内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

私たちの腸は、口から始まり、肛門で終わります。つまり、腸の内部は、体内でありながら口と肛門から体外につながっていることになります。
つまり、病原菌の多くは、口や肛門を介して腸から体内に侵入しようとしてきますので、常に外敵から身を守る必要があります。

人間の免疫細胞の70%(小腸に50%、大腸に20%)が腸に集中していると言われていますが、それは、これらの病原菌から守るためなんです。


それでは、ここから「ヒトの免疫」について解説をしていきたいと思います。

ヒトは体内に敵が侵入してきた時、2つの免疫力で敵を攻撃します。

それは「自然免疫」と「獲得免疫」です。

1. 自然免疫

→敵を発見したら、とりあえずまずはフットワークが軽い「自然免疫」で先制攻撃をします。ここでの主役は「好中球」「マクロファージ」「NK細胞」「樹状細胞」です。

好中球:言わずと知れた免疫の切込隊長。白血球の中で一番多い細胞であり、自然免疫の主役です。真っ先に敵に向かい、敵を食べて攻撃します。それだけではなく、「活性酸素」を発射し、敵を酸化させてやってけることもできます。
とにかく、ひたすら敵を攻撃することに特化した細胞です。

マクロファージ:アメーバ状の形をした細胞で、好中球に負けず劣らず敵を食べまくります。食いしん坊なのか、がん細胞や、戦って死にかけている好中球まで食べてしまいます。
また、一部のマクロファージは、食べながら敵の情報を細かく分析し、その情報をT細胞に伝えることも行います。

NK細胞:体内を常にパトロールしている細胞です。敵が好中球やマクロファージから逃れ、体内の細胞に感染して悪さをしようとしたらこのNK細胞が立ちはだかります。
体内をパトロールしており、敵に感染した細胞を見つけたら、感染した細胞ごと敵をやっつけてしまいます。とても強力な力を持っています。
ちなみにこのNK細胞も、がん細胞を見つけて攻撃することで有名です。

樹状細胞:樹状細胞も敵を食べますが、その能力は好中球やマクロファージと比べると劣ります。
樹状細胞の最も優れたところは、食べながら敵の情報を細かく分析します。いわゆる情報屋です。分析した情報を後述するT細胞に伝えます。


以上の4つの細胞が、「自然免疫」の主役です。敵との戦いは、この「自然免疫」で大体はカタがついてしまいます。

「自然免疫」が長期戦となり、敵を倒すことができなくなると、次に「獲得免疫」の登場です。

2. 獲得免疫

→自然免疫でもなかなか敵を倒すことができず、長期戦となった場合、この「獲得免疫」が登場します。
「獲得免疫」は、侵入してきた敵の特徴を詳細に把握し、その敵を特異的に攻撃する免疫のことです。
ここでの主役は、リンパ球の仲間である「T細胞」「B細胞」になります。

「自然免疫」で敵と戦い、長期戦となっている間に、「マクロファージ」や「樹状細胞」が細かく分析した敵の情報を、T細胞の仲間である「ヘルパーT細胞」に伝えます。

ヘルパーT細胞:「獲得免疫」の総司令官。敵の情報を元に、敵の特徴や弱点を分析し、それを「キラーT細胞」と「B細胞」に伝え、それぞれ攻撃するように指示を出します。
具体的には、「キラーT細胞」には「敵をやっつけろ」と指令し、「B細胞」には「ミサイル(抗体)を作れ」と指令します。

キラーT細胞:敵が感染した細胞やがん細胞を手当たり次第に見つけ、細胞ごとやっつけます。ものすごく強い力を持っています。強すぎて時々暴走することがあります。

制御性T細胞:「獲得免疫」のブレーキ役です。過剰な免疫反応を抑制します。「キラーT細胞」の暴走を止めてくれる役割も担っています。
その他、過剰なアレルギー反応や炎症反応を抑える働きがあります。この力は、善玉菌によって活性化されます。

B細胞:骨髄の中に存在する細胞です。ヘルパーT細胞から伝えられた敵の情報を元に、その敵だけに効果のある飛び道具(抗体)を作り、それ使って攻撃します。この飛び道具である「抗体」により、敵を効果的に攻撃して倒すことができるのです。
ただし、「抗体」が作られるまでに約1週間前後かかります。


