内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

腸活して高血圧、糖尿病、高脂血症を予防しましょう。
近年、日本人の生活習慣病が激増しています。
生活習慣病とは、食事、運動、飲酒、喫煙などの生活習慣が、発症原因に深く関わっている疾患の総称です。

それでは皆さんは、生活習慣病と言えば、何を思い浮かべますか?
有名なのは、高血圧、糖尿病、高脂血症ではないかと思います。

高血圧、糖尿病、高脂血症・・・健康診断で指摘された方も多いのではないでしょうか?

実はこれらの生活習慣病は、整腸剤を毎日継続して飲むことで予防ができると言われています。
整腸剤とは一般的に、お腹の調子を整えるために飲むものです。整腸剤を飲むことで、下痢や便秘などの便通を良くしたり、腹痛やお腹の張りなどの腹部症状を改善する効果が期待できます。
整腸剤はこのようなお腹の調子を整えるだけでなく、免疫力を上げたり、生活習慣病などの病気まで予防できることが最近になり分かってきたのです。

それでは、整腸剤を飲むとどのようなメカニズムで高血圧、糖尿病、高脂血症が予防できるのかを解説していきたいと思います。

整腸剤で高血圧を予防するメカニズムについて

まずは整腸剤で高血圧を予防するメカニズムについて解説します。
ここで鍵となるのは「短鎖脂肪酸」になります。

短鎖脂肪酸は、腸内細菌の善玉菌が、食物繊維やオリゴ糖を代謝して作られる物質であり、代表的なものが酪酸、酢酸、プロピオン酸です。

この短鎖脂肪酸の主な働きと言えば、腸管に働きかけ、腸のぜん動運動のエネルギーになったり、腸管内を酸性に保ち、悪玉菌を住みにくくすることです。
これらの働きにより、腸内環境が良くなり、下痢や便秘などを改善することができます。
いわゆる「整腸作用」と呼ばれるものです。

それとは別に、「短鎖脂肪酸」は、実は腸から吸収されて血流に乗って全身を巡ることができます。

そして血中の短鎖脂肪酸の濃度がある一定の濃度になると、様々な臓器の細胞の表面に存在する「短鎖脂肪酸受容体」に働きかけるようになります。

血中の短鎖脂肪酸が、血管の細胞の表面にある「短鎖脂肪酸受容体」と結合し、レニン-アンギオテンシン系に働きかけ、血圧を下げてくれると言われています。
また、短鎖脂肪酸は、血管の柔軟性を良くする作用もあると言われ、動脈硬化を防いでくれる可能性も示唆されています。

ただしこれは、血中の短鎖脂肪酸を一定の濃度に保たないといけませんので、整腸剤を飲んで善玉菌を増やし、常に腸内環境を良くしておく必要があります。

以上が整腸剤で高血圧を予防するメカニズムになります。

整腸剤で糖尿病を予防するメカニズムについて

次に、整腸剤で糖尿病を予防するメカニズムについてです。

そもそも、腸内環境が悪くなると血糖値が上がりやすくなると言われていますが、そのメカニズムとしては、

A.腸内環境が悪くなると善玉菌が減って悪玉菌が増える。
B.悪玉菌が増えると、腸の免疫バリア機能が落ちる。
C.腸の免疫バリア機能を様々な悪い物質がすり抜け、血中に入り、全身を巡る。
D.これらの悪い物質が、肝臓や筋肉、脂肪でのインスリンの効き目を悪くする。
E.インスリンの効き目が悪くなり、血糖値が上がってしまう。

腸内環境の悪化により、このようなメカニズムで血糖値が上がってしまいます。

それでは、A〜Eを防ぐにはどうしたら良いのでしょうか?

