腸活迷子必見!生活習慣で腸内環境を左右するもの4選!
私たちの健康を左右しているもの、それは腸内細菌だと言っても過言ではありません。
腸内には1,000種類、100兆個もの腸内細菌が住んでいます。
ちなみに、私たちの体を作っている細胞が、270種類、60兆個と言われていますので、腸内細菌は、その種類も個数も我々の体を作っている細胞よりも多いんです。
我々の胃腸の中にそんなたくさんの種類の腸内細菌が多数住み着いているなんて不思議ですよね。
さて、そんな腸内細菌ですが、様々な要因で種類や数が増えたり減ったりして、腸内環境が良くなったり悪くなったりします。
もう私たちの健康は、この腸内環境に左右されていると言っても過言ではないんです。
それでは、私たちの普段の生活習慣の中で、腸内環境を左右するものを4つ選びました!
1 食事
2 運動
3 喫煙
4 飲酒 です。
私たちの生活習慣といえば、まずはこの4つを思い浮かべるのではないでしょうか。
それぞれが腸内環境にどのように影響を及ぼすのか、じっくりと解説していきたいと思います!
まず1番の要因は食事ですね。我々が食べるものは胃腸に直接入り、消化吸収されるわけですから、当然食べてるものは腸内環境に影響を及ぼします。
それでは、代表的な栄養素のうち、腸内細菌に良くも悪くも一番影響を及ぼす栄養素はなんでしょうか?
それは炭水化物です。
炭水化物は糖質と食物繊維を合わせたものになります。
まず、糖質ですが、ブドウ糖や果糖などの糖質は摂り過ぎると吸収されずに大腸まで届き、これが腸内環境の悪化につながると言われています。
ある報告では、マウスレベルですが、高糖質な食事をわずか2日摂るだけで、短鎖脂肪酸の産生が低下し、腸漏れが起こるようになったとのことです(※1)。
※1)Michael Laffin,et al:Scientific reports 9,12294,2019
糖質がかなり悪者みたいな印象になりますが、糖質の中でも腸内環境に良い影響を及ぼすのもあり、それはオリゴ糖です。
オリゴ糖は難消化性であり、ほとんど消化されずに大腸まで届きますので、血糖値はほぼ上昇しないと言われています。そして、オリゴ糖は大腸まで届いた後にビフィズス菌を始めとした善玉菌の餌になるんですね。
(ちなみに、オリゴ糖をたくさん含む食べ物といえば、ごぼうと玉ねぎです!)
対して、食物繊維についてですが、食物繊維は毎日しっかりと食べることで、腸内細菌の多様性が高まります
実は、腸内細菌の多様性が高くなると、例えなんらかの原因で一時的に腸内環境が悪くなったとしても(例:感染性腸炎になった、抗生物質を長期間飲んだなど)、もとの健康だった頃の腸内細菌叢に戻る力が高いことが分かりました(※2)。
※2)Frost F, et al:Gut,70:522-530,2021
そして、色んな種類の食物繊維を摂ることでこれらの効果はさらに上がるという報告もされています(※3)。
※3)Ranaivo H,et al:Gut Microbes,14:2044722,2022
しかしながら私たちは糖質を過剰に摂取し、食物繊維の摂取が少ないのが現状です。
普段から意識して食物繊維を摂るようにしましょう。
次にタンパク質です。タンパク質もきちんと摂取すれば、腸内細菌の多様性が上がると言われています。
タンパク質には、肉、魚、卵などの動物性タンパク質と、大豆などの植物性タンパク質に分類されます。
動物性タンパク質と植物性タンパク質は1:1で摂るのが理想と言われています。
これはなぜかと言うと、実は、動物性タンパク質を摂り過ぎると悪玉菌が増えると言われておりますので注意が必要なんですね(※4)。
※4)Singh RK,et al:J Transl Med,15:73,2017
一般的に、体重あたり1日1.0~1.5gのタンパク質を摂取することが必要だと言われていますが、タンパク質は食べ溜めができない栄養素ですので摂り過ぎてもあまり意味はありません。しかも動物性タンパク質を摂り過ぎると悪玉菌が増えて逆効果になってしまいます。
おすすめは、動物性タンパク質と植物性タンパク質をまとめて一緒に摂ることです。
皆さん、動物性タンパク質を摂りすぎず、自分の体重に合ったタンパク質量を上手く摂取しましょう。
最後に脂質です。
体に有益となる脂質がありますが、中鎖脂肪酸や、不飽和脂肪酸などは、善玉菌を増やすと言われています。 反対に、体に悪影響を及ぼす脂質、例えば飽和脂肪酸を摂り過ぎると、インドールなどの体に有害な物質を産生するウェルシュ菌といった悪玉菌を増やしてしまいます。
また、ある報告では、総カロリーの40%以上を脂肪が占めるような高脂肪食を摂り続けると、腸内環境が悪くなるとのことです(※5)。
※5)Wan Y,et al:Gut 68,1417-1429,2017
しかも、高脂肪食が腸内環境を悪くする効果は強いと言われており、普段から健康的な食生活をしている人が、高脂肪食に変えると、わずか数日で腸内環境が一気に悪くなるという結果も出ています(※6)。
※6)O’Keefe SJ,et al:Nat Commun,6:6342,2015
中鎖脂肪酸やオメガ3脂肪酸などは、健康に寄与すると言われていますので毎日積極的に摂取したいところです。
その代わり、悪玉菌を増やしてしまう飽和脂肪酸の摂りすぎには注意しましょう。
そして人工甘味料についても少しだけ解説します。