以上のような「ヒトの免疫」ですが、「自己」か「非自己」かを区別するのが重要です。

「自己」とは、自分の体の中に備わっている細胞や臓器のことです。

「非自己」とはそれ以外であり、具体的には、外部から侵入してきたウイルスや細菌などの微生物、体内でできるがん細胞などがこれに当たります。

この区別する機能がうまくいかないと、「ヒトの免疫」が暴走してしまい、「自己」を攻撃して起こる「自己免疫性疾患」が発生してしまいます。

具体的には、慢性関節リウマチなどの膠原病、バセドウ病などの甲状腺疾患、潰瘍性大腸炎などの慢性炎症性腸疾患などです。

それでは、体内の「微生物」である腸内細菌は「ヒトの免疫」で攻撃されないのでしょうか?

実は腸内細菌は、「ヒトの免疫」では攻撃されないようになっています。それどころか、腸内に存在する免疫細胞に刺激を与えて免疫を活性化させてくれます。

それではどうやって乳酸菌が「ヒトの免疫」を活性化できるのか?

ここで詳しく説明していきたいと思います。
腸のところどころには、「パイエル板」という小さな凹みが点々と存在しています。
この凹みは、実は腸にしかない特別なものです。

「パイエル板」の表面に「M細胞」がいるのですが、病原菌が侵入してくると、まずはこの「M細胞」が病原菌を取り込み、パイエル板の中に連れていきます。

次に、病原体は、パイエル板の中で待ち構えていたマクロファージや樹状細胞に食べられます。
マクロファージや樹状細胞は病原体を食べながら、サイトカインや抗菌ペプチドと呼ばれる物質を分泌して、次々と病原体を食べる準備をするように伝達します。

これが「自然免疫」です。

さらに、マクロファージや樹状細胞は、食べながら病原体の情報を分析し、この情報を「ヘルパーT細胞」に伝えます。

情報をもらった「ヘルパーT細胞」は、「キラーT細胞」と「B細胞」にさらに伝達し、「キラーT細胞」が病原体を倒し、「B細胞」は抗体という、ミサイルを作って攻撃します。

これが「獲得免疫」です。

食べ物や整腸剤などで取り入れた乳酸菌も、外部から侵入してきた菌ですので、そのほとんどはM細胞に取り込まれ、マクロファージや樹状細胞の働きが活性化され、食べられてしまいます。

ですので、乳酸菌は生きていても死んでいてもどちらでも良いのです。
さらに、たくさんの数の乳酸菌を摂ることにより、「自然免疫」や「獲得免疫」がどんどん活性化され、常にスイッチが入っている状態になっています。

これにより、以下のような効果が期待できるようになります。

A.免疫力アップ
「自然免疫」や「獲得免疫」が常にスイッチが入った状態を保つことで、外部からウイルスや最近などが侵入してきた時に、速やかにかつスムーズに「自然免疫」や「獲得免疫」が発動し、これらの敵を退治してくれるます。

B.がん抑制効果
「自然免疫」で活躍する、「マクロファージ」や「NK細胞」も常に活性化されています。これらは、がん細胞を敵として認識し、倒してくれますので、がん抑制効果も認めます。

C.抗アレルギー効果
アレルギーについてですが、まずは「ヘルパーT細胞」から説明します。
抗体を作る「ヘルパーT細胞」は、正確にはTh1とTh2に分かれます。

Th1:ウイルスや細菌などの外敵を倒すのに必要な抗体を作るように指示するT細胞
Th2:アレルギー反応を起こすIgE抗体を作るように指示するT細胞

つまり、通常の免疫機構は、Th1の働きによって担われており、Th1とTh2はバランスを取っている状況です。
通常の免疫力が低下すると、Th1の力が低下し、Th2優位となり、過剰なアレルギー反応が起こるのです。

乳酸菌によりAのように免疫力が活性化されると、Th1優位となり、Th2の力が抑えられ、過剰なアレルギー反応も抑えられることになります。

D.幸福感増強作用、自律神経安定作用

幸せホルモンであるセロトニンは90%以上が腸で産生されています。免疫力が上がり、腸内環境が整ってくるとセロトニンの分泌作用が増強されてきます。そうすると自律神経が整ってきて、精神的にも安定して、幸福感のアップにつながっていきます。


このように、ヒトの免疫の大部分は、この「腸管免疫」が関与しています。
それでは、どのようにすれば免疫力を上げることができるのでしょうか?

