内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

胃のポリープは放っておいて大丈夫?お腹のプロが徹底解説

ポリープとは病名ではなく形状を指す言葉で、粘膜にできる局所的に隆起したイボ状のものを指しています。広い意味では、粘膜下腫瘍や腺腫なども含めてポリープと言われることもあります。

ポリープは単に炎症レベルのものから、良性でがん化の恐れのないもの、がん化する悪性のものまで幅広く存在します。一般的にポリープと聞くと「大腸ポリープ」や「声帯ポリープ」を想像する人は多いと思いますが、胃や食道、胆のう、子宮、鼻など体のさまざまな箇所にも発生します。

なかでも、胃のポリープはバリウム検査や胃カメラ(上部消化管内視鏡)検査で発見されることがあるものの自覚症状がほとんど出ないため、もし胃にポリープがあると医師に指摘された場合「がんになるのではないか?」「すぐに切除しなければ」と不安になる人もいるかもしれません。

今回は、胃のポリープとはどんなものか?放っておいても大丈夫かどうか、胃ポリープの治療方法や予防法について詳しく見ていきます。

1. 胃のポリープとは?

胃痛のイメージ
胃のポリープは、胃の粘膜の表面に発生する隆起性病変のことを言います。胃のポリープは症状がでないことが多く、もし胃にポリープができた場合は慢性胃炎を同時に発症していることがあります。慢性胃炎として現れる症状としては、胃のもたれや食欲低下、胸やけ、膨満感などがあります。

なお、胃のポリープは良性のポリープと悪性のポリープ(がん)の2つに分けられますが、良性のポリープはさらに胃底腺ポリープと過形成ポリープに分けられます。

1-1. 胃底腺ポリープとは?

胃底腺ポリープとは、ヘリコバクター・ピロリ菌感染のない胃の粘膜に発生する良性の隆起で、比較的若い人が発症することの多いポリープです。女性ホルモンが関係していると言われており、女性に多く発症します。胃底腺の粘膜に数個以上発生しますが、周囲の粘膜と同系色の2~3㎜程度の小さなものであり、がん化することがほとんどなく切除の必要がない経過観察対象のポリープとされています。

1-2. 過形成ポリープとは?

過形成ポリープとは、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染した萎縮性胃炎のある胃に発生するポリープです。色は赤色で胃のどの部分にもでき出血やびらんが伴うことがあります、大きさは大小さまざまですが、小さいものは1cm以下、大きいものになると2~3cmほどに成長することもあります。

この過形成ポリープは、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌が行われると小さく消滅することが多く、通常はポリープがあったとしてもそのまま放置され経過観察対象となります。ただし出血している場合、また2~3cm大のポリープの場合はがん化のリスクもあるため、切除することが多いです。

1-3. 腺腫性ポリープとは?

胃底腺ポリープ、過形成ポリープ以外にも腺腫性ポリープと呼ばれるものも存在します。この腺腫性ポリープは一般的に「胃腺腫」と呼ばれるもので、通常はがん化しにくい胃のポリープの中でもがん化しやすいポリープとされています。特に2cm以上の大きさになるとがんの合併が疑われ、内視鏡検査により組織採取され、その結果によっては切除されることが多いポリープです。

2. 胃のポリープと大腸ポリープの違い

人体模型
大腸ポリープの場合は大腸腺腫や過形成性ポリープが多く、特に腺腫は腫瘍性のものでがん化する可能性が高いこともあり、大腸ポリープは大腸内視鏡検査の際に切除されることがほとんどです。

一方胃のポリープは、先ほどご紹介したように胃底腺ポリープや過形成ポリープ両方ともほぼがん化することはまずありません。大腸および胃の両方に過形成ポリープという名称のポリープが存在しますが、それぞれ組織が違うため、取るべきか取らざるべきかは胃と大腸で全く異なります。胃のポリープは切除しなくても基本的に問題ありませんが、大腸ポリープは切除するのが基本路線です。

