内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

中性脂肪を下げる食事のポイント! 食生活を改善して運動を効果的に取り入れよう

健康診断を受け「中性脂肪の数値が高い」という結果が出ると、再検査など受けることになり食事の見直しや運動するようにと医師から指導されることがあります。

仕事や家事などで忙しく運動する時間が取れない、食事の見直しもどうしたらいいかわからないと悩んでいる方へ中性脂肪を下げる方法を解説します。

日頃の生活の中で、無理なく行えることから始めて少しずつ中性脂肪を下げていきましょう。

1. 中性脂肪とは?

中性脂肪を下げる食事のポイント
中性脂肪は、血液中に存在する脂肪の一つです。

炭水化物が、人の体に入ってくるとエネルギーに変わり使われますが、エネルギーとして使われず余った分が中性脂肪となります。

体内でエネルギーが尽き果ててしまったときに使えるように、中性脂肪は男性の場合は内臓脂肪、女性の場合は皮下脂肪として蓄えられることが多く、また肝臓にも少し蓄えられるのです。

ある程度の蓄えとして体内にある中性脂肪にはデメリットはありませんが、中性脂肪は増えすぎることで内臓脂肪や皮下脂肪となるためそれが病気のリスクになることがあるのです。

2. 中性脂肪を減らす方法とは?

中性脂肪の落とし方
中性脂肪の基準値は150mg/dl以下が標準値です。
中性脂肪が多いと脂のとり過ぎかと思ってしまいますが、実は中性脂肪の正体は炭水化物なのです。

炭水化物が体の中に入ってきて、エネルギーとして使われて残ったものが中性脂肪と呼ばれています。

中性脂肪は、普段の食べ物や飲み物を少し変えることで数値が下がることがあります。

中性脂肪を減らす方法を詳しくお伝えいたします。

2-1. 薬を使う

中性脂肪の減らし方
500mg/dlを超えるなど中性脂肪が高い場合には、EPAやオメガ-3脂肪酸エチルという薬が処方されることがあります。

EPAは、青魚から抽出されるもので肝臓での脂質の合成・分泌を抑える働きや血をさらさらにする作用があるため閉塞性動脈硬化症のリスクを軽減するために用いられることがあります。

薬を使うことで、一時的に中性脂肪から受けるデメリットを改善しその間に食生活の見直しをすることも一つの方法です。

2-2. 炭水化物を減らす

バナナを持った女性
「中性脂肪の数値が高い」という検査結果が出た方の普段の食事に注目すると、炭水化物の摂取量が多い場合があります。
炭水化物と中性脂肪は関連がないように思えますが、血糖値の上昇と中性脂肪の数値が上がることは大いに関連があります。

炭水化物の多い食事をとると、血糖値を下げるため膵臓からインスリンというホルモンが多量に分泌されます。インスリンは、血液中のブドウ糖をグリコーゲンに変換して筋肉や肝臓にため込む働きがあります。

しかし血中のブドウ糖が余るとインスリンはブドウ糖を中性脂肪に変え脂肪細胞に溜め込んでしまいます。血糖値の上昇を緩やかにするためには、炭水化物の摂取を控えることが有効です。

炭水化物には白米・パン・パスタなどがあり、とくに麺類だけやどんぶりものだけという食事は、炭水化物が多くなる傾向があるため、血糖値が急激に上昇しやすいです。外食が多い方などは、定食などバランスのよい食事を選ぶように心がけ、ご飯は少なめにするとよいでしょう。

健康診断の結果などで、中性脂肪の数値が1000mg/dl以下の場合、炭水化物を控えることで数値が下がることもあります。

近年では、中性脂肪を下げるサプリメントやレシピなども多くあります。これらを活用することもおすすめです。

2-3. 糖質を下げる

色とりどりの野菜
糖質を下げるには、食生活の見直しから始めることが近道です。

例えば、脂身の多い肉類などはなるべく避けましょう。またタンパク質が体に良いからといって乳製品やたまごの過剰摂取は逆効果になることがあります。

食物繊維の多いものを摂取しコレステロールの蓄積を防ぐことを心がけましょう。揚げ物の量を減らす、鶏肉はささみにする、油はオリーブオイルにするなど少しの工夫から始めることで糖質は下げられることがあります。