1つ目は「腸内細菌を育てること」です。言い換えると、善玉菌を増やすことになります。
ヒトの腸内には、1,000種類、100兆個もの腸内細菌が住んでいます。
腸内細菌は「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3種類に分かれます。

腸内細菌は体内に存在する微生物ですので、「非自己」にあたりますが、免疫細胞からの攻撃を受けることはありません。

むしろ、腸内細菌は免疫細胞に刺激を与えて免疫細胞を活性化させます。
それだけではなく、免疫細胞の暴走を制御したり、過剰なアレルギー反応や炎症反応を制御してくれる「制御性T細胞」を活性化させる役割もあるのです。


それでは、善玉菌を増やすにはどうしたら良いでしょうか?

答えは「善玉菌を摂る」「善玉菌を育てる」の2つです。

「善玉菌を摂る」=プロバイオティクスと言います。
これは、ヨーグルトや漬物などの発酵食品を食べたり、整腸剤などのサプリメントから直接乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を摂取するという意味です。

「善玉菌を育てる」=プレバイオティクスと言います。
これは、善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖などを摂取し、腸内に住み着いている善玉菌を育てることです。

プロバイオティクス+プレバイオティクス=シンバイオティクス です。

つまり、善玉菌を増やすためには、シンバイオティクスを意識していれば良いということになります。

2つ目は「規則正しい生活をする」ことです。

人間には「自然免疫」と「獲得免疫」があることは説明しました。

端的に説明すると
「自然免疫」とは、敵の種類に関係なく先制攻撃する免疫であり、
「獲得免疫」とは、敵の情報を分析してその敵を狙い撃ちする免疫です。


風邪をひきやすい人、ひきにくい人がいますが、これは、「自然免疫」の差によります。

「自然免疫」はスピードと攻撃力が命です。これが常に活性化されていれば、ウイルスや細菌などの敵が侵入してきても、素早く退治することができますので、症状が出ることもなく、あるいは症状が出ても軽い症状で済みます。

このようなヒトの免疫ですが、実は「体内時計」の影響を受けると言われています。

人間ははるか昔から、日中は活動し、夜は休むという生活をしてきました。この生活様式が受け継がれ、人間の体の中に染み付いています。

これを「体内時計」と呼んでいます。
免疫機構もこの「体内時計」の影響を強く受けています。

人間が活動している日中は、ウイルスや細菌などの敵が侵入する機会が多いですので、免疫機構は常に活性化されています。逆にほとんど休んでいる夜になると、免疫機構は沈静化して休んでいる状態になっています。

つまり、昼夜逆転するような生活は、免疫の活性化を著しく低下させ、ウイルスや細菌の感染を起こしやすくなります。

「徹夜で勉強する」
「夜遅くまで残業する」
「夜の飲み会や会合に参加し、遅くまでお酒を飲んで楽しむ」

こんな生活を繰り返していると、免疫力の活性化が弱まり、病気にかかりやすくなってしまいます。

朝日が昇り、太陽が照りつける日中は活動し、日が沈んで夜になったら、自宅でリラックスしてゆっくりと休む。

このような規則正しい生活をすることが、免疫力を持続的に活性化させるのです。


以上、「ヒトの免疫」について解説しました。

免疫力を上げることにより、風邪やがんなどの病気にかかりにくく、花粉症などのアレルギーも抑得ることができます。さらに幸せホルモンである「セロトニン」も分泌され、肉体的にも精神的にも安定した状態を保つことができます。

そんな体になるために、日頃から「善玉菌を摂る」「善玉菌を育てる」といった「シンバイオティクス」を意識して行い、さらには「規則正しい生活」を行う。

これにより私たちの「自然免疫」と「獲得免疫」は常に活性化された状態となります。

皆さん、早速今日からこれらのことを意識して生活をしてみましょう!
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