内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

胃がんの初期症状にはどんなものがあるの?検査方法についても解説

がんの罹患数および死亡数ともに上位に位置する胃がん。この胃がんは初期症状がほとんど見られず、症状が現れはじめたのち検診で胃がんが発見された頃には、かなり進行していることが多いのが特徴です。

そのため、胃がんの初期症状を知り、常日頃から胃がんに注意するためには、全容などを知っておくことが必要です。

今回は、胃がんの初期症状にはどのようなものがあるのか?また胃がんの検査方法・予防方法についても見ていきたいと思います。

1. 胃がんの特徴

胃のイラスト
胃がんは、胃の壁の内側にある粘膜細胞にがんが発生し、繰り返し増殖することで発生します。がんが大きくなると、粘膜下層や固有筋層、漿膜へと進み、さらに深く浸潤すると漿膜の外に達して、大腸や膵臓、肝臓などにも広がっていきます。

がんの病巣が粘膜や粘膜下層までの進行にとどまっているものを「早期胃がん」、固有筋層や漿膜にまで達しているものを「進行胃がん」と呼びます。また、胃の粘膜細胞から発生する胃がんと異なり、胃の内部の壁を這うように広がっていくがんを「スキルス胃がん」と言います。スキルス胃がんは、胃がん全体のおよそ10%を占めている癌ですが、非常に発見が難しく進行も早いため、見つかった時にはかなり進行していて治療が困難とされています。

国立がん研究センターの最新がん統計によると、2019年のデータで診断された総数が124,319例(男性85,325例、女性38,994例)、死亡数は2020年のデータで42,319人(男性27,771人、女性14,548人)となっています。いずれも女性より男性の方が多いことが見て取れます。

1-1. 胃がんが発生する原因について

胃がんの発生には、ヘリコバクターピロリ菌の関与が大きいと言われています。へリコバクターピロリ菌は胃に住み着いている細菌のひとつです。このヘリコバクターピロリ菌に感染すると、慢性胃炎・萎縮性胃炎などの症状が見られ、胃がんが発生する確率が高くなるという報告もあります。
また、へリコバクターピロリ菌の関与以外にも、喫煙、過度な飲酒、高塩分の食事の摂取、野菜の摂取不足、ストレスのある生活などが胃がんの発生原因とされています。

2. 胃がんの初期症状について

腹痛の男性
冒頭で胃がんは初期症状がほとんど見られないとお伝えしましたが、以下のような症状が現れるようになったら胃がんを疑い、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。

初期症状として押さえておきたいのは

・胃痛
・食欲不振
・胸やけ
・体重減少
・黒色便

などです。それぞれ詳しく見ていきます。

2-1. 胃痛

胃痛は胃がんの初期症状と判別が難しく、普段の日常生活を行っていれば遭遇する症状であるため注意が必要です。
「胃に違和感を覚える」「胃もたれがする」といった場合には、胃炎や胃潰瘍などを疑いつつも、胃がんの可能性はないだろうか?という意識を持つことで早期発見につながります。

2-2. 食欲不振

食欲不振は「食べる気が起きない」「お腹がすかない」などの症状が起き、食事を摂れる状態にないことを言います。

食欲不振が生じる原因として、消化器系疾患やストレスや、睡眠不足などがあります。胃がんの初期症状としても食欲不振が起きることがありますので、2~3週間も食欲不振が続くようであれば、医療機関に相談してみると良いでしょう。

2-3. 胸やけ

胸やけとは、みぞおちあたりでヒリヒリする感じ、しみるような感じが生じるものを言います。胸やけは、主に食道への胃酸の逆流で食道の粘膜が損傷されることによって起きるものです。

上記で紹介した胃痛や食欲不振と同様、単に「胃が痛い」「胸やけする」で片づけられることがないよう、頻繁に胸やけが続くようなら胃がんの初期症状と疑い、検査を受けてみる必要があります。

