内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

パンは消化が悪いって本当?小麦が与える腸への影響

高級食パンやフルーツサンドは、SNSでも話題になり、行列ができるお店も多くある中、毎日パンを食べている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

パンはいまでは日本の朝食の定番として、多くの方が食べています。手軽に食べることができ、また価格も比較的安く腹持ちもよいため、朝食だけではなく小腹が空いたときや昼食としても、重宝される食材の一つです。また、ピザトーストやフレンチトースト、バタートーストをはじめ、さまざまな味を楽しめるため、飽きずに食べられるのもパンの魅力でもあります。

パンが腹持ちがいい理由を皆さんご存じでしょうか?その理由は、消化が悪いからです。消化器の医師の中にはこの事実を知っているため、パンを積極的に食べない方もいるのです。

この記事では、パンの消化が悪い理由とパンをはじめとする小麦製品の過度な摂取が体にもたらす影響について解説します。

1. なぜパンは消化が悪いの?

パン
パンは消化が悪いといわれる原因は、原材料である小麦を多く使っているからです。つまり、パンだけではなく、うどんやパスタなども同じように消化が悪いといえます。

小麦には、「グルテン」とよばれる成分が含まれており、このグルテンが腸に影響を与えるため、消化が悪くなるのです。

1-1. グルテンとは?

グルテンとは、小麦や大麦、ライ麦などに含まれる成分で、タンパク質の一種です。パンの主原料となる小麦に含まれるグルテニンとグリアジンという2つのタンパク質が含まれています。小麦粉を水を加えてこねることにより、この2つのタンパク質が絡み合って、グルテンができます。

小麦に水を加えてこねると、この2つのタンパク質が結合して、粘弾性(ねんだんせい)のある食品へと変化します。この粘弾性を利用して、パンやケーキ、パスタ、うどんなどが作られているのです。

グルテンを含む主な食品は以下のとおりです。
・パン
・パスタ
・うどん
・ラーメン
・天ぷらのころも
・カレールー
・クッキー
・ケーキ

2. グルテンが体に与える影響とは?

小麦製品
小麦は、腸によくない影響を与えます。その結果、腸内環境の悪化へとつながり、腸だけではなく、体全体にさまざまな影響を及ぼすのです。

パンやパスタが好きな方にはつらいかもしれませんが、小麦を過度に食べるのはおすすめしません。グルテンの過剰摂取がもたらす影響は、主に3つあります。

2-1. 依存性がある

グルテンには、ニコチンのような依存性があると考えられており、長期的に摂取し続けていると体がグルテンを含むパンなどを欲するようになります。

その理由は、グルテンがモルヒネに似たアミノ酸配列をしているため、グルテンを分解するときに体がモルヒネやアヘンなどの薬物を摂取したときと同じような反応をしてしまうのです。

モルヒネとは、アヘンに含まれるもっとも強い作用をもつ麻薬性の鎮痛薬です。モルヒネは、薬剤として使用されていますが、依存性が高く管理なども厳しい規制が設けられているほど、取り扱いに気をつけなければいけません。

2-2. 血糖値を急上昇させる

パンをはじめとする小麦製品は、血糖値を急上昇させます。その理由は、小麦に含まれる「アミロペクチンA」と呼ばれる成分に、血糖値を急上昇させる作用があるからです。

血糖値とは、ブドウ糖の血中濃度を指します。パンをはじめとする炭水化物を摂取すると小腸でブドウ糖に分解、吸収され、血中に取り込まれると血糖値が上昇します。このとき、膵臓から血糖値を下げるために分泌されるインスリンが、血中の糖分を脂肪に変えて体内にため込む働きがあります。

つまり、血糖値が急上昇するとインスリンが過剰に分泌され、肥満につながるのです。その他にも、血糖値の急激な変動は、眠気やイライラした気分にさせたり、精神的に不安定な状態にしたりと体にさまざまな影響をもたらします。

2-3. 腸に炎症を引き起こす

グルテンは、腸内に炎症を引き起こしたり、腸内環境を悪化させたります。グルテンはベタベタとした糊のような性質があるので、腸の粘膜にべったりと貼り付いて、体外に排出されず異物としてたまっていきます。

その結果、腸内の粘膜がダメージを受け、さまざまな不調を引き起こすと考えられています。代表的な不調は、下痢や便秘、腹痛といった消化器系の症状です。消化吸収機能が低下すると、栄養失調や片頭痛、リウマチ、月経前症候群(PMS)などの症状を引き起こす恐れがあります。

さらに、腸に溜まったグルテンが腸管の細胞と結合すると、細胞からゾヌリンというタンパク質が分泌されます。これが腸管上皮細胞と細胞の間を緩くする作用があり、これにより、体にとって悪い物質が血液中に流れやすくなります。これがいわゆるリーキーガット症候群という状態です。

3. パンなどの小麦を控えるグルテンフリー

グルテンフリー
小麦はさまざまな食品に使われているため、完全に摂取しないというのは、少し難しいかもしれません。しかし、毎日食べていたパンを控えるだけでも、グルテンの過剰摂取のリスクを回避できます。

3-1. グルテンフリーとは?

