内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

ピロリ菌の検査は受けたほうがいい?検査方法を解説します

胃がんの原因の90%は、ピロリ菌感染が原因であるということをご存知でしょうか。胃がんリスクを下げるためには、ピロリ菌感染の有無を確認し、感染しているのであれば除菌治療をすることが必要です。
ピロリ菌に感染しやすい方の特徴もわかっています。
ピロリ菌に感染しやすい場合は、感染の有無を確認するためにも検査を受けることがおすすめです。
ピロリ菌の検査には、さまざまな検査方法があります。今回は、ピロリ菌の検査を受けてほしい方とピロリ菌の検査方法について解説します。

1. ピロリ菌検査を受けてほしい方

井戸水
胃がんの90%以上が、ヘリコバクター・ピロリ菌が原因であることがわかっています。もし、ピロリ菌感染がわかっている場合は除菌治療をし、将来の胃がんリスクを下げることが大事です。
ヘリコバクター・ピロリ菌検査を受けてほしい方は、以下の3つにあてはまる方です。
・血縁者に胃がんもしくはピロリ菌感染した方がいる
・ピロリ菌の除菌治療後に治療が成功したかどうかの検査を受けていない
・年齢が30歳以上で過去に一度も胃カメラ検査やピロリ菌検査を受けたことがない

1-1. 血縁者に胃がんもしくはピロリ菌感染した方がいる

ヘリコバクター・ピロリ菌は、免疫力の低い5歳までの幼少期に経口感染することがほとんどです。
感染経路は、主に2つです。1つ目は、ピロリ菌に汚染された井戸水などを摂取することです。2つ目は、ピロリ菌感染者の唾液から感染するケースです。
ひと昔前は、両親が離乳食を口で砕いたものを子に与えることも珍しくありませんでした。そのため、ピロリ菌に感染している両親もしくは家族によって与えられた食べ物(唾液を含む)を摂取し、ピロリ菌に感染するケースがありました。
血縁者の中に胃がんを発症した方やピロリ菌の除菌治療をしている方がいる場合には、過去にその血縁者から感染している可能性があります。

1-2. ピロリ菌の除菌治療後に除菌の成否を判定していない

ピロリ菌の除菌治療の成功率は、100%ではありません。
ピロリ菌の感染と胃がんリスクの関連は多くのメディアで取り上げられていることもあり、ご存知の方も多いでしょう。すでに、ピロリ菌除菌治療を受けられた方も、成否を確認していない場合は安心できません。
ピロリ菌除菌治療によって、今まであった胃の不調を伴った症状が緩和すると「ピロリ菌が除菌できた」と自己判断し、除菌判定の検査を受けない方が一定数います。しっかりと除菌できたかどうか、見極められないケースが多くみられるのです。
ピロリ菌がしっかり除菌できていないと、数年後に胃がんが発見される可能性も高くなりますので、ピロリ菌除菌治療後には除菌の成否を必ず確認しましょう。

1-3. 年齢が30歳以上で過去に一度も胃カメラ検査やピロリ菌検査を受けたことがない

30歳までに胃カメラ検査をしたことがない方は、いきなりピロリ菌の検査を受けるよりもまずは胃カメラ検査を受けることがおすすめです。
専門医がいる医療機関で、胃カメラ検査を行えばピロリ菌の検査をしなくともピロリ菌感染の有無を推定できます。
ピロリ菌除菌を若いうちに行うことができれば、胃がんのリスクはかなり下げられます。ピロリ菌感染によって、傷ついた胃の粘膜は感染期間に比例して修復にも時間を要するのです。
胃粘膜が傷ついた状態は、胃がんリスクを上げる原因です。
胃の不調や症状がなくても、若いうちに一度は胃カメラ検査を受けピロリ菌の有無を確認し、感染が発見された時点で治療を開始できれば、胃がんリスクをさらに軽減できるのです。

2. ピロリ菌の検査

病理検査
ピロリ菌の検査には、大きく分けて胃カメラを使用して行う検査と胃カメラを使用しない検査があります。
検査の方法をまとめてみました。

胃カメラを使用するピロリ菌検査
・迅速ウレアーゼ試験
・鏡検法(きょうけんほう)
・培養法(ばいようほう)

胃カメラを使用しないピロリ菌検査
・抗ヘリコバクターピロリ菌抗体検査
・便中ピロリ抗原検査
・尿素呼気検査

上記に挙げた検査の中のいずれか1つでピロリ菌の検査を行う場合もありますが、その方の体質などによっては、組み合わせて検査するケースもあります。
検査内容を知っておくと、専門医の説明も理解しやすくなるでしょう。

