本的な治療を進めていくことが大切です。
治療薬は効果が期待できる一方、長期的な服用は、副作用が出現するリスクがあります。
このため、症状がひどい短期間だけ使用するようにしましょう。治療薬を何年も飲み続けることは、おすすめしません。
逆流性食道炎は、胃酸を増やす食べ物の過剰摂取や暴飲暴食や肥満以外にも、原因があります。ストレスもその一つです。ストレスによって自律神経の乱れが起こると、胃の動きが悪くなり逆流性食道炎を起こしやすくなることもあります。
専門医が治療薬を処方するのは、あくまでも一時的な強い症状を抑えるためです。逆流性食道炎が起きている原因を特定し、それらを改善していくことが治療としてはもっとも重要です。
胃酸が逆流することで、胸やけや痛みなどさまざまな症状を起こす逆流性食道炎ですが、原因は一人ひとり異なります。
生活習慣や食生活の見直しをするのが一番ですが、まずは原因を明確にすることが改善の近道に繋がります。
逆流性食道炎の多くは、食道と胃の入り口に緩みがあることで発生します。それ以外にも、就寝前の夜遅くに食べ過ぎてしまう習慣がある方にも発生しやすくなります。
食道と胃の入り口の緩みは、加齢に伴う下部食道括約筋の筋力の低下により起こりやすくなりますが、運動不足による肥満や姿勢の悪さからも原因になります。
また、就寝前に食べ物を多く食べると就寝中に胃酸が出ます。横たわった姿勢では、胃の入口が下になってしまうこともあり、胃酸が逆流しやすくなります。
このように逆流性食道炎は、加齢変化に加えて、生活習慣や食生活の乱れによっても症状が出やすくなるため、原因となる生活習慣や食生活の乱れを改善させることなく、治療薬だけで治すことは残念ながら出来ません。
根本的に症状を無くすには、生活習慣や食生活の改善が重要です。
逆流性食道炎は、基本的には生活習慣病の一種です。
治療のためには、生活習慣の改善という患者さん一人ひとりの努力が鍵となります。
生活習慣の乱れは、逆流性食道炎だけでなく、将来的に様々な病気を引き起こす原因になる可能性があります。
逆流性食道炎は、これまでの生活習慣の乱れを見直すいいきっかけです。
症状を無くすためにも、将来の病気を予防するためにも、まずは生活習慣の見直しをし、改善していきましょう。
逆流性食道炎は、生活習慣と食生活の改善が根本的な治療ですが、症状改善には時間がかかります。
そこで、根本的な原因が改善されるまでの間、逆流性食道炎に伴う症状を緩和するサポートをするのが、治療薬の役目です。
治療薬で症状が軽減できたとしても、胃酸が逆流する原因が残っていれば、それは一時的なものにすぎません。薬を中止するとすぐに再発を繰り返します。
薬は、あくまでも根本的な原因の除去までの症状緩和のサポートでしかありません。
しっかりと生活習慣と食生活を見直し、改善することで逆流性食道炎の根本的な改善を目指しましょう。
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この記事を書いた人
秋山 祖久医師
国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。