内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

整腸剤やヨーグルトに含まれている菌といえば、乳酸菌とビフィズス菌だと思います。

どちらも有名な菌です。腸内細菌の中の善玉菌としても有名で、これらの菌を摂取することで、腸内環境が整い、体に良い影響を及ぼすことが分かっています。

でも実際のところ、乳酸菌とビフィズス菌って何がどう違うのか、よく理解されてない方が多いのではないかと思います。

そこで今回は、乳酸菌とビフィズズ菌の類似点及び決定的な違いについて解説したいと思います。

乳酸菌

ビフィズス菌

まず、乳酸菌とビフィズス菌は、同じ仲間です。ビフィズス菌は広い意味で乳酸菌の部類に入ります。

なぜかと言うと、乳酸菌は、糖を食べて「乳酸」を産生する菌です。
ビフィズス菌は、糖を食べて「乳酸」と「酢酸」を産生する菌です。

乳酸を産生する菌の総称が「乳酸菌」ですので、乳酸(と酢酸)を産生するビフィズス菌も乳酸菌の仲間になります。

乳酸菌やビフィズズ菌は、この「乳酸」や「酢酸」を産生することにより、腸内を酸性の環境に傾けます。
pH(ピーエッチ)という指数がありますが、これはpH=7が中性、pH>7がアルカリ性、pH<7が酸性になります。
つまり、腸内のpH<7にして腸内が酸性に傾きます。悪玉菌は、酸性の環境下では増殖できないため、結果的に腸内環境が整うことになるのです。
それでは、乳酸菌とビフィズス菌の働きって違うのでしょうか?
実はほぼほぼ一緒です。以下のような働きをすると言われています。

A. 短鎖脂肪酸を産生することにより、短鎖脂肪酸特有の効果を発揮する

B. 小腸で免疫細胞に取り込まれ、免疫増強効果をもたらす

C. コレステロール値を下げる

D. ビタミンB群、ビタミンK、葉酸などを合成する

それぞれ解説します。

A.短鎖脂肪酸を産生することにより、短鎖脂肪酸特有の効果を発揮する

「短鎖脂肪酸」とは、乳酸菌やビフィズス菌が、食べ物を分解する過程でできる物質です。
主に食物繊維を分解する時に産生されます。具体的な「短鎖脂肪酸」とは、「酢酸」「酪酸」「カプロン酸」などです。

「酢酸」→お酢
「酪酸」→バターなど
「カプロン酸」→味噌、醤油など

「短鎖脂肪酸」は、このように、発酵食品にも多く含まれています。つまり、菌が代謝してできたものが「短鎖脂肪酸」ということになります。

ちなみに、悪玉菌は「短鎖脂肪酸」を作ることはできません。
悪玉菌の代謝産物は「腐敗物質」です。タンパク質、脂質を餌にしてこの「腐敗物質」を作ります。アンモニア、硫化水素、インドールなどの「腐敗物質」を産生し、体に様々な悪影響を及ぼすのです。

「短鎖脂肪酸」特有の効果とは、以下の通りです。

①腸管運動のエネルギー源になる。
②①により、腸の蠕動運動が促進される。
③免疫力を上げることにより、アレルギーやがんなどの病気を予防する。
④脂肪の蓄積を減らし、肥満を防ぐ。
⑤糖尿病を改善するホルモンである「インクレチン」を増やす。
⑥幸せホルモンである「セロトニン」を増やす。
以上のような働きがあります。

特に最近注目されているのが、③の「免疫力を上げること」です。
実はこの「短鎖脂肪酸」は、免疫力を上げるだけでなく、強くなった炎症を抑える働きがあることが証明されました。
具体的に言うと、風邪を引いたら熱が出ますが、これは免疫力が敵と戦っている時に起こる体のサインであり、これが炎症と言われるものです。
「短鎖脂肪酸」は、炎症を抑える働きがあるため、風邪を引いた時も高熱を出さないようにしてくれます。