2-1. 迅速ウレアーゼ試験

迅速ウレアーゼ試験は、ピロリ菌が分泌するウレアーゼが尿素を分解するしくみを利用して調べる検査方法です。
ピロリ菌は、胃の中で生息できるよう胃酸を中和するためにウレアーゼという酵素を分泌し、胃液の中に含まれる尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解します。これをウレアーゼ活性といいます。
胃カメラ検査で採取した胃粘膜の組織を、尿素とpH指示薬の入った反応液に入れピロリ菌感染の有無を確認します。もし、ピロリ菌に感染している場合は、アンモニアが出ているためpHがアルカリ側に反応し色が変化するのです。
迅速ウレアーゼ試験は、比較的簡単でその日に結果がわかるため、すぐに除菌治療を開始できるメリットがあります。

2-2. 鏡検法(きょうけんほう)

鏡検法(きょうけんほう)は、胃カメラで胃粘膜の組織を採取し、顕微鏡でピロリ菌がいるかを確認する検査方法です。

2-3. 培養法(ばいようほう)

培養法(ばいようほう)は、胃カメラで採取した胃粘膜をピロリ菌が増殖する特殊な環境下に置き、ピロリ菌がいるかを確認する検査方法です。

検査結果が出るまでに5~7日培養する必要があり、検査に時間と手間がかかるため現在では、ほとんど行われません。

2-4. 抗ヘリコバクターピロリ菌抗体検査

抗ヘリコバクターピロリ菌抗体検査は、血液を採取して抗体を調べる検査です。
ピロリ菌に感染すると、体内では細菌感染したときと似た状態になります。体内では、細菌やウイルスと戦うために抗体を作り出す反応があり、ピロリ菌に感染している場合は、ピロリ菌抗体が増えるのです。
ただし、抗ヘリコバクターピロリ菌抗体検査では、現感染(今感染している状態)なのか、既感染(過去に感染していた、もしくは除菌治療済み)の区別がつきません。中には、歯科治療などで使用した抗生剤で知らない間にピロリ菌を除去している運のいいケースもあります。
一度でもピロリ菌に感染したことがある方は体内でピロリ菌抗体が作られるので、たとえ菌自体がいなくなったあとでも、抗体は消えずに体内に残ります。また抗体値が低下するまでに1年以上かかることもあります。
抗ヘリコバクターピロリ菌抗体検査だけでは、除菌治療が必要かどうか判断できないことは覚えておいてください。

2-5. 便中ピロリ抗原検査

便中ピロリ抗原検査は、便の中にいるピロリ菌の抗原の有無を確認する検査です。抗原の有無は、現感染を証明する指標となるため有用な検査といえます。
便の採取が少し手間なので、医療機関によっては選択されない検査のひとつです。

2-6. 尿素呼気検査

尿素呼気検査は、ピロリ菌が分泌するウレアーゼの活性を利用した検査方法です。
また、ピロリ菌によって分解された尿素から生じた二酸化炭素は、すぐに吸収され血液から肺に移行し、呼気として排出されるのでその原理も利用します。
検査前に服用する13C-尿素を含んだ検査薬(タブレット)は、炭素に特殊な標識(目印)を付けた尿素です。
まずは、検査薬服用前に専用パックに呼気を採取し二酸化炭素量を測定します。その後検査薬を服用し20分安静にします。その後、新たに専用パックに呼気を採取します。
ピロリ菌が胃の中にいた場合、印付けされた炭素を含む二酸化炭素が増えているので、服用前後の呼気の二酸化炭素量の比較から、ピロリ菌感染の有無が診断できます。
尿素呼気検査は、精度が高く簡単に行える方法です。ピロリ菌除菌治療においても、除菌の成否の判断の検査として用いられます。

3. ピロリ菌検査は保険診療で受けられる

保険証
通常ピロリ菌検査は自費診療ですが、半年以内に受けた胃カメラ検査で、慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍と診断されてピロリ菌感染が疑われる場合は、保険が適用されます。
7つの検査のいずれかを行う場合、1つの検査のみ保険適用となります。ただし、先に行った検査で結果が陰性だった場合には異なる検査1つに対しても保険適用になります。
令和4年11月1日から保険適用となる検査は、下記の7つです。
・迅速ウレアーゼ試験
・鏡検法
・培養法
・抗体測定
・尿素呼気試験
・糞便中抗原測定
・核酸増幅法
胃がんリスクを軽減することはもちろん、ピロリ菌感染の有無と状態を把握することで胃がんができやすい状態なのかを見定めることは重要です。
胃がんができやすい状態かを確認するためにも、定期的に検査を受けましょう。

4. まとめ

患者に説明をする女性医師
胃がんの原因の90%は、ピロリ菌感染によるものです。
胃がんリスクを下げるためには、ピロリ菌感染の有無を確認し、もし感染しているのであれば除菌治療することが必要です。また、ピロリ菌感染のリスクが高い方は、症状がなくてもピロリ菌の検査を受けることで胃がんリスクの軽減につながります。
ピロリ菌感染によって傷ついた胃の粘膜は、感染期間に比例して修復にも時間を要するので、できるだけ早いうちに検査をしましょう。
どのようなピロリ菌の検査が合っているのかを主治医と相談し、ピロリ菌除菌につなげることが大切です。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。