内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

大腸カメラ検査、カプセル内視鏡検査、大腸CT検査の比較について

現在、日本人の大腸がんは増え続けています。
2018年の部位別がん死亡率では、大腸がんは男性では第3位、女性では第1位です。2025年には、男女ともに部位別がん死亡率で大腸がんが1位になるのではないかと予想されています。
それでは、大腸がんを早期発見するためにはどのような検査があるのでしょうか?

まず初めに「便潜血検査」が頭に思い浮かぶと思います。
「便潜血検査」とは、主に健康診断で行われる検査です。大腸がんのスクリーニング検査として有名な検査です。
専用の容器に便を少しつけて提出することにより、便の中に血液が混ざっていないかどうかを調べます。
食道や胃などの上部消化管で出血をした場合、胃液により血液が黒く変性します。これは、便潜血検査では陽性になりません。つまり、便潜血検査は、大腸内で出血するような病気を調べる検査です。

「便潜血検査」とは大腸がんのスクリーニング検査としてよく用いられますが、ここでは画像検査に絞って解説をしていきたいと思います。

大腸がんの画像検査としては、「大腸カメラ検査」「大腸カプセル内視鏡検査」「大腸CT検査」があります。
それぞれの検査について解説していきたいと思います。

大腸カメラ検査

正式名称は「下部消化管内視鏡検査」です。直径約1.3cm、長さ約130cmのファイバースコープを肛門から挿入し、盲腸から直腸までを観察する検査です。
大腸の長さは150~160cmほどあり、この大腸をアコーディオンのように縮めて80cmくらいにして大腸の奥である盲腸まで挿入します。

この検査の絶対条件として、腸の中をきれいにすることが必要です。検査の前日に下剤を服用し、検査当日の朝から腸管洗浄剤を1.5~2L飲みます。服用後約2時間ほどで4~5回排便があり、腸の中が空っぽになった状態で検査を行います。
検査室のベッドで左側を下にして横向きになり、膝を90度に曲げて検査開始です。
内視鏡の先端に局所麻酔のゼリーを塗布して肛門から挿入します。大腸の一番奥である盲腸まで内視鏡を進め、内視鏡を引き抜きながら大腸内を詳細に観察します。

観察の際には、内視鏡から炭酸ガスを入れて腸管を十分に広げ、大腸のひだの裏まで観察します。微細な病変を発見した場合、拡大内視鏡やNBI(狭帯域光観察)を行います。
拡大内視鏡は、ボタン1つで簡単に100倍までの病変のズームが可能となっています。
また、NBIという特殊光を用いることで、小さな病変も見逃さずに観察することが可能です。
このように、大腸の内部を鮮明に観察することができるため、大腸の炎症所見や大腸ポリープ、大腸癌などの腫瘍性病変を詳細に観察することができ、さらに生検や切除などの精密検査を行うことが可能です。

大腸カメラ検査は保険適用の検査であり、費用は3割負担で
観察のみの場合、8,000円前後
観察+生検の場合、9,000円〜15,000円前後
日帰りポリープ切除の場合、20,000円〜30,000円前後
となります。

大腸カプセル内視鏡検査

大腸カプセル内視鏡検査とは、カプセル型の形状をした内視鏡を用いた検査であり、長径約3cm、直径約1cmほどの大きさです。このカプセル型の内視鏡を水で飲み込みます。

カプセル内には小型カメラが内蔵されており、1秒間に2枚~35枚のスピードで写真を撮りながら、大腸内を進みます。検査時間は個人差がありますが、平均5~6時間で終了します。
検査終了後、カプセル内視鏡は、1~2日後に便と一緒に排出されます。

腸内で撮影された画像は、患者様の体幹に貼り付けたセンサーを経由して腰に装着した装置に転送され、後日医師により画像を読影します。
読影の結果、治療が必要な大腸ポリープや大腸がんなどの病変が発見された場合、後日大腸カメラ検査が必要となります。

従来の大腸カメラと同様に、前処置が必要ではありますが、検査自体はカプセルを飲み込むだけであり、検査中は外出ができたり、デスクワークができたりとそこまで大きな制限はありません。

2014年1月から「大腸カプセル内視鏡」が保険適用となりました。費用としては、3割負担で3万円〜3万5,000円と比較的高額な検査となっています。

「大腸カプセル内視鏡」の保険適用についてですが

①以前大腸カメラを受けたことがあるが、大腸の奥である盲腸まで到達できなかった方
②腹部手術歴や大腸過長で大腸カメラ挿入が困難と予想される方
③コントロール不良の便秘、高血圧、慢性閉塞性肺疾患、慢性心不全の方で大腸カメラ挿入が困難と予想される方

以上が適用となります。

ちなみに、ペースメーカーを埋め込んでいる方は検査ができません。

このように、保険適用は限定的であり、上記に当てはまらない方は自費診療でしか検査できないです。
自費診療の場合、病院によりますが、1回のカプセル内視鏡検査で10万〜12万円もの費用がかかりますのでかなり高額な検査になります。

大腸CT検査

CT検査により得られた画像情報を元に、大腸カメラ検査に類似した画像を三次元で作り出し、大腸内を観察する検査です。内視鏡を使用せずに、大腸ポリープや大腸がんなどの病変を発見することが可能です。しかも、大腸カメラ検査では見落としやすいひだの裏の病変の観察も優れています。しかしながら、平坦な病変や、5mm以下のポリープは描出が難しいため注意が必要です。

検査前に、腸の中をきれいにするために、大腸カメラ検査と同様に、約2Lの腸管洗浄剤を飲む必要があります。最近は撮影画像技術の発達により、従来の半分以下の腸管洗浄剤でも検査が可能となりました。

前処置が終了後、肛門から炭酸ガスを注入し、大腸をパンパンに膨らませた状態で撮影を行います。
検査時間は10分から15分程度で終了します。検査中に苦痛を伴うことはありませんが、お腹にガスを注入しますので、お腹の張りを感じることがあります。
欠点としては、大腸CT検査も大腸カプセル内視鏡検査と同様に、治療が必要な病変が発見された場合、後日大腸カメラ検査を行う必要があります。

大腸CT検査の保険適用についてですが、
「他の検査で大腸悪性腫瘍が疑われる患者に対して、大腸CT撮影を行なった場合」
のみが適用となります。
つまり、健康診断などで、便潜血陽性であったり、腫瘍マーカーが上昇しているなどの結果があれば保険適用となります。

費用ですが、保険適用の場合、3割負担で約6,000円程度となります。保険外適用の場合、20,000円〜30,000円程度です。


以下が大腸カメラ検査、大腸カプセル内視鏡検査、大腸CT検査の比較表です。参考にされてください。
大腸カメラ検査、大腸カプセル内視鏡検査、大腸CT検査の比較表
以上より、
カプセル内視鏡検査や大腸CT検査は大腸カメラ検査の代わりの検査ではありません。
過去に大腸カメラ検査を行って検査ができなかった方、健康診断で精密検査を指示されたが、大腸カメラ検査を希望しない方などを対象とした検査となります。
ただし、どちらの検査も生検やポリープ切除などの処置はできませんので、異常疾患が発見された場合は再度大腸カメラ検査を受ける必要があります。

以上のことを踏まえ、納得した上で検査を受けるようにしましょう。
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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。