内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

自覚症状が出にくい大腸がんに気づくきっかけとは?早期発見や予防方法について解説

日本人男性・女性ともにがんの死亡原因の上位に位置している大腸がん。早期の自覚症状が出にくく、がんが進行した結果、症状がではじめてやっと「大腸がんではないだろうか?」と気づくといった特徴があります。

とはいえ、大腸がんに早く気づくことができれば、外科的治療を施すことなく内視鏡治療で済ませられる可能性が高くなり、精神的にも肉体的にも負担が少なくて済むメリットがあります。

今回は、大腸がんに気づくきっかけとなる症状などにはどのようなものがあるのか?また、日頃から大腸がんの予防のためには何を行うべきかなどについて見ていきたいと思います。

1. 大腸がんの特徴

がんとハート
大腸がんは、結腸・直腸・肛門といった大腸表面の粘膜から発生するがんです。

国立がん研究センターの最新がん統計によると、2019年のデータで診断された総数が155,625例となる日本で罹患数の最も多いがんとされています。ちなみに死亡数が多いのは男性の場合「肺がん」、女性の場合は「大腸がん」となっています。

日本人の場合、大腸がんのおよそ半分の割合で、便が溜まる時間の長いS状結腸や直腸部分にできやすいと言われています。S状結腸にできたがんを「S状結腸がん」、直腸にできたものを「直腸がん」と呼びます。

1-1. 大腸がんの発生要因について

食生活の欧米化によって生活環境や食事の変化に伴い、大腸がんは増加の傾向にあります。また大腸がんの発生要因については、生活習慣との関わり合いが強く、特に「飲酒」「喫煙」さらには「肥満」が発生リスクの高い要因と言われています。

ほかにも、加工肉や赤身肉の摂りすぎの方や家族に大腸がんを経験した方がいる場合も大腸がんにかかるリスクは高くなります。

1-2. 大腸がんにかかりやすい年齢・性別は?

大腸がんにかかった男女比率についても見ておきましょう。先ほど紹介した2019年の最新がん統計データでは、男性87,872例、女性67,753例とおよそ6:4の割合となり男女差はそれほどありません。

また、大腸がんにかかりやすい年齢は40代以上になると増加し始め、50代・60代になると一気に増加します。

2. 大腸がんに気づくきっかけ

腹痛の高齢女性
大腸がんや大腸ポリープは自覚症状がほとんどありません。そのため、がんが進行してきたのちに症状が見え始めて大腸がんに気づくことになります。

以下は大腸がんで見られる具体的な症状例です。

・血便がある
・便秘と下痢を繰り返す
・慢性的な腹痛
・嘔吐する
・貧血がある など

なかでも、血便については大腸がんを疑うことが重要で、早急に検査を受けることが必要です。

2-1. 血便

血便は大腸がんに気づくきっかけとして目に見えてわかりやすい症状のひとつとされています。当然大腸がん以外でも何らかの原因により血便が生じる場合がありますが(下血)、大腸がんの可能性が高い場合には、病巣がある部位によっても出血の色や便の状態が異なります。

盲腸や上行結腸、横行結腸といった右側の結腸部にがんが発生している場合は、便はドロドロした液状便となってまざってしまうため、出血自体に気づくことはあまり多くありません。出血量が多いケースだと、暗赤色の便が生じる場合があります。

下行結腸やS状結腸といった左側の結腸部にがんが発生している場合には、便が大腸を通過しにくくなり便秘や下痢などの症状が現れることがあります。がんがさらに大きくなった場合には、腸閉塞のような症状が発症することもあるようです。直腸に近いS状結腸からの出血がある場合、真っ赤な便が生じる場合があります。

直腸から肛門にかけてがんが発生している場合には、血便でがんが発見されることが比較的わかりやすいです。鮮血に近い状態の血便が見られることが多く、がんが大きくなると、残便感や便自体が細くなるなどの症状が起こることがあります。

2-2. 便秘と下痢を繰り返す

下痢の症状が起こる理由として、大腸には食物残渣に残る水分を吸収して便を形成する機能があります。しかし大腸がんが進行すると、大腸の粘膜に常に炎症がある状態となりこの機能が低下してしまうことから下痢が起きやすくなってしまうのです。

