内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

腸内細菌の多様性とは?多様性の高め方とメリットを解説

「腸活」という言葉が定着し、年代や性別問わず多くの方が腸活に取り組んでいます。腸活とは適切な食事や運動により、腸内環境を改善したり、維持したりする活動のことをいいます。腸内環境を整える方法はさまざまですが、どの方法にも共通する目的は腸内細菌の多様性を高めることです。

では、腸内細菌の多様性とは何かご存じですか?「腸内細菌」や「多様性」という言葉はよく耳にするかもしれませんが、腸内細菌の多様性といっても、どういったことかイメージがつきにくいかもしれません。

今回は腸内細菌の多様性とはどういったことか、また多様性を高める方法とメリットについて解説します。

1. 腸内細菌の多様性とは?

腸内環境
腸内細菌の多様性とは、腸内でさまざまな種類の腸内細菌がお互いに助け合いながら、共存して生きているという意味です。人間の腸内には多種多様な菌が生息しており、それらの菌の割合が、腸内環境を左右しています。

一般的に腸内細菌の多様性は、年齢とともに低くなってくるといわれており、その他にも食生活やストレス、不規則な生活、便秘など、さまざまな要因によって影響を受けます。また、腸内環境の多様性は、大腸がんや潰瘍性大腸炎、糖尿病、動脈硬化、その他がんなどの疾病と密接な関係があるといわれているのです。

実際に、大腸がんや潰瘍性大腸炎の方は、腸内細菌の多様性が低下する傾向にあることが明らかになっています。つまり、腸内細菌の多様性は、個人それぞれの腸内環境の特徴を表すものといえるでしょう。

2. 腸内細菌の種類

善玉菌
人の腸内には、約1,000種類、100兆個の細菌が生息しているといわれ、これらを腸内フローラといいます。腸内フローラは人によって構成が異なり、菌の数は年齢によって増減します。腸内細菌には、それぞれ得意とする分野があり、腸内でさまざまな働きを担っており、その働きによって大きく3つに分けられます。

2-1. 善玉菌

善玉菌とは、体によい働きをする菌です。善玉菌は腸内を弱酸性に保ち、悪玉菌が増えすぎないように抑制し、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)を促進することで、腸を整える役割があります。その他にも、食中毒菌や病原菌などによる感染症の予防や、発がん性がある腐敗物質の産出を抑制します。

代表的な善玉菌は、ビフィズス菌や乳酸菌、酪酸菌などです。

2-2. 悪玉菌

悪玉菌とは、善玉菌の反対で体に悪い影響を与える菌です。悪玉菌は腸内で有害物質を生成して、腸内環境をアルカリ性へと傾け、下痢や便秘を引き起こします。脂質や動物性たんぱく質を好むため、これらを多く摂取する食生活を続けていると、腸内に悪玉菌が増殖すると考えられます。

代表的な悪玉菌は、ウェルシュ菌やディフィシル菌です。

2-3. 日和見菌(ひよりみきん)

日和見菌とは、善玉菌にも悪玉菌にも属さない中間にある菌です。日和見菌は、腸内で優勢にある菌と同じように働くといった特徴があります。腸内でもっとも数が多いとされているのが日和見菌であるため、善玉菌が優勢な環境であれば、日和見菌も善玉菌と同じ働きを行い、腸内環境が整うのです。

3. 腸内細菌の多様性を高めるメリット

体重計に乗る人
腸内細菌の多様性を高めることで得られるメリットは、健康を維持できることです。腸内細菌の多様性とは、お互いの得意分野を活かしながら共存することであるため、当然、善玉菌が優勢にあるほうが、健康な状態といえます。

3-1. 健康を維持する

糖尿病などの生活習慣病やがん、花粉症などのアレルギー疾患がある方は、腸内細菌の多様性が低下している傾向があります。多様性を高めることで善玉菌が優勢になると、それぞれの菌の相互作用によって健康をサポートし、維持が期待できるのです。

また、善玉菌にはさまざまなビタミンを作り出す働きがあり、特にビタミンB1、B2、B6、B12、ビタミンK、葉酸などを産生します。これらのビタミンが体内に十分にあると、成長障害や皮膚炎などの症状を予防できます。

3-2. 脂肪の蓄積を抑制する

腸内細菌の多様性を高めることによって善玉菌が優勢になると、脂肪の蓄積を抑制する効果が期待できます。善玉菌の代表でもあるビフィズス菌や酪酸菌などが腸内で作り出す「短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)」が、いま注目されています。

