SIBO(小腸内細菌異常増殖)とは?症状や原因、治療方法まで解説
免疫力の向上や美容などで注目される腸内環境や腸内細菌ですが、小腸の中で腸内細菌が増殖するSIBO(シーボ)という病気をご存じでしょうか?
内蔵の中でも病気が少ないといわれている小腸ですが、その小腸の病気の中でも最近注目されているのがSIBOです。お腹の張りや痛みなどを伴うにもかかわらず、エコーやCTでは原因がわからないことがあります。そのような場合は、SIBOを疑う必要があります。
今回は、小腸の病気SIBOについて症状や原因、治療方法を解説します。
SIBOは、小腸内細菌異常増殖症(small intestinal bacterial overgrowth)の略称です。
病気が少ない小腸の中でも最近注目を集めている疾患です。
どんな病気かというと、小腸の中で腸内細菌が異常増殖し、小腸内にガスが異常発生する病気です。
小腸内には通常約1万個の腸内細菌が生息していますが、なんらかの原因によりこの腸内細菌が10万個以上に異常増殖します。
異常増殖した細菌は私たちが摂取した食べ物を餌として発酵し大量のガスを発生します。
そもそも小腸は、液体で満たされガスが溜まらない細い状態で腹腔内に収納されています。
そのためガスに耐えられるような構造をしていません。細菌の過剰な増殖により発生した多量のメタンガスや水素ガスが腹部を圧迫することで、さまざまな症状が出ます。代表的な症状が以下のものです。
● おなかが張るため苦しい
● ゲップが異常に出る
● 胃酸が逆流する
● 下痢と便秘を繰り返す
小腸内に水素ガスを発生する腸内細菌が多い場合は下痢になりやすく、メタンガスを発生する腸内細菌が多い場合は便秘になりやすいと言われています。
SIBOの研究は世界的に進んでいる一方、日本ではあまり知られていない疾患であるため消化器病専門医でも原因が見つけられず、苦しんでいる患者も多くいます。
一般的に、便を作る大腸には極めて多数の腸内細菌が存在しており、大腸のさまざまな疾患に影響していることは知られるようになりましたが、小腸内には細菌があまり存在していないことや元々疾患とされる事例が少ないこともSIBOが見つけられない原因になっているのでしょう。
SIBOを発見するには、呼気検査を行う必要があります。糖質を摂取したあとに吐いた息のガス分析を行います。小腸内に菌が増殖している場合には、メタンガスや水素が検知できます。
下痢・便秘・腹部の張りや痛みを訴える場合にCTやエコーで内蔵を検査しますが、この検査ではSIBOと診断されません。細菌によって、小腸にガスが溜まっている状態であるため画像検査では明確にわからないのです。
現在、SIBOの呼気検査は保険診療では認められていないため自費検査として約4~5万円かかります。また、呼気検査ができる専門施設も限られているのが現状です。
SIBOが発症する原因はさまざまありますが、主なものは3つです。
● 小腸の動きが悪くなる
● 胃酸が少なくなる
● 食物繊維や発酵食品のとりすぎ
上記の原因を知ることで、SIBOの予防や悪化を避けることができるでしょう。
糖尿病・膠原病・神経疾患などの基礎疾患を持っている場合、小腸の動きが悪くなりやすいといわれています。また、ストレスや疲れの影響で自律神経が乱れることでも小腸の動きが悪くなります。
腹部の症状と精神状態の関係性が大きいことは、明らかにされています。消化管は、自律神経の支配を受けているため精神状態が腹部症状に影響を与えます。
つまり、腸内の環境やぜん動運動などの働きにも精神状態が関わることがあるといえます。
小腸の動きが悪くなることで、食べ物が小腸に留まる時間が長くなり腸内細菌が増加します。これを繰り返すことで、過剰に腸内細菌が増えそれに伴いガスが発生してしまうのです。
胃酸には、小腸への細菌の侵入を防ぐ役割があります。しかしながら、ピロリ菌感染や胃薬の長期服用により、胃酸が少なくなってしまいます。
ピロリ菌感染は、ピロリ菌が胃酸を薄めて胃の中で生息しますので、胃酸が弱くなります。また、胃酸を抑える胃薬を長期服用すると、胃酸が少なくなります。
以上のような理由で小腸の腸内細菌が増えやすい環境になります。
ピロリ菌感染による胃酸の減少の場合は、ピロリ菌除去の治療が必要になります。ピロリ菌が除去され胃酸の量が正常になると、SIBOの症状が改善されることがあります。