忙しい方でも、コンビニ弁当から野菜や海藻、きのこなどが使われているお惣菜やサラダを買う、定食は肉ではなく青魚にするなどがポイントです。

2-4. 中性脂肪を下げる飲み物を取り入れる

冷たい緑茶
中性脂肪を下げる飲み物を積極的に飲むことも方法の一つです。中性脂肪を下げるといわれる成分にはポリフェノールがあります。

ポリフェノールは、抗酸化物質で植物由来の苦味や色素の元となるものといわれ、自然界に約8000種類以上あるといわれています。

ポリフェノールを含む飲み物には、緑茶に含まれるカテキンやチョコレートに含まれるカカオポリフェノール、コーヒーに含まれるクロロゲン酸などがあります。

他にも中性脂肪を減らす働きのあるポリフェノールを含む飲み物は、下記のものがあるので参考にしてください。

・紅茶
・緑茶
・ウーロン茶
・コーヒー
・赤ワイン
・ココア

甘い飲み物を少し控え、緑茶や無糖の紅茶、ウーロン茶をとるようにしましょう。

またコンビニなどで飲み物を買う際には、トクホマーク(特定健康用食品)のついた飲料を選ぶこともおすすめです。
トクホマークの飲料には「血中の中性脂肪を減らすのを助ける」などのメッセージが書かれており、消費者庁が表示を許可している製品です。

2-5. 筋肉をつけるために運動をする

運動をする女性
筋肉をつけることで、中性脂肪が蓄積された体内の内臓脂肪や皮下脂肪を減らすことができます。運動は脂肪から筋肉に変わることで、基礎代謝量が上がりエネルギーも消費しやすくなります。

エネルギーを使うために肝臓の中の中性脂肪を利用しようとするので、空腹時(とくに夕食前)の運動がおすすめです。基礎代謝量を上げるための運動を具体的にまとめてみました。

スロースクワット

スクワットする女性
下半身にある大腿四頭筋やハムストリングス、大殿筋の大きな筋肉を有効に動かすことができる運動です。動きもシンプルなので、運動が苦手な方簡単にできます。

1. 肩幅よりやや広く足を開き、両手は胸の前でクロスの形でキープ
2. つま先と膝が少し外側を向くように立つ
3. 5秒かけゆっくり膝を曲げる(横から見たときに太ももは床と平行になるように)
4. 曲げた膝を5秒かけてゆっくり伸ばす

3と4を1セットとして、朝晩5セット行います。朝起きてからと寝る前に習慣化するとよいでしょう。

踏み台の昇り降り

昇降台を使った運動
室内で手軽にでき効率のよい有酸素運動のひとつが、踏み台の昇り降りです。有酸素運動は、中性脂肪を減らすことにもよい方法なので積極的に取り入れましょう。

1. 踏み台は10~20cm程度の高さの台か階段を使用する
2. 正面を見ながら背筋をまっすぐに伸ばした状態で片足ずつ台に登る
例:右足で上り、左足も上がる(もしくはその逆)
3. 正面を見ながら背筋をまっすぐ伸ばした状態で片足ずつ降りる
例:右足、左足の順に降りる(もしくはその逆)
4. 2の逆
5. 3の逆

踏み台の昇り降りを行うときには、足の裏全体をしっかり着けて行なうことが大切です。普段の生活の中で、エレベーターやエスカレーターではなく階段を利用することもよいでしょう。

3. どうして中性脂肪が多いといけないの?

運動する女性
健康診断などの結果で中性脂肪の数値が高いと再検査や医師から指摘されたりしますが、中性脂肪が多いとどんなリスクがあるのでしょうか。

中性脂肪が多いだけでは問題はないのですが、中性脂肪が増えることで起こりうるリスクがいくつかあります。これらを理解しておくことで、さまざまなリスクを回避することも可能です。

3-1. 中性脂肪が増えることで死に至るリスクもある

とくに男性は、肝臓や膵臓、胃、腸などに中性脂肪が付きやすくなります。内臓脂肪が多くなることで、発がん率が高くなるといわれています。

また中性脂肪の基準数値は150mg/dlですが、1000mg/dlを超えてしまうと膵臓に炎症を起こすリスクが高くなります。その症状の一つが膵炎で、膵臓が分泌するアミラーゼというホルモンが自身の膵臓を溶かしてしまう病気です。