短鎖脂肪酸とは、ビフィズス菌や酪酸菌などの善玉菌が、オリゴ糖や食物繊維をエサとして食べると産出される代謝産物です。代表的な短鎖脂肪酸は、酪酸や酢酸、プロピオン酸です。

その中でも特に酢酸は、余分な脂肪を蓄えている「白色脂肪細胞」に作用するので、脂肪の蓄積を抑制するのに効果的です。白色脂肪細胞には、血液によって運ばれてきた酢酸を感知して、脂肪細胞に必要以上のエネルギーが蓄積されるのをブロックする働きがあります。

その他にも大腸の蠕動運動を刺激する作用、免疫力を上げる作用、炎症を抑える作用が期待できます。

また、交感神経は、血中にある酪酸を感知すると心拍数や体温を上げるので、エネルギーの消費をサポートする働きがあるのです。

4. 腸内細菌の多様性を高める方法

サプリメント
腸内細菌の多様性を高める方法はいくつかありますが、一時的に高めたとしても時間の経過とともに元に戻ってしまうため、継続することが大切です。

善玉菌と悪玉菌、日和見菌の理想的な比率は2:1:7とされており、このバランスが大きく崩れると、腸内細菌の多様性が低下してしまいます。腸内細菌の多様性の低下とは、腸内細菌の種類が少なくなり、悪玉菌が優勢となって、日和見菌が悪玉菌と同じ役割を担うことを意味します。こうした状態にならないように、腸内細菌の多様性を高めることが大切です。

日常生活の中で、継続しやすい方法を取り入れていきましょう。

4-1. ビタミンDを摂取する

ビタミンDといえば、骨を強くするための栄養素というイメージが強いかもしれませんが、さまざまな病気から体を守ってくれる役割があります。実のところビタミンDは、腸内細菌と相性が良い栄養素といわれており、腸内細菌の多様性と相関関係にあると考えられているのです。

血中の活性型ビタミンD値が高い方は、腸内細菌の多様性が高いことがわかっています。また、血中の活性型ビタミンD値が常に高い状態を維持している場合、腸内細菌の多様性が高くなるだけではなく、「スーパー善玉菌」といわれている酪酸菌が特に優位に増えるといわれています。

ビタミンDは、きのこ類や魚介類、卵、チーズなどに多く含まれているため、これらの食品を積極的に取り入れましょう。毎日の食事から摂取するのが難しい場合は、サプリメントを上手に活用してください。

しかし、ビタミンDは脂溶性ビタミンなので、過剰摂取には注意が必要です。ビタミンDの過剰摂取は、高カルシウム血症を引き起こし、腎機能障害や食欲不振、嘔吐、神経の興奮などの症状が出るリスクがあります。

サプリメントを取り入れる場合は、目安となる量を守ることが大切です。

4-2. 善玉菌と食物繊維・オリゴ糖を摂取する

腸内細菌の多様性を高めるためには、善玉菌を積極的に取り入れましょう。ビフィズス菌や乳酸菌が含まれているヨーグルトや乳酸菌飲料、漬物、納豆などがおすすめです。しかし、善玉菌を一度に摂取しても定住することはないため、毎日継続して摂取しましょう。

また、善玉菌だけではなく、そのエサとなる食物繊維やオリゴ糖を一緒に取り入れることが大切です。食物繊維やオリゴ糖も毎日摂取することがおすすめですが、食事から十分に取り入れられない場合は、特定保健用食品として販売されているオリゴ糖を利用するのもよいでしょう。

5. まとめ

腸活
腸内環境の多様性を高めることは、さまざまな病気から体を守り、また脂肪の蓄積を抑制するのに効果的です。善玉菌でもある酪酸菌は「スーパー善玉菌」と呼ばれているほど、注目を集めています。

腸内細菌の多様性を高めるためには、日常的にビタミンDをサプリメントで摂取したり、善玉菌やそのエサとなる食物繊維やオリゴ糖を継続して取り入れたり、日々の積み重ねが大切です。

100歳以上の長寿の方は、腸内に酪酸菌が多く住み着いているというデータもあります。腸内環境を整える「腸活」は、私たちの健康維持と生活習慣の原因となる肥満予防のためにも、世代や性別問わず、おすすめです。

腸活や日々の食生活で生活習慣に気をつけていても、便秘や下痢を繰り返していたり、お腹の調子が優れない方は、早めに医療機関を受診しましょう。大腸の病気でもっとも怖い大腸がんは、初期では自覚症状がないため、早期発見が大切です。定期的に大腸カメラ検査を受けて、お腹の健康を保ちましょう。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。