内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

今回は、ビタミンDの解説をしたいと思います。
その前に、ビタミンについてまず解説をしたいと思います。
ビタミンとは一体なんでしょうか?

ビタミンとは
「糖質、脂質、蛋白質の代謝を円滑にするために必要な栄養素」のことです。

ビタミンA、B1、B2、B6、B12、C、D、E、K、ナイアシン、ビオチン、葉酸、パントテン酸の13種類のビタミンが存在しています。どれも体に必要なものです。

ビタミンは大きく「水溶性ビタミン」と「脂溶性ビタミン」に分かれます。「水溶性ビタミン」とは水に溶けるビタミンであり、「脂溶性ビタミン」とは水に溶けないビタミンです。

具体的に
「水溶性ビタミン」→ビタミンB1、B2、B6、B12、C、ナイアシン、ビオチン、葉酸、パントテン酸の9種類
「脂溶性ビタミン」→ビタミンA、D、E、Kの4種類
に分かれます。

つまり、ビタミンDは「脂溶性ビタミン」に分類されています。

それではビタミンDはどのようにして体内に取り入れたら良いのでしょうか?
まず大前提として、ビタミンDは体内で生成されることが分かっています。
ビタミンDは、ヒトの体内でコレステロールを原料として作られています。
日光に当たることにより体内で作られるのですが、詳細に説明すると、UVBが皮膚に当たることで作られます。UVBは服やガラス、プラスチックなどで遮られますので、直接皮膚に当たらないとビタミンDは作られないようになっています。

20~30分ほど日光浴をすれば、1日に必要なビタミンDは作られるのですが、日焼け止めを塗るとビタミンDは作られなくなりますのでご注意ください。
また、日焼けして皮膚が黒くなってくると、UVBが黒色に吸収されてしまい、逆にビタミンDの生成ができなくなります。日焼けしすぎるのも問題ということですね。

さらにマニアックな話をすると、北に行けば行くほど、太陽光の照射角度が傾きますので、UVBが散乱しやすくなり、ビタミンDが作られにくくなります。
つまり、寒い地域や寒い季節の方がビタミンDが欠乏しやすいと言われています。

いかがでしょうか。以上のことを考慮すると、なかなか日光浴でビタミンDを作ることがいかに大変かが分かるのではないでしょうか。

それではどのようにすればビタミンDを体内に取り入れる事ができるのでしょうか。

ビタミンDを豊富に含む食べ物を見てみましょう。

ビタミンDを豊富に含む食べ物

ビタミンDを豊富に含む食べ物ですが、魚類、卵類、きのこ類になります。

それでは、私達は普段の食生活でどれくらいのビタミンDを摂ってるのでしょうか?

日本人のビタミンDの1日の平均摂取量は6.9μg(令和元年国民栄養・健康調査による)となっています。

ビタミンDの1日の推奨摂取量が8.5μgですので、普段の食事では足りていないことになります。

ただ、個人的には、ビタミンD摂取量は1日8.5μgでも足りないと思っています。

最低でも1日25μgは摂取し、可能であれば100μgは摂りたいところです。
しかしながら、これだけのビタミンDを食べ物から摂取するのはまず不可能です。

そんな時はサプリメントでビタミンDを摂取しましょう。サプリメントであれば、手軽にビタミンDを摂取することができます。
それでは、ここからはビタミンDの効能について解説したいと思います。

ビタミンDと言えば、骨を形成することで有名ですが、近年、それだけではない驚くべき効能があることがわかりました。

ビタミンDの主な効能は以下のようになっています。

「細胞分化誘導」→がん予防

私たちの体は、たくさんの細胞でできており、その細胞は絶えず古い細胞から新しい細胞に生まれ変わります。
その新しい細胞に生まれ変わる過程で、悪い細胞に生まれ変わってしまうと「がん」になってしまいます。
ビタミンDは、細胞の核にあるビタミンD受容体に結合することによって、正常な細胞への分化を誘導します。つまり悪い細胞である「がん」になることを防ぐ作用があります。

「免疫担当細胞の調整」→自己免疫疾患、アレルギー疾患、感染症の予防

リンパ球など、私たちの免疫を担当している細胞にもビタミンD受容体が存在しています。この受容体にビタミンDが結合することにより、免疫力のバランスをうまく調節してくれる作用があります。
免疫力は、強すぎるとリウマチ、膠原病などの自己免疫疾患が発症したり、アレルギーが出やすくなります。反対に弱すぎると、細菌やウイルスの感染症にかかりやすくなります。がん細胞を攻撃する力も弱くなってしまいます。
この強すぎず、弱すぎずのバランスを保つのがビタミンDの役割です。

「神経伝達物質の生成」→うつ病予防

脳内に存在するセロトニンなどの神経伝達物質の生成にビタミンDが関与していると言われています。セロトニンが少ないと、気分が落ち込んだり、抑うつ気分になってしまうんです。つまり、ビタミンDをきちんと摂取していると、セロトニンがきちんと作られますので抑うつ気分を防ぐことができます。

「大腸ポリープの予防」

ビタミンDを1日7.5μg以上摂ると、大腸ポリープの発生を予防することが判明しています。
ただし、これは食べ物からビタミンDを摂取した場合に限ります。サプリメントで摂取しても効果はありませんのでご注意ください。
上述したように、日本人の1日の平均ビタミンD摂取量は6.9μgですので、今のままでは大腸ポリープは予防できていないと考えられます。
例えば、1日卵1個を追加して食べると良いです。卵1個にビタミンDが2μg含まれますので、これで1日のビタミンD摂取量は8.9μgとなり、大腸ポリープの予防になりますし、1日に必要なビタミンD推奨摂取量もクリアすることができます。

「腸内細菌の多様性と相関関係がある」

血中の活性型ビタミンD値が高い人は、腸内細菌の多様性が高いということがわかってきました。
「腸内細菌の多様性」とは、「腸内で、色んな種類の腸内細菌が互いに助け合いながら共存して生きている」という意味です。
一般的に、腸内細菌の多様性は、年齢とともに低くなっていくと言われてます。
腸内細菌は様々な働きがありますが、菌によってそれぞれの得意分野があります。

酪酸、酢酸、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸を作るのが得意な菌、エクオールを産生するのが得意な菌、免疫力を上げるのが得意な菌、肥満を防ぐのが得意な菌、各種ビタミンを作るのが得意な菌、などです。

これらがお互いの得意分野を活かしながら、共存して生きています。
当然ですが、この「腸内細菌の多様性」が高い方が、腸内環境は良くなり、健康的になります。
つまり、血中の活性型ビタミンD値が高いと、「腸内細菌の多様性」が高くなり、より健康的になっていくということになります。

いかがだったでしょうか。
骨を形成する役割だけと考えられていた「ビタミンD」ですが、実な様々な体の健康を保つ効果があるんですね。

ビタミンDの血中濃度は30ng/ml以上で正常と言われており、上記のような効能を期待するのであれば、50ng/ml以上は必要と言われています。
この血中濃度を維持するためには、食事だけでは足りないです。
このため、サプリメントで最低でも1日25μgは補充したいところです。

現在、日本人の7割がビタミンD不足と言われています。
普段の生活からビタミンDを意識して摂取して、健康を保ちましょう。
癌にならない腸活 実践メルマガ講座 乳酸菌バナー 内視鏡チャンネルバナー

この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。