B. 小腸で免疫細胞に取り込まれ、免疫増強効果をもたらす

小腸にはたくさんの免疫細胞がいます。だいたい人間の免疫細胞の7割が腸に存在していると言われています。
腸のところどころに、「パイエル板」という小さな凹みが点々と存在しています。
この凹みは、実は腸にしかない特別なものです。
「パイエル板」の表面に「M細胞」がいるのですが、整腸剤の菌が小腸に入ってくると、まずはこの「M細胞」がこの菌を取り込み、パイエル板の中に連れていきます。
次に、菌は、パイエル板の中で待ち構えていたマクロファージや樹状細胞に食べられます。
マクロファージや樹状細胞は菌を食べながら、「サイトカイン」や「抗菌ペプチド」と呼ばれる物質を分泌して、菌を食べる準備をするように自分と同じ細胞の仲間に伝達します。

こんな感じで、免疫細胞がどんどん活性化され、常に免疫スイッチが入っている状態になります。
この免疫力増強効果により、ウイルスや細菌などの感染症に強くなるだけでなく、がん予防、アレルギー予防にもなります。
ちなみにこの小腸での免疫力増強効果は、菌が生きていても(生菌)、死んでいても(死菌)、どちらでも効果があります。

つまり、生菌だろうと死菌だろうと、とにかく沢山の菌を摂取することにより、免疫細胞が沢山活性化されることになります。

C. コレステロール値を下げる

コレステロールは、人間の体の中に存在する脂質であり、人間の細胞を作る材料となります。
このコレステロールですが、体に良い働きをする「HDLコレステロール(善玉コレステロール)」と、動脈硬化の原因となる「LDLコレステロール(悪玉コレステロール)」があります。

乳酸菌やビフィズス菌は、コレステロールを吸収する働きがあり、これにより血中のコレステロール濃度を下げます。
これにより、動脈硬化を防ぐ作用があります。

D. ビタミンB群、ビタミンK、葉酸などを合成する

今まで食事から摂取するしかないと言われていた各種ビタミンですが、腸内細菌が合成することが分かりました。
乳酸菌やビフィズス菌は、ビタミンB群、ビタミンK、葉酸などを合成する働きがあり、これらの合成量は、人間が必要なビタミン量の約3割まで到達するとのことです。かなりの割合を占めるということになります。
乳酸菌とビフィズス菌には、以上のような働きを担っているのです。

このように、乳酸菌とビフィズス菌は、我々の体の中で、よく似た働きをしています。

では、乳酸菌とビフィズス菌の違いはあるのでしょうか?
大きく2つありますので解説します。

乳酸菌とビフィズス菌の決定的な違いその①です。

その①
乳酸菌は、酸素があってもなくても生きていけますが、ビフィズス菌は、酸素があると生きていけません。人間は、酸素がないと生きていけませんが、ビフィズス菌はその真逆だと思ってください。

ですので、乳酸菌の生息場所は、酸素がある小腸と酸素がない大腸の両方に住み着いていますが、ビフィズス菌の生息場所は、酸素がない大腸だけです。
具体的に、大腸内に乳酸菌は約100億〜1000億個住み着いているのですが、ビフィズズ菌は1兆〜10兆個も住み着いています。
つまり、大腸内では圧倒的にビフィズス菌の方が乳酸菌よりも多いですが、酸素がある小腸では、ビフィズス菌を含むほとんどの腸内細菌が住み着くことができません。その代わり、酸素があっても大丈夫な乳酸菌が活躍することができるのです。


乳酸菌とビフィズス菌の決定的な違いその②です。

その②
ビフィズス菌は「乳酸」に加え、「酢酸」を産生します。
「酢酸」は、強烈な殺菌作用がありますので、悪玉菌を強力に減らしてくれます。これにより善玉菌優位となり、整腸作用がさらに強力になると言われています。


このように、乳酸菌とビフィズス菌に決定的な違いがあることで、それぞれの得意な働きがあります。

具体的には

乳酸菌の働きで最も強力かつ期待できるのが「免疫力増強作用」
ビフィズス菌の働きで最も強力かつ期待できるのが「整腸作用」

と言われています。

そう考えると、乳酸菌もビフィズス菌もどちらも腸内で増やしたいところです。

それでは、腸内で乳酸菌とビフィズス菌を増やすためにはどうしたら良いでしょうか?

