内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

胃底腺ポリープって何?原因や治療について

人間ドックや健康診断などで、胃のバリウム検査を受け「胃に良性ポリープがある」という診断結果が届いたら「治療しなければいけないのでは?」と思う方もいらっしゃるかと思います。

しかし、必ずしも治療が必要というわけではありません。胃の良性ポリープは、色々な種類がありますが、その中でも日常診療で遭遇することが多い良性のポリープが胃底腺ポリープと過形成性ポリープです。そこで今回は、胃底腺ポリープや、ポリープが良性の場合における治療などについて解説します。

1. 検査で見つかるポリープについて

患者に説明をする女性医師
私たち内視鏡医が、胃カメラ検査をする際に遭遇することが多いポリープに、過形成性ポリープと胃底腺ポリープがあります。どちらも良性ですが、特に多いのが、胃底腺ポリープです。
ポリープ
胃のポリープは、分かりやすく説明すると、正常な胃の粘膜に出来た盛り上がったできもののことです。

健常な胃粘膜の表面はツルツルしているので、胃粘膜に隆起が見つかった場合は、形や色などから、それがどういったポリープなのかを判断します。

1-1. 胃底腺ポリープと過形成性ポリープの違い

胃底腺ポリープと過形成性ポリープはともに良性のポリープです。いずれもがん化するリスクは低いといわれています。

胃底腺ポリープは、一部を除き治療は不要で、自然消滅するケースもあるポリープです。
一方、過形成性ポリープはピロリ菌除菌後に消失することがありますが、自然に消滅することは少なく、2cm以上の大きさになるとがん化するリスクがあるポリープです。

胃底腺ポリープと過形成性ポリープは、見た目が異なるため、どちらのポリープであるかは、色や形などから推測が可能です。

2. 胃底腺ポリープとは?

飲み薬
胃底腺ポリープは、周囲の正常な胃の粘膜と同じ色調をしたポリープの表面がツルツルした良性のポリープです。名前の通り、胃底腺領域という胃の粘膜のヒダがある部分に発生しやすいポリープです。

大きさは5mm以下の場合が多く、多発するケースがありますが、単体で1個だけできている場合もあります。

胃底腺ポリープは、中年女性にできやすいといわれるポリープですが、男性にも若年者にも発生します。また、胃がんの原因といわれている、ヘリコバクターピロリ菌に感染していないきれいな胃にできやすいともいわれています。

胃カメラで定期的に何年か検査をしていると、数が増減したりサイズが変化したり、ときには自然消滅している場合もあります。

検査のあとに医師から「胃にポリープがありますが、問題ありません」と言われたときは、多くの場合は、胃底腺ポリープです。

2-1. 胃底腺ポリープができる原因とは?

胃底腺ポリープがどうしてできるのか、はっきりとした原因はまだ不明です。
しかし、女性にできやすいポリープということから、女性ホルモンと関連があるのではないか?といわれています。
また、胃薬の服用との関連がある可能性も指摘されています。
逆流性食道炎などの治療で、プロトンポンプ阻害薬という胃酸を強力に抑える胃薬が処方されますが、長期間服用すると胃底腺ポリープが腫大したり数が増えたりするという報告があります。また、内服により胃底腺ポリープができやすくなるともいわれています。

胃薬の服用中に胃底腺ポリープが、発見・増加・腫大したケースでは、服用を中止するとポリープが小さくなる、消えるというケースも多く、内服との関係性が考えられています。

2-2. 胃底腺ポリープの症状とは

胃底腺ポリープがあっても身体には何も症状がないケースがほとんどです。そのため、胃カメラやバリウム検査を受けたときに偶然発見されるケースがほとんどです。

胃カメラ検査で見つかった場合は、ポリープと正常な粘膜の表面を直接目で見て比較ができるため、見た目だけで胃底腺ポリープかどうかをある程度診断することが可能です。

しかし、バリウム検査で見つかった場合は、ポリープがあるということは判断できても、そのポリープが胃底腺ポリープなのかどうかも含めて診断ができません。何か胃の中にポリープを疑う異常がある、という診断になります。

つまり、バリウム検査では良性のポリープなのか悪性(がん)なのかの診断はできません。

もしもバリウム検査で「ポリープがある」「精密検査が必要」という診断が出た場合は、胃カメラ検査を受け、そのポリープがどういったものなのかを調べるようにしましょう。

3. 胃底腺ポリープはがん化する?

