内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

腸活迷子必見!三大善玉菌の増やし方を伝授します!

腸活をしている方が最近増えてきました。

本屋さんに行けば腸活関連の本は沢山ありますし、テレビで腸活が取り上げられることも多いです。芸能人などのいわゆるインフルエンサーも腸活している方が多いです。

腸活の基本はなんと言っても食事です。直接胃腸に入るわけですから当たり前ですよね。

ただ、腸活の勉強をしていると

「これ食べたら腸内環境が悪くなるよ」

といった、腸に悪い食べ物についての知識は自然とついてきます。
いわゆる「引き算の食事」です。人間はネガティブなものの方が記憶に残りやすいと言われていますからね。

それでは今回は逆に「足し算の食事」をもう一度考えてみましょう。

代表的な善玉菌と言えばなんでしょうか?

皆さんもご存知の通り、善玉菌の3トップは
「酪酸菌」「乳酸菌」「ビフィズス菌」です!
腸活迷子の方のために、今回はこの3つの菌を腸内で増やすには何を食べたら良いのかを解説したいと思います。腸活迷子で何を食べて良いのか悩んでいる方、ぜひ参考にされてください。

A. 酪酸菌

現在注目されている善玉菌で、短鎖脂肪酸である「酪酸」を産生します。健康に寄与する様々な効果があり、「スーパー善玉菌」と言われています。
100歳以上の長寿者が多い地域である、京都府京丹後市や沖縄県南大東島などに住んでいる人の腸の中には酪酸菌が多く存在しており、酪酸菌が長寿の鍵を握っているのではないかと今も研究されています。

酪酸菌は臭いがきついため、菌そのものが食べ物に含まれていることはほとんどありません。糠漬けくらいではないでしょうか。

もともと日本人は他の人種と比べ、腸内細菌中の酪酸菌の割合が多いです。これを使わない手はありません。酪酸菌の好物を与えて、自前の酪酸菌を増やしてあげましょう!


それでは酪酸菌の好物を解説します。
酪酸菌は、「水溶性食物繊維」が好物です。ですので、水溶性食物繊維を豊富に含むものが酪酸菌を増やす食材になります。

1 海藻類わかめ、昆布、海苔、ひじきなど
2 きのこ類椎茸、しめじ、えのき、なめこなど
3 豆類納豆、豆腐など
4 穀物類もち麦、玄米など
5 野菜類ブロッコリー、ごぼう、にんじん、大根など
6 果物類りんご、バナナ、アボカドなど

この中でも特に、酪酸菌は①の海藻類が好物と言われています。
食生活の欧米化に伴い、海藻類を食べる機会は少なくなっていますので意識して海藻類を食べましょう。

ちなみに、日本人の90%以上が、海藻類を分解する酵素を持った腸内細菌を持っているのですが、その他世界各国の人々は、15%程度しか持っていないんです。これが、日本人が酪酸菌を多く持っている要因と言われています。

せっかく親から受け継いだ腸内細菌ですので、有効利用しない手はないです。
できれば毎日海藻類を食べて、酪酸菌を増やしてあげましょう。

B. 乳酸菌

乳酸菌の主戦場は小腸です。主に小腸に住み着いて健康に寄与しています。
乳酸菌の一番の得意分野は、免疫力増強作用です。つまり、免疫力のスイッチを押してくれる作用になります。

小腸に、免疫細胞の基地であるパイエル板が無数にあるのですが、乳酸菌がその中に取り込まれることにより、免疫のスイッチが押された状態になり、常に臨戦体制をとってくれるんです。

それでは、乳酸菌はどのようにして増やせば良いのでしょうか。
乳酸菌の好物は、水溶性食物繊維とオリゴ糖です。

水溶性食物繊維は酪酸菌で説明した通りです。

1 海藻類わかめ、昆布、海苔、ひじきなど
2 きのこ類椎茸、しめじ、えのき、なめこなど
3 豆類納豆、豆腐など
4 穀物類もち麦、玄米など
5 野菜類ブロッコリー、ごぼう、にんじん、大根など
6 果物類りんご、バナナ、アボカドなど

そしてオリゴ糖を豊富に含む食べ物としては、
1 豆類大豆、きなこなど。
2 野菜類ごぼう、玉ねぎ、ブロッコリー、
トマト、アスパラガスなど。
3 果物類バナナ、りんご、キウイ、桃、スイカなど。