方法としては2つあります。
1つ目が、もともと腸内に存在する乳酸菌やビフィズス菌の量を増やす(プレバイオティクス)。
2つ目が、外から乳酸菌やビフィズス菌を摂り入れる(プロバイオティクス)
です。
2つを合わせてシンバイオティクスと呼びます。
腸内に存在する乳酸菌やビフィズス菌のエサとなるのが、食物繊維やオリゴ糖です。

食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があり、それぞれの代表的な食べ物は以下になります。

水溶性食物繊維

らっきょう、海藻類、納豆、山芋、里芋など。

不溶性食物繊維

ブロッコリー、きのこ類、穀物類、ごぼう、タケノコ、バナナ、豆類など。

水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランスよく含む食品

オクラ、プルーン、キウイ、サツマイモ、納豆、人参、ジャガイモなど。
この2つの食物繊維ですが、
水溶性食物繊維1:不溶性食物繊維2
の割合で食べるのが理想的と言われています。

ただし、ここで気をつけて欲しいのは食物繊維の摂りすぎです。

水溶性食物繊維を摂りすぎると、下痢を誘発してしまいます。
不溶性食物繊維を摂りすぎると、便の水分が吸い取られてカチカチの便になり、さらに食物繊維がふっくらと膨らみ、お腹が張って苦しくなります。
食物繊維の食べ過ぎには注意してください。


また、オリゴ糖は「豆類、玉ねぎ、ニンニク、ごぼう、きな粉、えんどう豆、小豆、ブロッコリー、小麦、はちみつ」などに含まれています。
オリゴ糖も食べ過ぎるとお腹が張ったり、下痢することがあるので注意が必要です。


以上のような食べ物を意識して食べるようにすれば、腸内に存在する乳酸菌やビフィズス菌が増えてきます。


また、2つ目の方法として、外から乳酸菌やビフィズス菌を摂り入れることもできます。

ただし、乳酸菌を含む食べ物は沢山ありますが、ビフィズス菌を含む食べ物って実は少ないです。それは、ビフィズス菌は酸素下では生きていけないのが関係しています。

そんな時は、整腸剤で摂取するようにしましょう。
今や沢山の種類の整腸剤がドラッグストアに陳列されています。

自分の腸にあった整腸剤が必ずあるはずです。色んな整腸剤を試してみてください。
その際、最低でも1ヶ月以上は続けて飲んでください。整腸剤は薬ではありませんので即効性はほとんどありません。

市販で売られている整腸剤を試してみたがあまり効果を感じなかった方は、当医療法人が監修した新しい整腸剤である「ラクエイド」を試してみてください。
ここで、ラクエイドの4つの特徴を解説します。

①1日6カプセル中に、エンテロコッカス・フェカリス菌という乳酸菌が1兆個入っています。
1カプセルあたり1,666億個の乳酸菌が入っていることになります。これは市販されている整腸剤が1錠1億個から10億個と考えると、菌数は多いです。

②1日6カプセル中に、ビフィズス菌が200億個入っています。
ビフィズス菌は年齢とともに減っていきますので定期的に摂取した方がいいです。
「ラクエイド」のように、1日でビフィズス菌が200億個も摂れる整腸剤もあまりありません。

③善玉菌のエサになるキシロオリゴ糖、難消化性デキストリンがカプセル内に含まれています。
これにより、もともと腸に生息する善玉菌を増やしてくれます。

④厳選された乳酸菌・ビフィズス菌16種35株の培養から得られた産生物質が配合されています。
この産生物質は、善玉菌を介することなくダイレクトに体内に吸収されることにより、免疫力を増強を促します。

以上が「ラクエイド」の特徴でした。

乳酸菌とビフィズス菌の違いについて解説しましたがいかがだったでしょうか?
乳酸菌とビフィズス菌について正しく理解し、腸内の乳酸菌、ビフィズス菌を増やしましょう。
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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。