血液検査で体内の栄養状態がわかる?血液検査の見方について詳しく解説
オーソモレキュラー栄養療法とは、普通の一般的な健康診断で行う採血よりもさらに詳しく項目を追加し、約70項目について血液検査を行い不足した栄養素を解析する方法です。普段の生活における自分の栄養状態を評価する血液検査としてよく知られています。
今回は、オーソモレキュラー栄養療法をベースとして、血液検査の見方や検査結果からわかる栄養状態について詳しく見ていきます。ご自身の健康診断の結果を見ながら本記事で紹介する重要項目について、自分に当てはめてみることで、どのような栄養が不足しているのかが分かりますので、ぜひチェックしてみてください。
通常行われる血液検査では、「AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)」「ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)」「γGTP(ガンマ・グルタミルトランスペプチダーゼ)」「LDH(乳酸脱水素酵素)」「アミラーゼ」「リパーゼ」「ALP(アルカリフォスファターゼ)」「CK(クレアチンキナーゼ)」などの測定が行われますが、これらは逸脱酵素と呼ばれています。
逸脱酵素とは、本来細胞の中で働いている酵素が何かしらの理由で細胞から飛び出して血液中に流出したものです。逸脱酵素の流出原因で多いのは、「細胞自体の破壊」や「死滅」「細胞膜の透過性亢進」などがあります。逸脱酵素が外に出ていけばいくほど基準値よりも数値は高くなり、血中濃度が上昇します。
たとえば、肝臓や腎臓、心臓などの臓器に障害が起きると、細胞の破壊や死滅により逸脱酵素が血液中に流出してしまいますが、そのことで基準値より逸脱酵素の数値が高くなっていたら、データから臓器が障害を受けていると医師は考えるわけです。
しかしながらほとんどの医師は、逸脱酵素が増えて基準値より高くなったら「異常」ということしか見ていません。高値は見ているものの低値はほとんど見ておらず、数値が低くても「大丈夫、様子を見ましょう」と言われてしまうのが定説です。しかし、実際には低値に関してもある程度注意して見ておく必要があるのです。
たんぱく質は三大栄養素のひとつですが、たんぱく質が足りているかどうかを血液検査ではまず一番に見られます。たんぱく質の代謝評価になる項目としては「総蛋白(TP)」「尿素窒素(BUN)」「AST、ALT」「γGTP」「LDL(悪玉)コレステロール」の5つ。
たんぱく質が不足してくると、筋肉量が減ってきます。また消化酵素や代謝酵素、抗酸化酵素の元成分となっていますので、これらも低下してしまうと免疫力や代謝、ホルモンの低下が起こるなど、身体が悪い方向に行ってしまう危険性があるので、たんぱく質は非常に重要な要素として捉えておきましょう。
総蛋白の基準値は、「6.7~8.3g/dL」程度となります。体内100種類以上の蛋白成分を含む値となるので、6.5以下と低い数値が出るとたんぱく質摂取不足の可能性が出てくると言われています。
ただこの数値もあくまで参考程度と考えるのがよく、脱水状態になっただけでも数値は上がりますし、肝機能異常で数値が下がったりといった具合にさまざまな要因で変動します。栄養学的には基準値を下回っていなければ問題ありませんが、理想として7.5以上(最低7.1以上)が望ましく、6.7を下回ってほしくありません。
尿素窒素(BUN)は一般的には腎機能を評価する項目です。尿素窒素は、たんぱく質が分解された最終産物で、低すぎるとたんぱく質不足を引き起こすとされています。
尿素窒素の基準値は「8~22mg/dL」となっており、栄養学的には15mg/dL未満の場合、たんぱく質の摂取不足かビタミンB群の不足、またはその両方によりたんぱく質の代謝が低下していると考えられます。
尿素窒素も数値が上がったり下がったりしますが、上がるケースで一番多いのは「脱水」です。腎機能異常や感染、消化管出血などでも尿素窒素が上昇することがあります。ちなみに、医師は上昇に関しては重視して見ているものの、下がっているケースについてはあまり考えない傾向にあるようです。
なお、BUNとγGTPが同じ程度の数値であるのが理想とされていますが、尿素窒素よりγGTPが極端に高い場合には、脂肪肝や身体の炎症の可能性があると言われています。
ASTは肝臓や赤血球、心臓筋肉から逸脱、ALTは肝臓のみから逸脱する酵素です。
