内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

「苦しくなく痛みに配慮した内視鏡検査」と「検診での流れ作業的内視鏡検査」ではどのような違いがあるの?

胃や大腸の内視鏡検査は「苦しい、つらい」というイメージを持っていませんか?
そのイメージはどこからきているのでしょうか?
内視鏡経験者の方は自分の実体験から、まだ未体験の方は周りからの情報でそのようなマイナスイメージを持たれているのだと思います。

なぜ当院では「苦しくない痛みに配慮した内視鏡検査」を患者さん全員に提供しているのか

01 みなさまに定期的に内視鏡検査を受けていただき「がん」を早期発見して早期治療につなげていただきたいという思いが強くあります

定期的に内視鏡検査を受けていただくことで
「がんになって欲しくない」
「がんになったとしても早期に発見して外科的手術ではなく、内視鏡のみで治療したい
と常に考えております
当院に来る患者さんの中には、以前に他院や人間ドックなどで受けた苦しくて辛い内視鏡検査が「トラウマ」となり、その後数年~数十年間内視鏡検査を受けていない方がいます。残念ですが、そのような方の一部で進行がんが発見されることがあります。
その時にいつも患者さんは
「症状がないから検査受けなくて良いかと思っていました。定期的に内視鏡検査を受けていればこんなことにならなかったのに…….悔しいです…..」
と後悔され、自分を責めてしまいます。このような場面を我々は見たくありませんし、私たちの大切な患者さんを絶対にこのような目に合わせたくありません。
進行胃がん

進行胃がん

以前の検診での経鼻内視鏡検査が苦しくて辛かったため、それが「トラウマ」になり、胃カメラを受ける事を数年避けてきた患者さんです。症状は胃の軽度の不快が時々あるぐらいでしたが、友人が胃がんで亡くなったため心配になり当院受診されました。胃カメラにて胃の半分ほどを占める進行胃がんが見つかりましたが、これほどの大きさになっても自覚症状などは当然出ていませんでした。
「苦しくなく痛みに配慮した内視鏡検査」を提供することで、みなさまに
「苦しくないなら取りあえず1回ぐらいは内視鏡検査を受けてみようか」
と思っていただける
そしてその一度受けていただいた内視鏡検査で
「がんがあれば発見できる」
がんが無くても
「苦しくなかったから今後は定期的に内視鏡検査を受けていこうかな」
という思いが出てきて、内視鏡検査を定期的に受けていく動機づけができます。そして何より定期的に内視鏡検査を受けることで多くの命が救われるのです。平成23年に開院した横浜院では内視鏡検査を受けた方のほとんどがリピーターになってくれています。
定期的に内視鏡検査を受けることで、がんがあっても早期発見につながりますし、大腸内視鏡検査に限っていえば大腸ポリープを早期に切除することにより大腸がんの予防にもつながります。大腸ポリープを切除することが「究極の大腸がん予防」と言われている所以です。
大腸ポリープ

大腸ポリープ

写真のように将来がん化する可能性の高い「腺腫」と呼ばれる大腸ポリープを早期に見つけて切除することで大腸がんに進展する事を予防することが可能となります

02 「内視鏡検査をじっくりと丁寧に行うことができる」というのも理由のひとつです。

検診などの鎮静剤を使用しない胃内視鏡検査や経鼻内視鏡検査の場合、口の中にカメラがあることで、「オエッ」となる反射が検査中ずっと続く事が少なくありません。また、胃を膨らませるために空気を入れると、腹部の膨張感からゲップが出そうになります。鎮静剤を使用しない大腸内視鏡検査の場合は、おなかを突き上げられるような腹痛、腸が膨らんでいるときの膨張感・肛門に内視鏡が触れる違和感・痛みなどが生じます。
このような辛くて苦しい内視鏡検査を受けている患者さんは
「長く続けてほしくない、早く苦痛から解放されたい」
と思い続け
我々医師は
「早く楽にさせてあげたい、なるべくサッと観察して早く検査を終わらせてあげよう」
と考えが生じることで
「内視鏡検査をじっくりと丁寧に行い、きちんと詳細に観察する」という最も最も大事な詳細観察を行うという事は困難になってしまいます。
また、のどの反射があると胃の動きが激しくなってしまい詳細な観察できません。またゲップが頻回に生じると空気を入れても胃が膨らまず、ヒダとヒダの間をきちんと観察できません
鎮静剤を用いることでこのような喉の反射やゲップが抑えられるため、内視鏡医はじっくりと詳細に観察に集中することができ、きちんとした検査ができるためがんの早期発見につながります。
このように「苦しくなく痛みに配慮した内視鏡検査」を行うことによるメリットは本当にたくさんあります。
鎮静剤を使用