また胃酸には小腸内の細菌を殺菌する役割もあるため、胃酸が減ることで小腸に細菌が増殖してしまいます。胃酸は、多くても少なくても消化器に影響があるのです。
本来、腸内環境によいとされている食物繊維や発酵食品ですが、過剰摂取によって腸内細菌が増えすぎることがあります。これは、食物繊維や発酵食品を摂取することにより、小腸内の腸内細菌が異常増殖するからです。
もし、食物繊維や発酵食品を摂取し下痢や腹痛などが起きた場合には過剰摂取している可能性があります。一旦、食物繊維や発酵食品を控え様子をみることが必要でしょう。
4. SIBOの治療方法は、薬物療法と食事療法の2つ
呼気検査によってSIBOと診断された場合は、薬物療法と食事療法の2つの治療があります。主な治療法は5つあり、症状によって組み合わせもさまざまです。
● 増殖した細菌を除菌する
● 腸内細菌のエサを減らす
● 腸のぜん動運動を促進する
● 食事の見直しをする
● ストレスの軽減(心理療法)
幼少時に大きなストレスを受けている場合は、腸のぜん動運動が阻害されSIBOの症状が悪化すると考えられています。
そのため、心理療法が用いられることがあります。消化管は自律神経の支配を受けており、ストレスや不安により自律神経のバランスが乱れることで、SIBOの症状が出ることがあるのです。
食事管理を徹底することで、症状の緩和や悪化を避けることができます。
炭水化物や食物繊維を過剰に食べている方は控えめにすることから始めてみてください。
これだけでお腹の張りが改善される場合があります。
また、なかなか改善しない腸の不調には低FODMAP(フォドマップ)食が良いと言われています。
FODMAPとは、
F:発酵性(Fermentable)
O:オリゴ糖(Oligosaccharides)
D:二糖類(Disaccharides)
M:単糖類(Monosaccharides)フルクトース(果糖)が代表的なもの
AND
P:ポリオール類(Polyols)
上記の頭文字をとったものです。
オリゴ糖には、レンズ豆やひよこ豆に含まれるガラクトオリゴ糖と、小麦やタマネギに含まれるフルクタンがあります。
二糖類とは単糖類が2つ結びついたもので、牛乳やヨーグルトなどのラクトース(乳糖)などがあります。
単糖類の代表的なものは果物です。ポリオール類は、マッシュルームやカリフラワーに含まれるソルビトールやキシリトールがあります。
低FODMAP食は、発酵食品と腸内で細菌を増殖させる4種類の糖類を減らした食事を指しています。具体的な食品を表にまとめてみました。
パンやパスタ、ラーメンなどの小麦を含む食品を極力避け和食を中心にすることで、低FODMAP食が取り入れやすくなります。単品だけの食事よりも品数を増やしバランスよく食事をとることも大切です。
腸を動かす薬を飲んだり、抗生物質を飲んで腸内細菌を減らすことができます。
薬物療法で改善できる項目は、下記の2つです。
● 増殖した細菌を除菌する
● 腸のぜん動運動を促進する
増殖した細菌を除菌するには抗生物質が使われます。欧米ではリファキシミン・ネオマイシンなどの抗生物質が使用されていますが、副作用が出る場合もあるため腸管内の細菌だけに働く抗生物質を使うことが多いようです。
また、腸の運動を高め食べ物を小腸に留まらないようぜん動運動を促進させる作用があるガスモチンが用いられます。
SIBOは日本では知られていない疾患のひとつであるため、消化器病専門医でも診断されず苦しんでいる方が多いです。腹部の張りや痛み、下痢や便秘があるにもかかわらずCTやエコーでは原因が不明の場合は、SIBOの可能性があります。
SIBOの治療は、食事療法で症状を緩和することが一番です。
まずは炭水化物や食物繊維を控えめにすることから始めてみてください。
ストレスを感じない程度に食事療法を進めることがポイントです。かかりつけ専門医に相談し薬物療法と並行して改善に努めていくのもよいでしょう。
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この記事を書いた人
秋山 祖久医師
国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。