AST、ALT双方に共通する生成のための補酵素としてビタミンB6が必要となるため、ビタミンB6が体にどれぐらいあるか推測することができます。
ASTの基準値は「10~40U/L」、ALTの基準値は「5~45U/L」とされており、栄養学的な理想値は20U/L前後と言われています。
AST-ALT >2の場合は「ビタミンB6不足」の可能性があります。これは、ASTの半減期(寿命)が20時間前後、ALTの半減期が90時間前後と寿命が違うため、ASTのほうがビタミンB6の影響を受けやすいためです。ビタミンB6が不足するとASTが高くなる傾向にあります。なお、ALT-AST >2の場合には「脂肪肝」の可能性があると言われています。
ビタミンB6はエネルギー代謝の補酵素としてとても重要です。特にたんぱく質の分解を助けてくれるので、ビタミンB6がないと代謝を回すことができません。もし食べ物からビタミンB6を摂取するのが難しいと感じたらサプリメントで補うのがよいでしょう。
ちなみに「セロトニン」「メラトニン」「ドーパミン」「GABA」などの神経伝達物質のホルモンもたんぱく質でできています。ビタミンB6が少ないと元気ホルモン、リラックスホルモン、幸せホルモンが少ない可能性もあるため「最近元気がない」とか「力が湧かない」と思ったらビタミンB6不足の可能性を疑いましょう。
また、女性の生理前に月経前症候群になる人もいると思いますが、「体がきつい」「頭が痛い」などの症状が現れる場合には、ビタミンB6やマグネシウム不足が関係していると言われています。ほかにも、悪夢を見る、香料過敏症、化学物質過敏症といった症状がある人もビタミンB6不足に関係があるとされています。
γGTPとは、肝臓や胆道系に多く存在する酵素の一種で、肝機能の状態を評価するための項目のひとつです。
このγGTPは肝臓、腎臓、膵臓、小腸などいろんな臓器から逸脱する酵素ではあるものの、そのほとんどが肝臓からとなっています。そのため、肝細胞が壊れてしまうと数値が上がっていくと言われています。一方でγGTPが低いと、栄養学的にはたんぱく質の摂取量が低いと見ることができます。
γGTPの基準値は「45未満U/L」となっており、栄養学的には2桁は必要で、1桁になったら確実にたんぱく質不足となります。ちなみに男性の場合は「18~25U/L」、女性は「12~22U/L」あるのが理想です。
LDL(悪玉)コレステロールは、数値が高いと医師から指摘されやすく、患者さんも非常に気になる項目のひとつ。悪玉コレステロールとして有名なLDLコレステロールですが、実は動脈硬化の原因になると言われています。
LDLコレステロールの基準値は「70~139mg/dL(HDL(善玉)コレステロール:基準値40~96mg/dL)」ですが、栄養学的には数値が低すぎるとたんぱく質不足の可能性があります。コレステロールはたんぱく質、脂質、糖質の三大栄養素から作られるため、120以下と低すぎる場合、いずれかの栄養素が不足している可能性を考えましょう。
なお、LDLコレステロールは細胞膜や副腎皮質ホルモン、ビタミンDなどの材料になるため、数値が高いと細胞や血管に炎症があったり、傷を修復するために反応的に上がっている可能性が考えられます。
以上、血液検査の見方や検査結果からわかる栄養状態について見てきました。
血液検査の結果を見て「基準値を超えている」とあせってしまうことがあるかもしれません。しかし、基準値はあくまで統計的に算出された目安でしかなく、必ずしも健康状態を正確に反映するわけではありません。当然ながら年齢や体質、生活習慣によって適正な数値は人それぞれ異なります。
たとえば、γGTPやコレステロールの値が高めであっても、食生活や運動習慣によってコントロールできる範囲であれば、すぐに病気と判断する必要はありません。逆に、基準値内に収まっていたとしても、日々の体調や生活習慣に問題があれば、将来的に健康を損なうリスクはあります。
血液検査の結果は大切な指標ですが、数値だけに一喜一憂せず、自分の体調の変化や生活習慣と照らし合わせながら冷静に判断することはとても大切です。必要に応じて医師のアドバイスを受けながら、自分にとって最適な健康管理を心掛けましょう。
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この記事を書いた人
秋山 祖久医師
国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。