熱中症や下痢の水分補給ってどれが良い?お腹のプロがおすすめする脱水対策を詳しく解説
2023年の夏も暑い日々が続き、熱中症になるなどつらい目にあった人も多かったのではないでしょうか。巷では「熱中症の防止には水分補給が一番だ」と言われていることもあり、とにかく大量に水分摂取してしまいがちです。しかしその結果お腹を下してしまった、なんてことにつながる場合があります。暑い中で腸炎になると脱水になりやすいため、水分補給を適切に行わないとかえって逆効果となってしまうこともあるのです。
今回は、熱中症や下痢の時には何を飲むのがベストで効率良く身体に吸収されるのか、お腹のプロが市販のスポーツドリンクや経口補水液を取り上げて検証・詳しく説明していきます。
1. スポーツドリンクや経口補水液は種類が違えば成分も違う?
スーパーやドラッグストアに行くと、数多くのスポーツドリンクや経口補水液が店頭に並んでいます。これらの飲料水を購入している人の中には、「どれを選んでも同じでしょう」と思っている人も数多くいるのではないでしょうか。
実際のところ、経口補水液に関しては大体成分が同じではあるものの、スポーツドリンクに関しては種類が違うとかなり成分も異なります。
一般的に、スポーツドリンクは「アイソトニック飲料」と「ハイポトニック飲料」の大きく2種類に分けられます。
アイソトニック飲料は体液と同じ浸透圧、ハイポトニック飲料は体液より低い浸透圧であるといった特徴があります。浸透圧とは、溶液中にて溶媒分子が半透膜を通り浸透しようとする圧力を言いますが、だいたい体液の浸透圧は280-290mOsm/L(ミリオスモル)と言われています。これは0.9%の食塩水(生理食塩水)とだいたい同じと言われており、その値の液が等張液と言われます。
その値よりも濃度の低い浸透圧の液が「低張液」、高い浸透圧の液を「高張液」となるのですが、アイソトニック飲料は等張液に該当し、ハイポトニック飲料は低張液に該当します。
1-2. 濃いスポーツドリンクはアイソトニック飲料
スポーツドリンクの中には、味の濃いもの・薄いものが存在します。これはブドウ糖、ナトリウムなどによって浸透圧が調節されるためで、味が濃いスポーツドリンクのほうが等張液、つまりアイソトニック飲料と判断することができます。
スポーツドリンクには糖が含まれていますが、これは味を美味しくするためだけではなく、摂取した水分が腸で吸収される際、糖が塩分と一緒に摂取されることにより腸管での水分吸収を促進する働きがあります。
腸管の中にはSGLT1(ナトリウム・グルコース共輸送体)というものがあり、ブドウ糖はナトリウムが同時にあるとSGLT1によって速やかに吸収されるのですが、それに引っ張られて水分も腸の中に吸収されやすくなります。そのため、ブドウ糖とナトリウムのバランスが非常に重要になってきます。ナトリウムに対してブドウ糖が多すぎても少なすぎても吸収スピードは早くなりません。
配合されているスポーツドリンクによってブドウ糖とナトリウムのバランスは異なるため、そのバランスがとても重要とされています。最適なバランスとしてはブドウ糖とナトリウム濃度が1:1か2:1の時、最も吸収が良くなります。
なお、糖分を多く摂取しすぎる(等張液から高張液になってくる)と、胃から小腸への水分移動が遅くなったり、浸透圧が高くなって体内から水分が奪われやすくなります。その結果、水分吸収が抑えられ嘔吐の原因となることがあります。
下痢の時には、体内の水分と電解質が失われてしまうため、それらの補給が必要となってきます。下痢の中でも症状が軽く、水分の排泄も急激ではない時には、何でもいいので水分補給を行うのがよいでしょう。
しかし、下痢の症状がひどく悪化している場合には、適切な水分補給ができないと脱水がさらに悪化することもあります。スポーツドリンクや経口補水液の中でも、種類によって体内への吸収率が異なるため、適切な飲料水を選んで飲むのがとても大事になります。
一般的には「下痢の時にはスポーツドリンクを摂取してはいけない」と思われがちですが、これは全般的によくないのではなくて、アイソトニック飲料の摂取が好ましくありません。
ポカリスエットやアクエリアス、グリーン ダ・カ・ラなどのアイソトニック飲料は、運動前の水分補給に適している飲み物ではありますが、下痢の際にはより症状が悪化してしまうことがあります。そのため、経口補水液などのハイポトニック飲料を摂取するようにしましょう。
下痢の際の水分補給では、便から失われるナトリウム(35-60mEq/L程度)の補充が必要になります。そのため次のような市販のハイポトニック飲料を飲むのが適しています。
ハイポトニック飲料には
アミノバリュー(大塚製薬)
キリンラブズスポーツ(キリン)
イオンウォーター(大塚製薬)
スーパーH20(アサヒ飲料)
アミノバイタル(味の素)
などのものがあり、これら5つに関しては、ハイポトニック飲料の中でも比較的ブドウ糖が含まれていますので、腸で吸収されやすいといった特徴があります。
また、
ヴァームウォーター(明治)
アクエリアスゼロ(日本コカ・コーラ)
これについてはカロリーがほとんど0のハイポトニック飲料です。この2つはブドウ糖が少ないため、水分の吸収があまりよくありません。アイソトニック飲料よりは吸収がいいものの浸透圧が低く、先ほどの5つのほうが腸での吸収がよい飲み物となっています。
ハイポトニック飲料の代表格でもある経口補水液ですが、ドラッグストアやネットで販売されているものには、以下のようなものがあります。
OS-1(大塚製薬)
OS-1アップル味(大塚製薬)
アクアサポート(明治)
アクアソリタ(味の素)
経口補水S-OS(五味薬品)
これらはナトリウムとブドウ糖のバランスが適切なため、間違いなく腸に吸収されやすいと言えます。脱水が進んだ時に飲むとよいため、下痢の症状が出た時やスポーツのあと、発熱時には効果がある飲み物とされています。
ちなみに経口補水液は、一度飲んだことがある人ならわかると思いますが、風味がなくあまり美味しくないイメージをお持ちの人も多いかと思います。しかし、最近では一時期に比べて味の付いた美味しい経口補水液も発売されてきています。自分の好む味の経口補水液を見つけて飲んでみるとよいでしょう。
以上、熱中症や下痢の時には何を飲むのがベストで体内に効率良く吸収されるのか、
おすすめのスポーツドリンクや経口補水液について紹介してきました。
これまでスポーツドリンクについてはどれも同じだと思っていた人も、本記事でお伝えした「アイソトニック飲料」と「ハイポトニック飲料」の違いに注目し、状況に応じたスポーツドリンクや経口補水液を摂取するようになれば、体調管理も万全です。ただし摂取の際には、あまり冷えた状態で飲まないこと、またがぶがぶ飲み過ぎないように注意しましょう。
熱中症の場合にはそれほど問題ではありませんが、下痢の症状が出ている状態で冷えた飲料を摂取してしまうと下痢をさらに悪化させる危険があります。また、脱水状態だからとがぶ飲みしてしまうと、嘔吐につながることがあります。
なお、あまり症状が長引くようであれば医療機関を受診し適切な治療を受けましょう。
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この記事を書いた人
秋山 祖久医師
国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。