内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

大腸内視鏡検査の腸管洗浄液と検査前の食事について

みなさんは、大腸内視鏡検査を行ったことがありますか。
大腸内視鏡検査の前には、大腸の中をきれいにするため、腸管洗浄液を飲みます。
実は、腸管洗浄液には、様々な種類があります。
また、大腸をきれいにするためには、腸管洗浄液だけではなく、前日もしくは前々日の食事も非常に重要です。

今回は、
1.どの様な腸管洗浄液があるのか
2.大腸内視鏡検査の前の食事はどのようなものを摂取すればよいのか
紹介していきます。

まずは
1.どの様な洗浄液があるのか
を紹介します。
紹介する腸管洗浄液
➀モビプレップ
②ニフレック
③マグコロールP
④ピコプレップ
⑤サルプレップ
⑥ビジクリア

➀モビプレップ(PEG製剤:EAファーマ)

数ある腸管洗浄剤のなかで最も使用頻度が高い下剤です。腸内洗浄に必要な時間が少ないのが利点です。体内の水分を利用して腸内容積を増大させるため、ニフレックより服用量が少なくて済みます。ただし、体内の水分を利用することで脱水が起こりやすくなるので、モビプレップの服用量の半分の水分を摂取することが必要です(モビプレップ1.5L+水分750ml)。
味は、美味しいとは言えませんが、私は難なく飲むことができました(当院では採用しておりません)。

②ニフレック(PEG製剤:EAファーマ)、ムーベン、オーペグ

モビプレップが登場するまで市場占有率が最も高かった腸管洗浄剤です。等張液のニフレック(オーペグとムーベンを含む)は、高張液のモビプレップのように体内の水分は利用せずに、大量の服用量(2L)で腸内を洗い流すイメージです(服用した洗浄液は、体内で吸収されずそのまま便として排出されます)。
体内の水分を使用しないため脱水のリスクは軽減されます。
2L服用しなければいけないので、服用量に対する苦痛があります。

③マグコロールP(クエン酸マグネシウム製剤:堀井薬品工業)

主成分であるクエン酸マグネシウムの酸味がスポーツドリンクに似ているため、現在の主流となっているモビプレップ、ニフレックに比べて飲みやすいのが最大のメリットです。
マグコロールPの服用方法は、製剤のパックに水を入れて1800mlにしてから、コップに移し1杯(約200ml)あたり約10分のペースで約90分かけて全部を飲み切ります。
ただし腸管を洗い流す力という点ではモビプレップ、ニフレックに若干劣ります。
当院では、マグコロールPを主の腸管洗浄液として用いています。1400ml~1500mlを服用していただくことが多いです。便秘気味の方は、1週間程度前から便秘薬を併用していただいています。

④ピコプレップ(ピコスルファート/ クエン酸マグネシウム配合剤:日本ケミファ)

飲みやすさに優れたピコプレップ
ピコプレップの最大の長所は服用量の少なさ(150ml×2回)と飲みやすさです。
検査の前日の夜と当日の2回に分けて計300mlを服用します。前日はピコプレップを150mlの後、透明な飲み物(水以外:スポーツドリンクやソフトドリンクなど)を2~3時間かけて1250ml以上飲む必要があります。
他の腸管洗浄剤に比べて洗浄力がやや弱いことと、検査前日の夜にも服用するため睡眠時間帯に便意がやってくるのも難点です。
過去に大腸内視鏡の前処置で苦しい体験をした患者さんなどで使用しています。
当院でも採用しています。マグコロールの苦手な方やビジクリアが飲めない方などで使用しています。

⑤サルプレップ(富士製薬工業)

3種類の硫酸塩を成分としています。
服用時に製剤をパックに移し替えたり、溶かしたりする必要はなく、ボトルからそのままコップに入れて飲むだけです。
ボトル1本(480ml)を30分ほどかけて、服用量の2倍の量の水分(約1L)と交互に飲んでいきます。最大でボトル2本(960ml)まで服用可能。苦みが残るレモン味。洗浄力が強いので、便秘気味の人にも向いています。
サルプレップの服用方法は、検査当日の1日投与、検査前日当日の分割投与の2タイプがあります。
当院では採用しておりません。