病理検査
胃底腺ポリープは、がん化のリスクがきわめて低い良性のポリープです。しかし、非常にまれですが、胃底腺ポリープのがん化例も報告があります。

良性のポリープであるということだけで安心せず、胃底腺ポリープが指摘された場合は、定期的に経過観察をするようにしましょう。
何年も胃カメラ検査をせず、放置するのはおすすめしません。

3-1. 定期的な胃カメラ検査を受けるメリット

胃底腺ポリープを指摘された場合は、定期的な経過観察を目的として、年1回の胃カメラ検査を受ける事をおすすめします。非常に稀ですが、がん化の報告もあるからです。

胃カメラ検査では、サイズが急激に大きくなっていないか、胃底腺ポリープの表面の状態やポリープの形がいびつになってないかなどを観察します。

基本的には治療が不要なポリープですが、経過観察の過程でポリープに異変があった場合には治療するケースもあります。

たとえば、ポリープの形がいびつに変形したり、細かい血管がポリープの表面に現れたりなど、典型的な胃底腺ポリープとは明らかに違う場合です。そのような異常がある場合は、組織を採取し、病理検査をします。

病理検査で病理上がんと診断された場合には、内視鏡で切除するケースがあります。もし良性ポリープからがん化しても、定期的な胃カメラ検査を行っていれば、早期治療につながります

3-2. 胃底腺ポリープに似ている胃がんとは

近年、胃底腺ポリープに見た目が似ている胃底腺型胃がんという胃がんの報告もあります。

ポリープの判別や診断、治療については、胃カメラ検査の知識や経験が豊富である専門医に相談しましょう。

4. 胃底腺ポリープが発見された時点で切除が必要な人

家族
胃底腺ポリープは良性のポリープであるため、基本的には治療は不要ですが、家族性大腸腺腫症という遺伝疾患のある人は、がん化のリスクがあるため予防的に切除が必要です。

4-1. 家族性大腸腺腫症の方

家族性大腸腺腫症は、40歳くらいまでに大腸がんが必発する遺伝性の病気です。家族性大腸腺腫症は、8,000人〜14,000人に1人の確率で発症するといわれています。15歳までにポリープができる割合が50%、35歳までには95%の割合でポリープができるといわれているのです。

遺伝性の疾患のため、家族性大腸腺腫症の親を持つ子は、出生から5歳まで年1回のスクリーニング検査が推奨されています。

家族性大腸腺腫症は、大腸に100個以上の腺腫ができます。腺腫とは、元々は良性ですがのちにがん化するポリープのことです。家族性大腸腺腫症は特殊な病気のひとつで、大腸がんになる前に予防として、大腸をすべて切除する治療が行われます。

家族性大腸腺腫症の方に胃底腺ポリープが発生すると、非常に高い確率で異形成(がん)になりやすいと言われています。
このため、胃がん予防のために胃底腺ポリープであっても切除するケースがあります。

家族性大腸腺腫症の人は、胃だけではなく、十二指腸にある良性のポリープもがん化する確率が高く、年に1度は胃カメラで胃や十二指腸にポリープが出来ていないかをスクリーニング検査することが推奨されています。ポリープが発見されれば、その都度治療を検討します。

親子間だけではなく、親族に家族性大腸腺腫症の患者がいる場合も胃底腺ポリープの治療対象となるケースがあるため、熟知した専門医に相談するといいでしょう。

5. まとめ

胃のイメージ
胃底腺ポリープは良性のポリープですが、バリウム検査だけでは胃底腺ポリープという診断ができません。また、胃底腺ポリープができる原因は現時点では明確ではありませんが、女性ホルモンの関与が考えられています。また、逆流性食道炎でプロトンポンプ阻害薬という胃酸を抑える胃薬を長期間服用している方も、胃底腺ポリープができやすいとされています。

人間ドックや健康診断などを受け「胃に異常がある」と診断された方や、逆流性食道炎などの治療でプロトンポンプ阻害薬を長期間服用している方は、胃カメラでポリープができていないかを検査しましょう。

胃底腺ポリープが見つかった場合にも放置せず、年に1度胃カメラで経過観察をし、異常があれば治療できるように備えることが大切です。

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この記事を書いた人

萱嶋 善行医師

福岡大学医学部卒業。
福岡大学病院など多くの総合病院で消化器内視鏡検査・治療を習得。
病理診断にも研鑽を積む。2023年3月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。