になります。

と、乳酸菌の好物を上げましたが、酪酸菌にもビフィズス菌にもない特徴が乳酸菌にはあります。それは、乳酸菌は酸素下でも生きることができる細菌というところです。

乳酸菌は酸素下でも生きることができるので、食べ物の中に普通に含まれますし、色々と加工することもできます。これは善玉菌の中でも唯一と言ってもいいくらいです。

つまり、食べ物から簡単に腸内に取り入れることができます。いわゆるプロバイオティクスというやつです。

乳酸菌を含む食べ物と言えば、
漬物、キムチ、ヨーグルト、みそなどの発酵食品が思い浮かびます。
ただし、発酵食品などで乳酸菌を直接摂るのもいいのですが、どうしても菌数が絶対的に足りないです。

細菌学の第一人者である光岡知足先生は、1日1兆個の乳酸菌を摂りましょう、と推奨していました。我々もそう思います。
食べ物から1日1兆個を摂るのは大変です。例えばヨーグルトであれば、1パック450mlを1日200パックも摂らなければいけない計算になります。まず無理ですよね。

ここは、整腸剤を利用しましょう。ただし、整腸剤も菌数が少ないものがほとんどですので注意が必要です。
できれば乳酸菌が1日1兆個摂れるような整腸剤を選んで飲みましょう。

C. ビフィズス菌

酸素が苦手なため、大腸に住み着いているのがビフィズス菌です。ビフィズス菌の得意分野は整腸作用です。さらに、悪玉菌の増殖を防いでくれるのもビフィズス菌の役目と言えます。
また、ビフィズス菌は加齢とともに減ってきますので要注意です。
60歳を過ぎると、ビフィズス菌は腸内細菌全体の1%未満まで減ると言われています。

ビフィズス菌も乳酸菌と一緒で、水溶性食物繊維とオリゴ糖が好物になります。

水溶性食物繊維は以下です。

1 海藻類わかめ、昆布、海苔、ひじきなど
2 きのこ類椎茸、しめじ、えのき、なめこなど
3 豆類納豆、豆腐など
4 穀物類もち麦、玄米など
5 野菜類ブロッコリー、ごぼう、にんじん、大根など
6 果物類りんご、バナナ、アボカドなど

オリゴ糖を豊富に含む食べ物も先ほど説明しましたね。
1 豆類大豆、きなこなど。
2 野菜類ごぼう、玉ねぎ、ブロッコリー、
トマト、アスパラガスなど。
3 果物類バナナ、りんご、キウイ、桃、スイカなど。

になります。


これらをきちんと摂ればビフィズス菌は自然と増えてきます。
また、ビフィズス菌は酸素が苦手なため、食べ物の中に含まれることが少なく、一部のヨーグルトに含まれている程度です。

ただ、最近ではビフィズス菌が入った整腸剤があります。

ここでよく質問されるのが
「乳酸菌が死菌でも効果があるのは良く分かる。乳酸菌は免疫力アップが主な役割なので、死菌でも免疫力のスイッチを押してくれる。
ただ、ビフィズス菌は整腸作用が主な役割であるため、生きた菌を腸に届けないと意味がないのではないか?」
です。

答えは、「ビフィズス菌は死んだ菌でも一定の効果がある」です。

確かに、市販されているビフィズス菌入りの整腸剤は、生きたビフィズス菌を使っています。しかしながらビフィズス菌は胃酸に非常に弱く、すぐに死んでしまいます。生きたビフィズス菌を使った整腸剤が食後投与であるのは、食べ物を食べることで胃酸が薄まるためです。

しかしながら実は死菌であるビフィズス菌でも有効であるという報告があります。
その報告では、死菌のビフィズス菌を摂取すると、腹痛、腹部膨満、排便習慣が34%も改善したとのことです。
Andresen V,et al:Lancet Gastroenterol Hepatol,5:658-666,2020

そうであれば、ビフィズス菌も整腸剤がある程度効果があるということになりますので、それならできるだけビフィズス菌の菌数が多い整腸剤を飲むと良いのではないでしょうか。

市販されているビフィズス菌入りの整腸剤(例えば新ビオフェルミンSなど)は菌数を公表していません。
我々が処方するビオフェルミンは、1錠で約1億個くらいのビフィズス菌を含むと言われていますので、市販されている整腸剤だともう少し少ないのではないかと予想します。ビオフェルミンは1日に3〜6錠飲みますので、1日3~6億個のビフィズス菌をいうことになります。。。少ないですよねすごく。

いかがだったでしょうか。

最後に簡単にまとめると、自前の3つの菌を増やすためには、

1 とにかく水溶性食物繊維とオリゴ糖を毎日しっかりと摂取することです。特に酪酸菌を増やすためには、海藻類を意識して摂りましょう。

2 また、乳酸菌やビフィズス菌は効率よく整腸剤から取り入れることができます。ただし、菌数が少ないものはあまり効果が期待できませんので、菌数の多い整腸剤を選んで飲みましょう!


となります。

皆さんもぜひこの3つの善玉菌を増やして腸から健康になりましょう。
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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。