その鍵となるのが、「食物繊維」と「短鎖脂肪酸」です。

まずは「食物繊維」を摂取することで、善玉菌のエサとなり、善玉菌が増えてきます。善玉菌が増えることによって悪玉菌が減り、腸内環境が良くなります。
これによりA〜Eの負の連鎖を断ち切ることができるのです。

また、食物繊維は腹持ちが良く、食欲を抑制する作用もありますので、過剰な糖質を摂取することを防ぐことができると言われています。

次に「短鎖脂肪酸」の効果についてです。
ここでも登場の「短鎖脂肪酸」ですが、まずはこの「短鎖脂肪酸」が腸の免疫バリア機能を高めてくれます。
ちなみに、短鎖脂肪酸の中で特にこの免疫バリア機能を高めてくれるのが「酪酸」です。
「酪酸」を作るのは、最近にわかに注目されている「酪酸菌」です。
この酪酸菌を増やすのに一番良いのが食物繊維豊富な「玄米」と言われています。
また、海藻類も酪酸菌を増やすのに効率的と言われています。

もう一つの「短鎖脂肪酸」の効果ですが、血中の「短鎖脂肪酸」が、膵臓の細胞に存在する「短鎖脂肪酸受容体」と結合することにより、インスリンの分泌が促され、血糖値の上昇を抑えてくれる効果があります。

以上が整腸剤で糖尿病を予防するメカニズムになります。
ここでも善玉菌が産生する短鎖脂肪酸が重要となってきますので、整腸剤を飲んで善玉菌を増やし、常に腸内環境を良くしておく必要があります。

整腸剤で高脂血症を予防するメカニズムについて

最後に、整腸剤で高脂血症を予防するメカニズムについてです。

以下のようなメカニズムでコレステロールが下がると言われています。

胆のうから分泌された胆汁は肝臓から十二指腸にじわじわと滲み出ています。この胆汁は、脂肪を分解する役割があるのですが、胆汁の主成分が胆汁酸であり、コレステロールから作られます。この胆汁ですが、ほとんどが小腸で再吸収されて肝臓に戻されます。ところが、水溶性食物繊維をたくさん食べていると、水溶性食物繊維と胆汁がくっついてそのまま体外へ出てしまいます。

→胆汁が体外に排出されることで、胆汁を肝臓で沢山作る必要が出てきます。このため、肝臓でコレステロールを原料とした胆汁酸が作られるため、コレステロールが下がっていきます。

腸内細菌が食物繊維を分解する過程で発生する短鎖脂肪酸は、肝臓でのコレステロール合成酵素の働きを阻害する作用があります。
これにより、血中コレステロール値が下がってきます。

乳酸菌が、食事由来のコレステロールを吸着して、そのまま便と一緒に排出されます。

以上が整腸剤で高脂血症を予防するメカニズムになります。

いかがだったでしょうか。
まとめると、高血圧も、糖尿病も、高脂血症も、予防の鍵となるのが「短鎖脂肪酸」になりますね。

短鎖脂肪酸は善玉菌からしか作られません。
このため、しっかりと整腸剤を毎日飲みましょう。整腸剤を毎日飲むことで、腸内の善玉菌が増えてきます。
生活習慣病の予防は、便通改善のように、自覚症状としては感じにくいため、いつの間にか整腸剤をやめてしまう方が多いです。
「整腸剤を飲んでいるけど、効果があるのかいまいち分からない」
と思っている方も多いかもしれませんが、整腸剤を毎日飲むことは、将来の自分への投資です。コツコツと続けていきましょう。

そして合わせて腸活も毎日行うと完璧です。善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖をきちんと摂取して、もともと自分が持っている善玉菌を増やしてあげましょう。

整腸剤などを飲み、善玉菌を直接摂ることを「プロバイオティクス」と呼びます。
食物繊維やオリゴ糖を摂理、善玉菌を育てることを「プレバイオティクス」と呼びます。
プロバイオティクスとプレバイオティクスをどちらも行うことを「シンバイオティクス」と呼び、これが腸活の基本です。

整腸剤を毎日飲み、腸活も行い、善玉菌を増やして、短鎖脂肪酸も増やして、生活習慣病を予防しましょう。
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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。