中性脂肪が増えることで、急性膵炎を起こすと死に至ることもあります。

それ以外にも内臓脂肪が増えると動脈硬化症や脂質異常症、高血圧症などにつながり心臓病や脳卒中を引き起こすリスクも高くなるのです。

中性脂肪の数値が高いだけでは問題がなくても、その状態を放置することでさまざまなリスクにつながることを理解することが大切です。

4. 中性脂肪が増える原因とは?

メタボなお腹
普段の生活の中で、体によいと思ってやっていることが中性脂肪を増やしてしまう原因になっているかもしれません。

健康的な体づくりによいとされながら、中性脂肪を増やしてしまう食べ物や飲み物も多くあります。それらを知って避けることも大切です。

4-1. ついつい食べ過ぎてしまう間食

美味しそうなフレンチトースト
仕事や家事の合間などの休憩で口にするおやつが、中性脂肪を増やしていることもあります。甘いものがすべていけないのでははく、おやつの内容やとり方、タイミングが大切です。

間食を減らすことも大切ですが、血糖値を急激に上げないような食べ方や食べ物を選ぶことがよいでしょう。

血糖値を急激に上げないためには、食物繊維やたんぱく質を含んだものがおすすめです。空腹を満たすためのおやつとして有効なものをまとめてみました。

・ナッツ類
・チーズやヨーグルトなどの乳製品
・カカオ分70%のチョコレート
・ドライフルーツ

近年では、中性脂肪を下げるヨーグルトやお菓子が市販されているためそれらをうまく取り入れるのもおすすめです。また甘い物が食べたいときは、体内でエネルギーをよく使うランチタイムや午後の休憩時間帯にとるようにするとよいでしょう。

4-2. 果物のとりすぎは中性脂肪を増やす

たくさんの果物
ビタミン類が多く含まれ、体にいいとされている果物もとりすぎには注意が必要です。

中性脂肪が増える要因の一つが「炭水化物のとりすぎ」であることを先ほど解説しました。実は、果物に含まれる「果糖」もとりすぎることで血糖値が上昇し中性脂肪を増加させます。

果物に多く含まれる果糖も炭水化物が変化するブドウ糖も、単糖類で糖質の最小単位でこれ以上分解されない状態です。
果糖は、ほとんどが肝臓で代謝されるためインスリンを分泌することはないですが、余分なものは中性脂肪に変換されます。

肝臓で直接代謝されるというのはアルコールに近い代謝です。そのため脂肪肝の原因にもなりやすいといわれています。

ダイエットの目安となる糖質が約20gといわれていますが、バナナは1本で糖質が20g含まれているのです。運動する前などにはエネルギー源となり有効ですが、運動をしない場合にバナナをとると中性脂肪の増加につながることがあります。

もし果物を食べたいならキウイがおすすめです。キウイはバナナに比べ糖質量が少なく繊維質が多く、胃では完全に消化されず大腸まで残るため便秘改善に効果があります。

4-3. お酒の飲みすぎ

ビールとおつまみ
お酒は種類によって、中性脂肪が付きやすくなります。お酒の中でも、日本酒は糖質が高く中性脂肪になりやすいです。
その他にも、ビールや甘口のワインなども中性脂肪を増やすため控える方がよいでしょう。

もし、お酒を飲みたいのであれば糖質として吸収されない焼酎やウィスキーのハイボールなど蒸留酒を選ぶようにするといいです。

お酒にも炭水化物量や糖質量が表示されています。糖質量が10gを超えるものは避けるようにしましょう。

5. まとめ

中性脂肪は、体にとって必要なエネルギー源です。ただし、中性脂肪が増えすぎることでさまざまなリスクが高くなります。
元気で健康的な生活を送るためにも、体を動かす習慣や食生活の見直しに取り組むことが大切です。

中性脂肪を減らすには、まずは炭水化物と糖質の摂りすぎを見直した食事が大切です。また、間食のタイミングやおやつの内容にも注目するとよりよいでしょう。
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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。