2-4. 体重減少

胃がんになると食欲が減退したり吐き気をもよおしたりすることから、必然と食物を摂取することができなくなり、体重減少が起きることがあります。
特にダイエットを行っているわけではないのに急激に体重が減っている場合には、胃炎や胃潰瘍ではなく胃がんを疑い、早急に医師の診断を仰ぎましょう。

2-5. 黒色便

黒色便が見られる場合には、食道や胃、十二指腸といった消化器系器官のどこかしらより出血していることが考えられ、出血した血液が胃酸とまじりあうことで黒くなり黒色便が形成されます。
なかには、貧血予防の錠剤を摂取することやイカすみパスタを食べたのちに黒色便が出る場合もありますが、そうでない場合に黒色便が出る場合は注意が必要です。

以上のような症状が胃がんの初期症状の特徴となりますが、胃がんだからといった特有の症状があるわけではありませんし、たとえば胃炎や胃潰瘍と同じ症状だとすれば、「少し食べ過ぎた」「最近仕事のストレスが溜まっている」といった考えに落ち着いてしまい、誰もが「もしかして胃がんかも?」とまでは考えないのではないでしょうか。

当然定期健診を受けることは大事ですが、上記のような初期症状をはじめ胃に何らかの違和感を覚えたら、すぐに医療機関を受診するように心掛けましょう。

3. 胃がんの検査方法

血液検査
胃がんの早期発見には胃がん検診が必須です。胃がん検診は男女とも50歳以上が検診対象者とされ、2年に一度の検診が勧められています。
お住まいの市区町村によって胃がん検診の内容は異なりますが、ここでは一般的な検診方法について触れておきます。

3-1. 血液検査

胃がんのリスク診断としては「ABC検診」という血液検査が取られる場合があります。

採血のみで検査できますが、早期のがん発見に直接つながらないことから胃がんリスクを判定するための検診としての位置づけとなります。ABC検診を受診したのち、胃内視鏡検査や胃部X線検査をどのくらいの頻度で受診するかを決める指針にはできるでしょう。

3-2. 胃内視鏡検査

胃内視鏡検査(胃カメラ検査)は、口や鼻から胃に向けて内視鏡を挿入し、胃の中を観察する検査方法です。検査中に怪しい部位や病変らしきものを見つけた場合には、その場で組織を採取してさらに詳しい組織検査が行われることがあります。

この胃内視鏡検査は人によって苦痛に感じることもあり、嘔吐をもよおしてしまう人も中にはいます。通常は内視鏡挿入時に鼻やのどにスプレー式の局部麻酔をかけて検査を行いますが、医療機関のなかには麻酔(鎮痛剤)を使用して痛みを感じにくくしてくれるところもあります。不安がある方はそのような医療機関を探して検査してみるのがおすすめです。

3-3. 胃部X線検査

胃部X線検査はバリウム検査とも言われ、胃を膨らませる発泡剤とバリウムを飲んで胃の粘膜を観察、胃がんを始め胃炎や胃潰瘍、狭窄、ポリープなどを発見することができる検査となります。手軽に検査ができ、患者さんの負担が胃内視鏡検査に比べると少ない検査方法です。

胃部X線検査ですが、表面がでこぼこしている異常に関しては比較的発見しやすいという特徴があるものの、小さなでこぼこや胃の内部の色、出血などを判別することはできません。そのため、小さながんや平坦ながんを見落としてしまう可能性があることから、胃内視鏡検査のほうが胃がんの早期発見には適しています。

4. 胃がんの予防について

ウォーキングをする男女
胃がんの予防には、生活習慣を改善することが重要です。

たとえば

・禁煙
・アルコール摂取はほどほどに
・適度な運動
・食生活の見直し
・定期健康診断の受診
・へリコバクターピロリ菌の検査

などによって、胃がんの発症を抑えられる可能性は高くなります。

5. まとめ

男性医師
胃がんの初期症状は非常にわかりにくく、普段我々の生活で起きがちな胃痛、胸やけ、食べ過ぎなどと区別ができずに放置されてしまい、気づいた時にはがんが進行していたとなりがちな病気です。

数日で治まるならまだしも、数週間にわたり症状が続くような場合には、すぐに医療機関を受診することをおすすめします。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。