内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

日本人が不足している栄養価4選

福岡院では、血液検査の結果から今の栄養状態を知ることができる「栄養解析」を行なっています。「オーソモレキュラー血液検査」です。
血液検査
現在の自分の栄養状態で、何が足りているのか、何が足りていないのかといったことを知ることができる有意義な検査となっています。

この「オーソモレキュラー血液検査」を複数の方に行った結果、ある特定の栄養素が足りていないことが判明しました。

もともとこの検査を希望される方は健康意識が高く、普段から食事や運動などに気を使っている方が多いです。
そんな健康意識が高い方の中でも、共通して不足している栄養素が4項目ありました。
それぞれについて解説をしていきたいと思います。

不足している栄養素

1 蛋白質

タンパク質のイメージ画像
3大栄養素の1つである蛋白質です。蛋白質が体内で代謝されると、その最終産物として尿素が作られます。この尿素中の窒素を測定したものが尿素窒素です。
つまり、血液検査の尿素窒素(BUN)の値が低いと
  • 蛋白質の摂取不足
  • 蛋白質代謝に必要なビタミンB群が足りず、代謝が回転していない
ということになります。

蛋白質は、皮膚、髪、筋肉、臓器など私たちの体を作る重要な栄養分です。それだけではなく、体内のホルモンや酵素、免疫物質の材料にもなります。
蛋白質は、20種類のアミノ酸から構成されています。このうち、9種類が必須アミノ酸、11種類が非必須アミノ酸に分類されます。必須アミノ酸は体内で合成されないため、食事から摂取する必要があります。非必須アミノ酸は体内で合成が可能です。
蛋白質は、1日に体重当たり1~1.5gが必要と言われています。体重60kgで1日60~90gもの蛋白質が必要です。

2 ビタミンB群

ビタミンBのイメージ画像
血液検査では、肝機能(AST,ALT)の低値であると、ビタミンB群が足りていないことになります。AST,ALTはアミノ酸を代謝するのに必要な酵素なのですが、これらはビタミンB6と結合しないと使われません。つまり、ビタミンB6が少ないとAST,ALTは低下してしまいます。

ビタミンB群は、8種類からなる水溶性ビタミンです。主な働きとしては、エネルギーを代謝する時に必要な補酵素の役割を果たします。糖質、タンパク質、脂質を十分に摂取していても、ビタミンB群が不足していると代謝が回らず、エネルギーや体を構成する力が落ちてしまいます。また、ビタミンB群は互いに助け合っていますので、8種類ともバランス良く摂取することが必要となります。
ビタミンB群は水溶性ビタミンであり、尿から出ていくだけでなく、常に体内で消費されるのですぐに枯渇してしまいます。
ビタミンB群は食事から摂取するだけでなく、腸内細菌の善玉菌からも作られます。1日に必要なビタミンB群の3割程度を腸内細菌が作りますので、腸内環境を良くすることが、ビタミンB群にとっても良いことになります。

3 鉄

ほうれん草のイメージ画像
鉄欠乏は、特に女性は慢性的な問題で永遠のテーマです。
鉄が足りなくなってくると、貯蔵鉄であるフェリチンから下がってきます。
貧血の評価となるヘモグロビンは健康診断で測定しますが、フェリチンは健康診断では測定しませんので、貧血の評価であるヘモグロビンが下がっていなくても、貯蔵鉄であるフェリチンだけが低いという潜在的な鉄欠乏状態の方が多いことがよくあります。
ヘモグロビンが下がることで出てくるめまいや立ちくらみなどのいわゆる貧血症状は、フェリチンが下がっているだけでは出てきません。その代わり、疲れやすい、寝つきが悪い、食欲がない、イライラする、などのいわゆる不定愁訴がフェリチン欠乏により出てくることがよくあります。
さらに、ビタミンB群と同様に、鉄もタンパク質の代謝に必要であり、毎日利用されていることから絶えず補充する必要があります。

4 ビタミンD

ビタミンDのイメージ画像
最近要注目のビタミンDです。ビタミンDはかつて骨を形成するビタミンとして認識されていましたが、最近の知見では、感染症やがん、アレルギーを防いだり、糖尿病や高血圧などの成人病予防、さらにはうつ病などの精神疾患まで予防できることがわかってきました。
ビタミンDの血中濃度は30以上が正常なのですが、がんやアレルギー、感染症などを予防するためには50以上が必要と言われています。
体内のビタミンDは、食べ物から摂取したり、日光に当たることで体内で作られたりします。しかしながら食べ物に含まれるビタミンDはわずかであり、ほとんどが日光により作られます。

