内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

腸活の歴史を紐解いてみよう!

近年、「腸活」が大ブームとなり、芸能人もこぞって腸活をしています。
巷には「腸活」に良いとされる食べ物やサプリメントで溢れており、「腸活」は完全に市民権を得たと言っても過言ではありません。

今回は、「腸活」の歴史について振り返り、「腸活」についての知識をアップデートしていきましょう!
そして、現在の「腸活」のトレンドについても考察していきたいと思います。

A.「腸活」の歴史を振り返ってみる

それでは「腸活」の歴史を紐解いてみましょう。


1989年:イギリスの微生物学者であるフラー博士が「プロバイオティクス」を定義しました。
「プロバイオテイクス」を一言で言うと「生きた善玉菌を摂るために、発酵食品を摂りましょう。」という意味です。
この時代から、ヨーグルト、チーズなどの発酵食品を摂ることでお腹から健康になることができると言われるようになりました。



1994年:イギリスのギブソン博士とベルギーのローバーフロイド博士が「プレバイオティクス」を定義しました。
「プレバイオティクス」を一言で言うと「腸内の生きた善玉菌を育てるために、食物繊維やオリゴ糖を摂りましょう。」という意味です。

これまで、食べ物は小腸で吸収され、大腸には栄養を吸い取られた後の残りカスが溜まっていると考えられていました。その代表が食物繊維です。この残りカスと考えられていた食物繊維が腸内細菌の善玉菌のエサになり、これにより腸内環境を良くすることができると考えられるようになりました。



1995年:ギブソン博士とローバーフロイド博士が
「プロバイオティクス」+「プレバイオティクス」=「シンバイオティクス」を提唱しました。
善玉菌を食べ物から摂取して、同時に腸内に存在している善玉菌を育てるという、この「シンバイオティクス」を行うことで、それぞれを単独で行うよりもより相乗効果が得られるという考えになりました。
この「シンバイオティクス」こそが現在の「腸活」の基礎となっています。



1998年:日本の光岡知足先生が、「バイオジェニックス」を提唱しました。

「バイオジェニックス」とは、生きた腸内細菌を介することなく、免疫賦活作用、がん予防、コレステロール低下作用、血圧低下作用などに働きかけよう、と定義されています。

「バイオジェニックス」は、殺菌された乳酸菌、乳酸菌の菌体成分、乳酸菌の代謝産物を直接摂って健康になりましょう、という考えです。
ただ、そのためには1日1兆個ほどの乳酸菌と摂りましょう、と光岡知足先生は提唱しています。



2021年:「バイオジェニックス」とほぼ同じ意味である「ポストバイオティクス」が誕生。
これは、国際プロバイオティクス・プレバイオティクス協会(ISAPP)が提唱しました。
「ポストバイオティクス」とは、健康に有効な作用をもたらす不活化した菌体、または、その菌体の構成成分やその代謝物を積極的に摂りましょう、と定義しており、ほぼ「バイオジェニックス」と内容は同じです。

つまり、腸活は今や「ポストバイオティクス」の時代ということになります。

B.現在の「腸活」のトレンドはこれだ!

このように、「腸活」の歴史を振り返ってみると、現在の「腸活」のトレンドは「ポストバイオティクス」ということになります。

なぜ2021年に「ポストバイオティクス」が提唱されるようになったのかというと、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が、実際にどのようにして健康に寄与するのかが分かってきたからなんです。
簡単に説明すると

  1. 乳酸菌やビフィズス菌の菌体成分(タンパク質や核酸など)が、薬のように効果を発揮することが分かってきた
  2. 乳酸菌やビフィズス菌が食物繊維やオリゴ糖をエサにして作り出す産生物質が効果を発揮することが分かってきた
です。

これらに関しては1990年代からなんとなく分かってはいたのですが、立証はできていませんでした。
それが研究を重ね、本当にそうであるという事が科学的にも分かってきたため、ISAPPが「ポストバイオティクス」として提唱するようになったんです。

1に関しては、菌体成分が体内に入れば効果を発揮しますので、菌が生きていようが死んでいようが効果に差はないです。死菌でOKですので、とにかく1日1兆個くらいは摂るとより効果的だと考えられます。

2に関しては、生きた菌が産生するものですので、生きた善玉菌を増やせば良いわけです。ただ、善玉菌を増やすのも良いですが、乳酸菌産生物質をサプリメントなどで直接摂取してあげればより効果的と言われています。


結論として、現在の「腸活」の最新トレンドとしては

食物繊維、オリゴ糖など善玉菌の大好物であるエサを摂取して自前の乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌などを育てる。

→自前の善玉菌をきちんと育てることにより、善玉菌が増える。これによって、善玉菌自身が持っている菌体成分が薬のように腸内で効果を発揮する。また、善玉菌がエサを食べることにより、産生物質を沢山産生し、これが腸内で効果を発揮する。

自前の善玉菌を増やすだけでなく、乳酸菌や乳酸菌産生物質を直接とることで、さらに効果を増やしてあげる。

→一番手っ取り早いのは整腸剤などのサプリメントを効率よく摂取すること。
以上になります。


いかがだったでしょうか。「腸活」の歴史を学ぶことで、現在の「腸活」のトレンドが見えてきたのではないかと思います。

これらを参考にしながら、早速今日から「腸活」を始めていきましょう。
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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。