鎮静剤を使用

鎮静剤を使用して軽くウトウトしたまま胃カメラを行うとゲップが出ないため胃を十分に含ませることが可能となり、ヒダとヒダの間まできちんと詳細に観察できます
鎮静剤を使用しない

鎮静剤を使用しない

鎮静剤を使用しない検診の胃カメラや経鼻内視鏡検査では、空気を入れると胃の張り裂けそうな膨張感を感じ、自然とゲップが出てしまい、胃がきちんと膨らみません。ヒダとヒダの間の詳細な観察ができないまま内視鏡検査が終了してしまう可能性も出てきます。
早期胃がん

早期胃がん

写真のような早期胃がんは十分に胃の中に空気を入れてヒダをきちんと伸ばさないと、ヒダとヒダの間に容易に隠れてしまい、見逃されてしまいます

「苦しくなく痛みに配慮した内視鏡検査」と「検診での流れ作業的内視鏡検査」ではどのような違いがあるの?について

我々が行っている「苦しくなく痛みに配慮した内視鏡検査」は上記のようなメリットがあるのですが、多くの手間と時間もかかります。そして検査後にゆっくりと休んでいただける広々としたスペースと患者さんをケアする多くのスタッフを揃えないといけないなどと多額の費用もかかってしまいます。
我々は、患者さんに「苦しくなく痛みに配慮した内視鏡検査を受けていただきたい」「定期的に内視鏡検査を受けることで早期発見・早期治療に繋げていただきたい」という強い思いからこのような内視鏡検査を提供しています。
また、患者さん各々に合わせた検査時間を確保したり、患者さん各々に合わせた鎮静剤を使用することにより満足していただける検査を目指しています。
では、検診の内視鏡検査はどうでしょうか?
我々内視鏡医のほとんどは検診の内視鏡検査をアルバイトとして経験しています。
その時に我々が感じることがあります。

01 時間が限られており、患者さん各々にじっくりと時間がさけない

多くの患者さんの内視鏡検査を流れ作業で行うため、検査時間の節約や結果説明の時間の節約をしなくてはならない。

02 鎮静剤を使えない

鎮静剤を使用した内視鏡検査を提供しようとすると、スペースや人員が必要なため使えないことが多く、また内視鏡以外の検査もあるため検査後に1時間も休まれると困る。

03 オーダーメイドの内視鏡検査ができない

鎮静剤が使える場合でも、患者さんの状態などがしっかりと把握できないため、患者さんに適した鎮静剤量がわかりません。また、検診施設で多いのは「当院では鎮静剤の種類と量は決まっています」と言われることです。明らかに鎮静剤量が少なく、苦しい内視鏡検査になることが予測されるのに鎮静剤の調整ができません。

04 結果説明は別の医師がする、もしくは後日郵送されるため理解が不十分

①のように結果説明の時間は短いことも多いのですが、施設によっては検査担当医と説明担当医が違うことが少なくありません。最悪な検診施設では「結果は郵送されます」とだけ伝えられることもあります。
このような理由から検診の内視鏡検査は流れ作業的に行われることが多く、そして苦しくつらい検査となることが多くなってしまいます。結果説明も詳しく行われないことから、患者さんは自分の病態をよく理解できずあやふやなままになってしまいます。それでは何のための内視鏡検査なのでしょうか?


内視鏡検査は1回だけで終わるものではありません。がんの早期発見・早期治療のためには人生の中で定期的に内視鏡検査を行うことが重要です。
ぜひ当クリニックの「苦しくなく痛みに配慮した内視鏡検査」を受けていただき、がんの予防・早期発見・早期治療をめざしていきましょう。
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この記事を書いた人

平島 徹朗医師

国立佐賀大学医学部 卒業。
大分大学医学部附属病院消化器内科、国立がん研究センター中央病院内視鏡部など、多くの病院・内視鏡専門クリニックで消化器内視鏡診断・治療を習得後、2011年たまプラーザ南口胃腸内科クリニック開院。