胃の辺りが痛む、胃もたれの症状が継続しているにもかかわらず、検査を行なっても慢性的な胃潰瘍などの病変もないと診断されてしまうケースで悩んでいる方は、機能性ディスペプシアの可能性があります。
胃薬を飲んでも症状が緩和しない、病院を受診しても原因がよくわからないとなれば不安になります。胃の不調や吐き気を繰り返すことで、食事をするのも睡眠を取るのも怖いと感じている方も多くいるのが、機能性ディスペプシアです。
今回は、機能性ディスペプシアの原因別に対処法を解説します。
機能性ディスペプシアとは、胃痛や胃もたれなど胃の不調といわれる症状が食後に起きる疾患です。症状は人によって異なり、吐き気や胃痛など複数の症状をきたす場合もあります。
主な症状は、下記の通りです。
・食後の胃もたれ、膨満感
・少量の食事で満腹感を感じる
・胃やみぞおちの痛み(心窩部痛)
・胸やけ
機能性ディスペプシアは、胃やみぞおち辺りに不快な症状が起こるのが特徴です。上記の症状以外にも、嘔吐や吐き気、げっぷがよく出るなどの症状があります。
胃の不調などの症状が、6か月以上前に発症し、その後症状が3か月以上継続している場合に、機能性ディスペプシアと診断されます。
機能性ディスペプシアの原因は、下記の3つです。
・胃の運動機能障害
・胃の知覚過敏
・ストレス
機能性ディスペプシアは、原因によって対処法が異なります。
胃は、口から食べ物が入ってくると胃の上部にあたる部分が広がり食べ物を蓄え、消化する準備をします。食べ物が胃に到達すると、胃はぜん動運動をはじめ胃酸で消化しながら次の十二指腸へ食べ物を移動させるのが正常な胃の働きです。
しかし、機能性ディスペプシアの状態になっている胃は、食べ物が口から入ってきても胃の上部にあたる部分がうまく広がらないため、すぐに満腹感や吐き気の症状が出ます。
また、本来であれば胃酸を分泌させ食べ物を消化させながら胃はぜん動運動をし、次の十二指腸へ食べ物を運びますが、機能性ディスペプシアの状態になっている胃は、ぜん動運動が弱くなっているため胃に食べ物が残っている時間が長くなります。
胃に食べ物があることで、胃酸の分泌量も多くなり胃もたれなどの症状が出てしまうのです。
胃の運動機能障害が原因で機能性ディスペプシアの状態になっている場合には、食事や食習慣の見直し、薬物療法で対処します。
機能性ディスペプシアでは胃の動きが悪くなることで、胃の中に食べ物が長くとどまり吐き気や胃もたれなどの症状を引き起こします。胃の働きや動きを助けるには、消化の悪い食べ物を避けることもひとつの方法です。
一番消化しにくく胃にとどまりやすいのが、高脂肪食です。具体的には、下記の食べ物です。
・天ぷら
・ビーフステーキ
・フライドポテト
・ピザ
・ハンバーガー
上記の食事内容を見てお気づきかと思いますが、高脂肪食は油分が多く高カロリーといわれる食事を指します。上記で挙げた食事や食品以外でも脂肪分の多い食べ物や高カロリーのものなどは、消化するのに時間がかかる食べ物です。
高脂肪食の次に消化しづらいのが、白米やうどん、パンなどの炭水化物です。体調が悪いときの定番として思いつくものといえば「おかゆ」や「うどん」ですが、実は消化に時間がかかる食べ物なのです。
天ぷらなどの高脂肪食は、胃の滞在時間が長く消化するまでに4〜5時間かかるといわれています。一方、うどんは約3時間、おかゆは2時間胃に滞在するといわれているのです。高脂肪食に比べれば胃の滞在時間は短くなりますが、果物や野菜の胃での滞在時間が0.5〜2時間であることを考えると長いといえます。
胃の働きや消化の負担にならず、スムーズに排出されるのがタンパク質です。これは、胃液に含まれる消化酵素に、タンパク質を分解する働きがあるからです。
胃の不調による症状が強く出ている場合には、高脂肪食を避け脂身の少ない鶏肉などをとるなど、食事を工夫し、胃に負担をかけないようにしましょう。
食事内容を見直し、胃に負担をかけないように工夫しても症状が改善しない場合には、薬物療法を取り入れることがあります。
胃の動きを助け胃のぜん動運動をスムーズにし、胃の中に食べ物が長く滞在しないよう、消化管運動機能改善薬を用います。
以前から使われてきた薬としては「イトプリド」です。胃の内容物の排出を促進させる薬として有名です。
その他、医師がよく使う薬として「モサプリド」があります。イトプリドとの最大の違いは、下部消化管の動きも促進する作用があることです。つまり便秘にも一定の効果があります。
また、一番効果が期待できる薬として登場したのが「アコチアミド」です。
胃の知覚過敏により、胃が膨らんだ時に痛みや不快感を感じてしまいます。そうすると、脳から胃のぜん動運動を止める司令が出るのですが、この薬はこの司令を止める働きがあります。
機能性ディスペプシア治療薬として有効とされている漢方薬には、六君子湯(りっくんしとう)があります。