⑥ビジクリア(リン酸ナトリウム製剤:ゼリア新薬工業)

腸管洗浄剤で唯一の錠剤です。ビジクリアは5錠を200mlの水分で15分かけて服用します。これを10回繰り返して計50錠を飲み切る必要があります。1錠のサイズが大きいうえ、強めの塩味という飲みにくさがあります。
「液体の腸管洗浄液は吐き気があったり、実際吐いたり、した方で、錠剤なら飲むことができるかも」という患者さんに対して使用します。

以上が腸管洗浄液の種類です。
自分に合った洗浄液を選択できるよう医師に相談しましょう。

次に
2.大腸内視鏡検査の前の食事はどのようなものを摂取すればよいのか
を紹介します。
大腸内視鏡検査の前は、通常は前日の食事を制限します。
しかし、便秘の方は前々日から食事制限を行った方がよいでしょう。

摂取してもよいものは

麺類 うどん、そうめん、冷や麦、米粉めん、ビーフン、フォー
ご飯類 白米、おかゆ、もち(よもぎ、豆が入っていないもの)
パン類 食パン(ドライフルーツ、クルミなどが入っていないもの)、ロールパン、フランスパン 米粉パン、蒸しパン
魚介類 タイ、ヒラメ、カレイ、タラ、鮭などの脂肪の少ない白身魚、はんぺん、ちくわ、かまぼこ、魚肉ソーセージ
肉類 鶏ささみ、鶏むね(皮を除く)、鶏もも(皮を除く)
豚ヒレ肉、豚もも肉、牛ヒレ肉、牛もも肉、牛肩肉などの脂肪の少ない赤身肉、モモハム
その他 卵、豆腐、卵豆腐、高野豆腐、湯葉、豆乳、お麩、じゃがいも、長いも、完熟したバナナ

などです。


摂取しない方が良いものは
麺類 そば、ラーメン、パスタ(スパゲティ、ペンネ、ラザニア)、緑豆春雨、中華めん
ご飯類 胚芽米、発芽玄米、雑穀米(黒米、赤米、キビ、ヒエ、ハト麦、大麦など)
パン類 全粒粉、胚芽、ふすま(ブラン)、ライ麦のパン、あんパン、ジャムパン、揚げパン、ピザ、クロワッサン、デニッシュパン、バーガー
魚介類 サバ、アジ、サンマ、イワシ、ブリ、ウナギなどの脂肪の多い青魚、マグロのトロ、干物、貝類、タコ、イカ、エビ、カニなど、魚卵
肉類 鶏手羽肉、鶏皮、豚バラ肉、牛バラ、ロース、サーロイン肉、ベーコン、ソーセージ、ホルモン
その他 食物繊維の多い野菜、種のある果物類、ネギなどの薬味類、キノコ全般、漬物、乾物、納豆などの豆類、海藻類、コンニャク、ふりかけ、ジャム、胡麻、ナッツ類、野菜ジュース、果肉入りジュース、青汁、牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品、おから、コーンフレーク、ポテトチップス ケーキ

などです。

大腸内視鏡検査の前の食事は非常に重要です。
検査の際に腸をきれいにしておくことで、検査をスムーズに行うことができ、ポリープ切除などの治療も迅速に行うことができます。
腸がきれいになっていない方で多くみられるものは、
野菜
種のある果物
海藻
キノコ
などです。
これらを前日もしくは前々日に摂取すると、大腸内視鏡検査に影響がでます。
摂取しないよう心掛けてください。

また、大腸内視鏡検査前の食事を考えることが難しい。
と思われる方は、是非
大腸検査食を購入してください。
3食分が2000円以下で購入できます。
おすすめです。
大腸内視鏡検査の腸管洗浄液と検査前の食事について紹介しました。
参考になれば幸いです。
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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。