それでは、それぞれの栄養素はどのようにして摂取したら良いでしょうか?
それぞれ解説していきたいと思います。

1 蛋白質

蛋白質は上述の通り、1日体重1kgあたり1~1.5gが必要と言われています。
つまり、体重60kgで蛋白質が60~90g程度必要です。
実は蛋白質はさまざまな食べ物に含まれており、知らないうちに摂取しているのですが、まだまだ足りていないのが現状です。
タンパク質を多く含む食べ物で有名なのは鶏肉です。片手大の大きさで蛋白質が約20gほど摂れます。
ただ、鶏肉を毎日食べるのはなかなか難しいので、卵や納豆を利用しましょう。
卵1個で約6g、納豆1パックで約6gの蛋白質が摂れます。
また、プロテインのサプリメントを飲むのも効果的です。約200mlの水に溶かして飲むと、約20gの蛋白質が摂れます。
また、お勧めは、朝一番にプロテインを飲むことです。
プロテインのイメージ画像
朝食15分前にプロテインを飲み、その後朝食を摂取すると、食後の血糖値上昇を抑えることができます。朝ですのでプロテインの吸収も良く、一石二鳥です。

2 ビタミンB群

ビタミンB群のイメージ画像
ビタミンB群は、ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、ビオチン、葉酸、パントテン酸の8種類です。
ビタミンB群は、どれか一つだけ摂取しても意味がありません。お互いが助け合いながら働くため、一緒に摂るのが理想です。
ビタミンB群を多く含む食品は、豚肉やレバーなどの肉類、うなぎやマグロなどの魚類、卵などの乳製品です。
ただ、ビタミンB群は水溶性ビタミンのため、加熱したり煮込んだりすると成分が失われてしまいます。
そこで、8種類のビタミンを効率よく摂るのにサプリメントもお勧めです。

3 鉄

鉄は肉、魚、野菜などに含まれています。
レバニラのイメージ画像
食べ物に含まれている鉄は、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2つに分かれます。
「ヘム鉄」は主に肉や魚に含まれている鉄です。タンパク質と結合していますので、小腸で吸収されやすいという特徴があります。
「非ヘム鉄」は主に野菜類に含まれている鉄です。「ヘム鉄」よりも吸収率が低く、一緒に食べた物の影響を受けて吸収率に差が出てしまいます。
鉄を効率よく摂取するために、「ヘム鉄」を摂るように心がけましょう。
具体的には、レバー、豚肉、カツオ、アサリなどが「ヘム鉄」を豊富に含んでいます。
また、鉄は、蛋白質やビタミンCと一緒に摂ると吸収率が上がります。

4 ビタミンD

ビタミンDは以下のようにして摂取します。
  • A.食べ物から摂取する
  • B.日光に当たってビタミンDを作る
  • C.サプリメントで摂取する
この3つになります。
ビタミンD群のイメージ画像

A.食べ物から摂取する

ビタミンDは青魚やレバー、きのこ類などに含まれています。しかしながら食べ物に含まれるビタミンDは微量です。例えば椎茸なら1日2.5kg以上食べないと1日に必要なビタミンDはまかなえないので、あまり現実的ではありません。

B.日光に当たってビタミンDを作る

詳細な解説をすると、紫外線の中でもUVBに当たることでビタミンDが体内で作られます。このUVBですが、肌に直接当たらなければビタミンDは作られません。
服を着てたり、天井や窓越しに日光を浴びても意味がないです。もちろん、日焼け止めを塗るとほとんどビタミンDは作られません。
さらに、太陽が昇っていない朝や夕方は、紫外線が散乱されますのでほとんど意味がありません。
ベストなのは、太陽が高い位置にある正午から14時くらいの晴れの日で、なるべく肌を露出して(半袖半ズボンがベスト)日光浴をします。時間にして15分から20分程度です。
これだけ行えば、日光浴により1日1,000I.U.程度のビタミンDが作られることになります。
ただし、日焼けするとメラニン色素がUVBを吸収するので、ビタミンDが作られにくくなります。
食べ物よりも日光浴の方が効率的ですが、できれば日に当たりたくないです。

C.サプリメントで摂取する

現在、ドラッグストアで売っているビタミンDのサプリメントは1日1,000I.U.摂取できますので、上記の日光浴と同じ量のビタミンDが気軽に摂れます。

一般的に、ビタミンDを毎日1,000I.U.程度摂取していれば、ビタミンDの血中濃度は10ng/ml上昇すると言われています。

現在、日本人の約7割がビタミンDが不足していると言われています。ビタミンDの血中濃度が30ng/ml未満でビタミンD不足と定義されており、50ng/ml以上で感染症やがん、アレルギー、生活習慣病などのあらゆる病気を予防できると言われています。

最低でも1日1,000I.U.は摂るようにしましょう。

いかがでしょうか。
蛋白質、ビタミンB群、鉄、ビタミンD
この4つの栄養素を普段からきちんと摂取すれば、健康な体を維持できるのではないかと思いますので、意識して摂りましょう。
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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。