糖質は一般的に空腸で消化吸収されますが、人工甘味料は人工的に作られた甘味料です。このため、空腸で吸収されず、そのまま大腸まで到達します。
大腸まで到達した人工甘味料が悪玉菌のエサとなり、悪玉菌が増え、腸の免疫バリア機能が低下し、いわゆる腸漏れをきたしてしまうと言われています。
炭水化物もタンパク質も脂質も、きちんと適量を摂れば腸内環境を良くしてくれる栄養素です。
問題は、食物繊維をあまり摂らずに、その代わりに糖質、タンパク質や脂質を摂り過ぎてしまうような、偏った食事をしてしまうことですので注意が必要です。
そして、人工甘味料は私たちの栄養分とはならないだけでなく、私たちの腸内環境を悪くする可能性があります。個人的にはそのようなものをわざわざ摂る必要は全くないと思っています。
2番目は運動です。
一般的に、運動が腸内細菌の多様性を増加させることは様々な研究で立証されているのですが、善玉菌が産生する短鎖脂肪酸の濃度も高くなることも言われています。
これは、腸内細菌が、運動後に体内に蓄積する乳酸を利用して短鎖脂肪酸を産生していると考えられます(※7)。
※7)Scheiman J,et al:Nat Med,25:1104-1109,2019
これらは、運動が影響しているのではなく、運動するような健康意識の高い人は、食事にも気をつけているから腸内環境が良いんだ、と反論する意見もありますが、食事と運動はそれぞれ独立した要因として腸内環境に影響を及ぼすという報告があります(※8)。
※8)Sonnenburg ED &Sonnenburg JL:Cell Metab,20:779-786,2014
また、運動すると、筋肉から様々なホルモンが分泌されます。その数はなんと30種類以上あると言われており、これらのホルモンをマイオカインと呼んでいます。
そのホルモンの中でも、SPARC(Secreted Protein Acidic Rich in Cysteine、スパーク)は、大腸がんを予防することで有名です(※9)。
※9)Aoi W et al:Gut 62: 882-889,2012
運動は、私たちの生活習慣の中で唯一「ほぼ確実に大腸がんのリスクを下げる」と言われています。ここまで断言されているのは運動だけです。
具体的には、軽く息があがる程度の運動を1日約60分程度、週3回行うと良いと言われています
3番目は喫煙です。
喫煙者は、非喫煙者と比べると、腸内細菌の多様性が低下するという報告があります(※10)。
※10)Biedermann L,et al:PLoS One,8:e59260,2013
さらに、喫煙者は口腔内の細菌の多様性も低下するという報告もあるんです(※11)。
※11)Yu G,et al:Microbiome.5:3,2017
つまり、喫煙によって口腔内環境も腸内環境も悪くなってしまうんですね。
また、国立がん研究センターの報告ですが、喫煙者は咽頭がんのリスクが2.4倍に上がり、大腸がんのリスクが1.4倍に上がると言われています。
これは、口腔内や腸内の細菌の多様性が低下することと関連があると考えられます。
喫煙により、善玉菌が産生する短鎖脂肪酸が減ることが報告されており、さらに、悪玉菌が毒素を作るスイッチをオンにしてしまうという報告もあります。
Savin, Z.; Kivity, S.; Yonath, H.; Yehuda, S. Smoking and the intestinal microbiome. Arch Microbiol 2018, 200, 677-684, doi:10.1007/s00203-018-1506-2.
4番目は飲酒です。
福岡院で利用している腸内フローラ検査である「マイキンソー」がまとめたデータによると、常習的な飲酒により、善玉菌であるビフィズス菌や酪酸菌などの善玉菌が減るとのことです。 これにより腸内環境が悪化すると言われています。
なぜ腸内環境が悪化するかというと、アルコールを分解することで産生される「アセトアルデヒド」や「活性酸素」の存在が、善玉菌を減らして腸内環境の悪化を招く と言われており、これらはさらに大腸ポリープや大腸がんのリスク因子にもなると言われています。
確かに、私たちは大腸内視鏡検査を行っていますが、常習的に飲酒する患者さんは大腸ポリープが出来ていることが非常に多い印象です。
余談ですが、昨今、非飲酒者の食道がんが細菌増加傾向です。これは口腔内細菌の環境悪化によるものと示唆されています。
つまり、口腔内細菌の中の悪玉菌が、グルコースを分解して「アセトアルデヒド」を産生し、この「アセトアルデヒド」により食道がんを誘発するのではという仮説も出ています(※12)。
※12)Sung JJY,et al:Gut:doi:10.1136/gut-jnl-2019-319826,2020
飲酒していないのにアセトアルデヒドを産生するとは恐ろしいですね。
いかがだったでしょうか。食事、運動、喫煙、飲酒と私たちの生活習慣に欠かせないメジャーな習慣を4つ解説しました。それぞれが腸内環境と密接に関わっていることがわかります。
この4つの中でも、やはり食事がかなり腸内環境に影響してくることが分かりますよね。食べるものは普段から気をつけたいものです。
今回のことを頭に入れながら、普段の生活を過ごしましょう。
この記事を書いた人
秋山 祖久 医師
国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。