大腸の場合はポリープを経てがんになるケースが非常に多いものの、胃の場合はポリープを経ず最初からがんとして発生します。よって胃のポリープは胃がんになることがほとんどなく、経過観察処置が取られるのです。

3. 胃のポリープの検査・治療方法

内視鏡
胃のポリープ検査および治療方法ですが、正確な診断のためにはバリウム検査または胃カメラ検査を行います。ただしバリウム検査では正確に描出することが難しいため、胃カメラ検査で直接胃の粘膜を観察するのが確実です。

通常1cm以下のポリープの場合は、胃底腺ポリープ、過形成ポリープ、腺腫性ポリープいずれの場合も経過観察が取られます。しかし、2cm~3cmのポリープの場合、過形成ポリープまたは腺腫性ポリープの場合は内視鏡的ポリープ切除術(ポリベクトミー)やEMR(内視鏡的粘膜切除術)によって切除を行います。

3-1. 内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)について

内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)は、内視鏡を使って胃の中にあるポリープを切除する治療法です。開腹手術を行わなくて済むため、患者さんの治療における負担が軽減される特徴があります。

内視鏡的ポリープ切除術にて切除可能なポリープは、隆起上の茎がある10㎜~15㎜以下のものとなります。この切除方法ですが、高周波スネアと呼ばれるワイヤー状の器具をポリープの根元にかけ、スネアを締めて高周波電流を流しポリープを焼き切ります。切除したポリープは回収して組織検査を行い、がん化しているポリープかどうかを確認します。

3-2. EMR(内視鏡的粘膜切除術)について

EMR(内視鏡的粘膜切除術)も内視鏡を使い、ポリープを高周波電流で焼き切る施術です。ただし、EMRは内視鏡敵ポリープ施術と違い、平坦なポリープを切除する場合に、粘膜下に生理食塩水を注入し、ポリープを浮かび上がらせたのち高周波スネアをひっかけて高周波電流で焼き切ります。EMRは粘膜下層以下の固有筋層などを傷つけることがありません。そのため偶発的な出血はありますが、比較的負担が少ない切除術となります。

4. 胃のポリープを予防するためには?

ジャンクフード
胃にポリープができやすい人の特徴として、胃底腺ポリープはヘリコバクター・ピロリ菌に感染していない人、過形成ポリープはヘリコバクター・ピロリ菌に感染している人にできやすいとされています。つまりヘリコバクター・ピロリ菌がいてもいなくても胃のポリープはできるため、それ以外の要因を予防・改善することで胃のポリープをできにくくする必要があります。

また胃がんや胃ポリープなど、胃に関する病気のリスク因子としては

・ストレス
・脂っこい食事
・コーヒーなどのカフェインや香辛料の摂取
・暴飲暴食
・過度な飲酒
・喫煙
・睡眠不足
・肥満

などが挙げられます。日頃の生活習慣や食生活を見直し、ストレスを溜めない生活や適度な運動、バランスの取れた食事、禁煙・禁酒、十分な睡眠をとるなど規則正しい生活を送るように努めましょう。

なお、胃にポリープができやすい人は遺伝的な要因もあると言われています。家族の中で胃がんにかかった人がいる場合、胃がんリスクおよび胃ポリープが発生する可能性が通常よりも高いと考えられます。よって、早い年齢のうちから胃カメラ検査を受け胃がん・胃ポリープのリスクを減らすように心掛けましょう。

5. まとめ

定期検査
以上、胃のポリープとはどんなものか?放っておいても大丈夫かどうか、胃ポリープの治療方法や予防法ついて紹介してきました。

胃にできたポリープは大腸のポリープと異なり、経過観察が取られる場合が多いため、比較的安易に考えられがちです。しかし、ポリープから胃がんに発展することは少なくてもいきなり胃の粘膜部分から胃がんが発生するリスクがあること、初期段階では自覚症状がないこともあり、定期的な検査を行って胃の中を観察することが非常に大事となります。

胃のポリープや胃がんの早期発見のためには、胃カメラ検査が非常に有効です。1年に1回は消化器内科で胃カメラ検査を受診することをおすすめします。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。