もし、普段から便秘と下痢を繰り返しているような場合には、早めの検診が不可欠です。

2-3. 慢性的な腹痛・嘔吐

大腸がんができると大腸に閉塞が生じ、かなり進行が進んでひどい場合には、腹痛や嘔吐といった症状が現れることもあります。

2-4. 貧血

大腸がんができて出血が多くなり、血便の量が増えると体内の血液量が減少します。その結果、貧血症状が起こる場合もあります。

3. 大腸がんの予防方法

和食
大腸がんを予防する方法としては、まずは発生要因となる要素をできるだけ排除することが重要です。

たとえば、禁煙や節度のある飲酒、適度な運動、感染予防、バランスの取れた食事の摂取などは有効とされています。ほかにも、食物繊維やカルシウムの摂取も効果があるとされているものです。

とはいえ、生活習慣を改善するだけでなく、定期的に大腸がんの検査を受けることで、リスクを減らすことはできるでしょう。特に40歳を超えた方は年1回の大腸がん検診は必ず受けることが必要です。

4. 大腸がんの検査方法

大腸検査のイメージ
大腸がんの主な検査方法には、

・便潜血検査
・全大腸内視鏡検査
・大腸CT検査(CTC検査)

などがあります。特に便潜血検査は大腸のがん検診で一般的に行われる検査方法で、便潜血検査で陽性が出た場合にさらなる精密検査を受ける流れになります。

4-1. 便潜血検査

便潜血検査は、男女40歳以上が検査対象となり年に1回の検査が推奨されています。

検査方法ですが、検査用スティックで便を採取して提出します。便は2日に分け2回採取されます。

この便潜血検査で陽性となった場合には、大腸がん、大腸ポリープ、潰瘍などの可能性があると判断され、さらに精密な検査を受診します。

具体的に、​​早期大腸がんの50%以上が便潜血陰性、進行大腸がんだと約30%が便潜血陰性と言われています。このため、便潜血陰性であっても大腸がんを否定することにはなりませんので注意が必要です。

4-2. 全大腸内視鏡検査

全大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡を挿入し、直腸から盲腸に至る大腸全体を観察する検査となります。この検査は大腸の粘膜を直接見ることができたり、詳細に観察できる点がメリットで、大腸がん以外にも大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、虚血性腸炎などを発見することが可能です。なお、検査中に大腸ポリープを発見した場合には、その場で切除できるケースもあります。

もし検査中に病変が発見されれば、その一部や病変自体を採取したのち、病理検査を行いさらに詳しく検査を行います。

4-3. 大腸CT検査(CTC検査)

大腸CT検査とは、肛門からCTC(CTコロノグラフィ)専用の炭酸ガスを注入して大腸を膨らませた状態でCTを撮影する検査です。内視鏡を挿入することがなく、検査自体が短時間なことや体への負担が少ないのが特徴の検査ですが、検査後に大腸がんやポリープなどの病変が発見された場合には、内視鏡検査を受ける必要があります。

この大腸CT検査は、腸が長いまたは腸が癒着している人でも受けることができます。注入された炭酸ガスは、すぐに腸管から吸収されるため、腹痛が生じることもありません。
大腸内の平坦な病変や、5mm以下のポリープは描出が難しいため注意が必要です。

以上のような検査がありますが、一番診断能力が高く、かつ同時に治療を兼ねることができるのは、全大腸内視鏡検査です。

5. まとめ

ストレッチをする高齢男女
大腸がんは早期発見が難しい自覚症状が出にくいがんであるがゆえ、気づいた時にはかなりがんが進行していることの多いとても恐ろしい疾患です。

しかし早期発見ができれば完治する確率は高く、早期の大腸がんであれば内視鏡治療による切除で完治できる可能性の高いがんですので、40歳を過ぎたら便潜血検査や全大腸内視鏡検査など、大腸がん検診を定期的に受けるようにしましょう。

また予防策として、禁煙、アルコールの過度な摂取や加工肉や赤身肉の摂りすぎなどには注意し、適度な運動を行うなど肥満をはじめとした生活習慣病にも常に気を付けるようにしましょう。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。