過敏性腸症候群の人が知っておきたい食べてはいけないものとは?医療のプロが徹底解説
昨今社会環境の変化によりストレスを抱える人が増加したことに伴い、過敏性腸症候群にかかる人が増えています。この過敏性腸症候群に罹患している人は現代社会では10人に1人とも言われ、男性女性問わず若い人からお年寄りまで幅広い層で発症が見られます。
過敏性腸症候群は国の指定難病ではありませんが、日常生活の質(QOL)を低下させる原因ともなっており、その症状に悩む人にはつらい病気ともいえるものです。
しかしながら、過敏性腸症候群の人は食生活をはじめとした生活習慣を見直すことで、症状をやわらげることが可能となります。
今回は、過敏性腸症候群の症状や原因、過敏性腸症候群の人が食べてはいけないものについて詳しく説明していきます。
過敏性腸症候群(IBS=Irritable Bowel Syndrome)とは、特に腸部分に炎症や腫瘍、潰瘍がないにもかかわらず、はげしい下痢や便秘、腹痛、膨満感などが慢性的に続く症状のものを言います。下痢や便秘を交互に繰り返す性質があり、排便すると症状が軽くなる傾向にあります。
過敏性腸症候群は20~40代に多く、男性よりも女性の方が多い病気です。
過敏性腸症候群自体は生命に直接かかわるような病気ではないものの、それにより通勤・通学など移動中にトイレに行きたくなったり、緊張でお腹が痛くなったりするなど、日々の生活に多大な影響を及ぼすことが特徴として挙げられます。
過敏性腸症候群の症状としては次のようなものが見られます。当てはまる数が多いからといって必ずしも過敏性腸症候群であるとは言い切れませんが、その可能性が高いことは確かです。症状が1か月以上続くようであれば一度病院できちんと診断してもらうのが良いでしょう。
・日常的に下痢と便秘が交互に訪れる
・突発的に腹痛や下痢になることがある
・排便すると症状がやわらぐ
・便秘が1週間以上続く
・排便タイミングが不規則になりやすい
・ストレスのある場面で腹痛や下痢になりやすい
・お腹が張りやすい
・残便感がある
・おならが出やすい
過敏性腸症候群には4つのタイプがあります。まずは自分がどのタイプに当てはまるかを知っておきましょう。
下痢型は、激しい腹痛を伴い水のような下痢が1日に数回起きるタイプのものを言います。ひどい場合には1日に3~10回程度下痢が生じる場合があります。突然発生することが多いため、通勤・通学中や仕事中、乗り物に乗っている時に腹痛の波が訪れます。この下痢型は、比較的男性に多い症状です。
便秘型は、下痢型と違い便がなかなか出ないタイプのものを言います。腸の蠕動運動が減り排便が促されなくなることで便秘になります。腹痛やお腹の張りが生じるなどはありますが、下痢型ほどのつらさはないようです。
なお排便時には固いコロコロ便が出ることが多く、残便感もありスッキリしないことが多いのが特徴で、強くいきんだ際に切れ痔になることもあります。この便秘型は、女性に多く見られる症状とされています。
混合型は、腹痛を伴い下痢と便秘が繰り返し起こるタイプのものです。均等に下痢と便秘が訪れるというよりはどちらかに偏りがある感じで症状が起こります。
ガス型は、下痢型・便秘型・混合型に分類できないタイプのもので、おならがよく出る、膨満感があるといった症状がみられます。
過敏性腸症候群の原因は今のところ明確には解明されていません。ただし、腸内細菌や睡眠不足、ストレスなどで自律神経に異常をきたし、腸の蠕動運動が正常に行われなくなるなどの理由があるとも言われています。
過敏性腸症候群の人は、症状を軽減するための対処法として、次のような食事を控えることが有効的とされています。ただし、ここで紹介する食事の内容は、絶対に食べてはいけないというものではなく、過剰に摂取さえしなければ食べても良いとされています。食事内容が気になるようであれば、かかりつけの専門医などを受診して食事相談をしてみると良いでしょう。
カフェインの摂りすぎは、過敏性腸症候群にはあまり良くありません。コーヒーやチョコレート、コーラなどに含まれるカフェインは、大腸のS状結腸の運動を刺激して症状を悪化させる危険がありますので注意しましょう。
過度なアルコール摂取も過敏性腸症候群の症状を悪化させるものです。たしなむ程度の飲酒(ビール240ml以下またはワイン120ml以下)であれば良いですが、それ以上の飲酒は下痢の症状を悪化させるという報告もあるようです。
脂質は調理用の油や肉類に多く含まれます。脂質の摂取により体内で分解されて生成された脂肪酸は腸を刺激するため、食後に下痢になりやすくなります。特に、唐揚げなどの揚げ物類や、ソーセージやベーコンといった加工肉の食べ過ぎは過敏性腸症候群を誘発しやすいため、摂り過ぎに注意しましょう。
唐辛子に含まれるカプサイシンは消化管の運動を促進させてしまいます。その結果、下痢や腹痛になりやすいため、摂取を控えましょう。
食物繊維は便通に良いといわれる食べ物の代表格ではありますが、過敏性腸症候群の人の場合、ごぼうやブロッコリー、ナッツ、大豆などの不溶性食物繊維の摂取をしすぎると腹痛や下痢になりやすいと言われています。
食物繊維を摂る際には不溶性食物繊維ではなく、水溶性食物繊維を豊富に含むキャベツやダイコン、昆布、わかめ、こんにゃくなどを多く食べるようにしましょう。
FODMAPとはF:Fermentable(発酵性の)、O:Oligosaccharides(オリゴ糖)、D:Disaccharides(二糖類)、M:Monosaccharides(単糖類)、A:And、P:Polyols(ポリオール)の頭文字を取った言葉で、特定の糖類をまとめた総称です。
- オリゴ糖が含まれた食品・・・豆類、玉ねぎ、にんにく、ごぼう、納豆など
- 二糖類が含まれた食品・・・牛乳、ヨーグルト、アイスクリームなど
- 単糖類が含まれた食品・・・はちみつ、りんご、もも、すいかなど
- ポリオールが含まれた食品・・・キノコ類、さつまいも、人工甘味料(キシリトールなど)
FODMAPが含まれた食品を摂取した場合、小腸では分解・吸収されにくいことや大腸では腸内細菌の働きにより水素ガスやメタンガスが発生します。その結果おならが出やすくなったり、膨満感、お腹が張るなどの過敏性腸症候群の症状が出やすくなります。
そのため、上記の高FODMAP食を控えることで、過敏性腸症候群の症状を軽減させる
「低FODMAP食」による食事療法が有効とされています。欧米では低FODMAP食の食事療法で過敏性腸症候群の症状が7割程度も改善したという報告もあり、科学的根拠の高い食事療法としても注目されています。
以上、過敏性腸症候群の症状や原因、過敏性腸症候群の人が食べてはいけないものについて紹介してきました。
過敏性腸症候群は原因が特定できていない病気のため、過敏性腸症候群と診断された場合には、その後も付き合っていかなければならない難しい病気のひとつです。いつ起こるかわからない便意により生活に支障をきたしている人も多くいます。
しかし、適切な治療や食事療法を心掛けることで症状をやわらげ、日常生活を問題なく過ごせるように改善したいものです。そのためにも、まずは過敏性腸症候群の疑いのある人は、医療機関にて正確な診断を受けるようにしましょう。
そしてもし過敏性腸症候群と診断された場合には、薬物療法や食事療法を取り入れたり生活習慣の改善を試み、これ以上悪化することのないように努めましょう。
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この記事を書いた人
秋山 祖久医師
国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。