胃は食べ物を消化するために胃酸を分泌しますが、胃酸に過剰に反応してしまうことで症状が出てしまう機能性ディスペプシアがあります。
胃の中には胃酸が分泌されている状態が通常であるため、胃酸に対して鈍感なのが通常です。しかし、胃の知覚過敏状態では、分泌される胃酸に対して過剰に反応してしまうため胃痛や胃もたれという症状が現れます。
胃の知覚過敏が原因で機能性ディスペプシアになっている場合は、薬物療法を取り入れます。
胃の知覚過敏に対して行われる薬物療法の目的は、胃酸を抑えることです。そのため、胃酸の分泌を抑える酸分泌抑制薬であるアコチアミドや漢方薬が用いられます。
ただし、胃酸の分泌を完全になくすことはできないため、症状をゼロにすることはできません。薬物療法の役割としては、胃酸の刺激を過敏に受け取る感受性が強い状態を緩和するイメージです。
胃の知覚過敏において、薬物療法では完全に症状を抑えることができません。胃酸に対する過敏な神経を麻痺させる方法について多くの研究がされています。その中で、有効とされているのがカプサイシンの摂取です。
カプサイシンは、唐辛子などに含まれる辛み成分です。
胃が不調なときは避けるべき刺激物のひとつが辛いものなので、「カプサイシンが有効」と聞いてもピンとこないかもしれません。
辛み成分であるカプサイシンを大量に摂取することで、機能性ディスペプシアの症状が起こることはありますが、常にカプサイシンを摂取し続けるとしだいに機能性ディスペプシアの症状が緩和したという報告があるのです。
これは、カプサイシンの辛み成分が、痛みや刺激を感じるTRPV1という神経を麻痺させる作用があるためといわれています。痛みを感じる神経が麻痺することで、胃酸に対して痛みの症状も出にくくなるのです。
カプサイシンが有効だからといって大量に摂取するのは逆効果になるため、毎食時に唐辛子をひと振りする程度がおすすめです。もし、辛い物が苦手という方は、カプサイシンのサプリメントも有効ですので、取り入れてみてください。
機能性ディスペプシアの根本的な原因とされているのが、ストレスです。
ストレスとは、精神的や肉体的な疲れによって自律神経が乱れている状態を指します。慢性的なストレス状態は、胃の運動機能障害や胃の知覚過敏を引き起こします。
つまり、ストレスを軽減することで機能性ディスペプシアの症状も緩和、もしくは改善されるのです。
生活の中でストレスを強く感じる場面が続いている、十分な睡眠が取れていない日が続いているという場合には、自律神経の乱れから機能性ディスペプシアの症状が現れている可能性が高いです。
ストレスとなる原因が明確な場合は、ストレス解消に努めることを目指します。もし、明確なストレスの原因がわからない場合でも、精神や肉体が疲れている可能性が高いため休日にゆっくり休む、好きなことをしてリラックスするなど工夫するといいでしょう。
ストレス解消を積極的に行うことは、機能性ディスペプシアの症状改善につながるといっても過言ではありません。
6. 機能性ディスペプシアの症状が出たときの対処法
食後に突然の胃痛が起きた場合、緩和する方法を知っているだけでも安心です。
方法としては、お腹の力を抜いてリラックスした状態で、30分ほど腹部を温めると胃の痛みが緩和されます。お腹の力を抜くには、横になり深い深呼吸で息を吐きリラックスします。また、足を曲げることでお腹に力が入りにくくなるので、クッションを使って足を曲げることもおすすめです。
腹部は、湯たんぽやカイロなどを使って温めるのがいいでしょう。
日本人の10人に1人が機能性ディスペプシアという報告もありますが、特に若い世代の方に多い疾患といわれています。
機能性ディスペプシアの症状は、薬だけで改善することは難しいです。消化器内科医が処方する薬は、胃の機能を助けるものや胃酸を抑えるもので、根本的な原因を取り除くことができません。
機能性ディスペプシアの症状を改善するには、自律神経の乱れとなるストレスなどの原因を明確にし解消することが大切です。
機能性ディスペプシアの症状には、吐き気や胃痛、胃もたれなど私生活に支障をきたすものが多く困り感も強い場合が多いです。
機能性ディスペプシアの主な原因は、胃の運動機能障害や胃の知覚過敏で、根本的に解消したい原因はストレスです。ストレスは、胃の運動機能障害や胃の知覚過敏につながることを理解し対処する必要があります。
胃の不調を感じ薬の服用をしても症状が改善しない場合は、機能性ディスペプシアかもしれません。専門医を受診し胃の状態を確認することをおすすめします。
また、すでに機能性ディスペプシアだと診断されている方は、根本的な原因となるストレスを明確に解消するように努めましょう。
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この記事を書いた人
秋山 祖久医師
国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。