グルテンフリーは、グルテンを摂取しない食生活を送ることです。簡単にいうと、パンやパスタなどのように小麦から作られている食品を食べない食事法です。

グルテンフリーは、セリアック病の患者のための食事療法です。セリアック病とは、遺伝性の自己免疫疾患です。グルテンに異常反応を起こし、自己免疫機能によって、小腸の組織が攻撃されてさまざまな症状を引き起こす病気です。

あまりなじみのない病気かもしれませんが、セリアック病の方がグルテンを摂取すると、中毒症状によって小腸を傷つけ、食べ物の栄養を吸収できなくなります。ケースによって違いはありますが、治療をせずにそのままにしておくと、小腸に慢性的なダメージが与えられ、命にかかわる場合もあります。

その他にも小麦アレルギーも、グルテンが原因の一つといえるでしょう。また、セリアック病ではなくても、グルテンに反応する「グルテン過敏症」「グルテン不耐性(ふたいせい)」といわれるグルテンによって、体にさまざまな不調が出る方も多くいます。

パンなどを食べて以下のような症状が慢性的に出る方は、医療機関を受診しましょう。
・膨満感
・消化不良
・腹痛
・慢性的な疲労感
・下痢や便秘
・集中力の低下
・肌荒れ
・アトピー
・ぜんそく
・頭痛
・イライラ
・不眠
・気分の落ち込み

3-2. グルテンフリーと糖質制限の違い

小麦をとらないと聞くと、糖質制限とよく似ていると感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか?しかし、似ているように感じますが、グルテンフリーと糖質制限は異なります。

グルテンフリーはこれまでご紹介したように小麦を控えますが、糖質制限のように米などのすべての炭水化物を控えるわけではありません。糖質制限は糖尿病の方の治療法の一種として行われていますが、グルテンフリーも糖尿病の方に適しているといえるでしょう。

4. グルテンが気になるけど、パンが食べたいときの対処法

米粉
パンは消化が悪く、なるべく食べない方がいいとわかっていても、パンが好きな方はどうしても食べたくなるときもあるでしょう。

食べないで我慢していると、精神的なストレスがかかり、心の健康に影響を及ぼすかもしれません。そんなときは、一工夫してパンを食べてみてはいかがでしょうか。

パンは必ずしも小麦を使わなければ作れないわけではありません。小麦の代わりに米粉を使用した「米粉パン」がおすすめです。ケーキも同じように米粉で作ることができるため、ストレスを軽減しながら、パンやケーキを気分よく食べることができるでしょう。

米粉を使用したパンやスイーツも最近は、多く商品化されています。小麦ほどではありませんが、調味料にもグルテンが含まれている場合があるので「グルテンフリー食品」を選んで食べるとよいでしょう。

5. まとめ

パンを食べる女性
毎日のようにパンを食べている方は、今回の記事をご覧になって、パンを食べるのをやめようと思われたでしょうか?パンは手軽に食べることができ、さらに腹持ちもよいため、朝食や昼食などにも人気です。

しかし、パンは消化が悪く、胃もたれなどの症状を引き起こすリスクもあります。またそれだけではなく、依存性が高く、血糖値を急上昇させ肥満になる恐れもあるため、なるべく控えるようにしましょう。

パンが好きな方は、体にさまざまな影響を与えてしまうとわかっていても、明日からすぐにパンを食べない生活に切り替えるのはハードルが高いと感じることでしょう。そういった場合は、グルテンフリーのパンや米粉パンなどを選ぶのをおすすめします。

体も心も無理なく、健やかに毎日を送ることが大切です。腸は体や心の健康に大きくかかわる臓器です。腸の健康を維持するためにも、定期的に大腸カメラ検査を受けましょう。特に大腸がんは初期では自覚症状がありません。早期発見、早期治療が大切な病気です。

大腸カメラをいままで受けたことがない方は、大腸カメラ検査の実績が多い消化器内科を受診し、相談してみましょう。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。