内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

放置するのは危険?若い世代に増加中の脂肪肝の予防法についてお腹のプロが徹底解説

生活習慣病のひとつとして若い世代にも増加中の「脂肪肝」。自覚症状が出ないため気付きにくいものとされていますが、健康診断で初めて発見されることも多く、検査で脂肪肝と診断されるケースではかなりひどい脂肪肝であるとも言われています。

脂肪肝をそのまま放置すると、約10%の人で肝炎や肝硬変、肝細胞がんといった病気を発症することがあるため、普段からの予防や対策がとても大事です。

今回は、脂肪肝とはどのようなものなのか、また自覚症状のない脂肪肝の予防法についても詳しく見ていきます。

1. 脂肪肝とは?

肝臓のイメージ
肝臓はエネルギーを貯蓄するために脂肪を生成して肝細胞に蓄積していきます。しかし、この脂肪生成がエネルギー消費量よりも多くなってしまい、肝細胞内に中性脂肪が蓄積され肝細胞の20%以上が脂肪に置き換わってしまう状態のことを「脂肪肝」と言います。

脂肪肝は、過食や運動不足といった不規則な生活習慣が原因で発症することが多く、現代においては男性の約40%が脂肪肝であると言われています。また日本人の場合、外見上痩せている人でも脂肪肝であることもあり、痩せ型の人でも肝臓に脂肪が蓄積することがあります。

この脂肪肝はよくメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を併発し、そのまま放置すると肝機能低下や肝炎、肝硬変といった疾患に発展することがあります。また、高中性脂肪血症や糖尿病を引き起こし、動脈硬化のリスクを高める可能性もあることから、早めの予防や対策が必要です。

2. 脂肪肝の原因

たくさんのビールジョッキ
脂肪肝の原因のほとんどは過食と多量のアルコール摂取です。

過食については炭水化物や果物の果糖を取り過ぎて余ったものが中性脂肪となったり脂肪肝になったりします。アルコール以外の原因、特に過食によって脂肪肝が肝炎や肝硬変に発展するものを「NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)」と呼びますが、近年発症率は増加傾向にあります。

また多量のアルコール摂取についてですが、お酒を飲むと「アセトアルデヒド」という物質に分解されますが、アセトアルデヒドには強い毒性があり二日酔いの原因にもなります。このアセトアルデヒドが肝細胞を痛めつけることで、中性脂肪を分解してくれる酵素の働きを抑えてしまい、中性脂肪の分解を抑制してしまいます。その結果脂肪が溜まっていくため、脂肪肝になってしまうのです。

2-1. 脂肪肝は短期間でなるもの?

通常、脂肪肝は短期間でなるものではありません。慢性的にアルコールを飲んでいる人や慢性的に糖質を摂取しすぎている人が脂肪肝となることがほとんどです。

健康な肝臓内に占める脂肪の割合が5%以上であれば脂肪肝と言われますが、どんな人でも肝臓には3~4%程度は脂肪がついているため、脂肪肝と診断されるハードルは少々低いのが現状です。

ただし実際には、5%程度の脂肪肝では超音波検査(エコー)やCTスキャンの画像ではほとんどわからず、認識可能となるのは脂肪が20%以上ついている状態でのことです。つまり超音波検査やCTスキャンをした結果、明らかに脂肪肝だとわかる人はすでに肝臓にかなりの脂肪がついていることになりますが、そのような状態になるには数か月レベルではなく何年といった期間がかかっています。

2-2. 脂肪肝は見た目でわかる?

一般的に脂肪肝の人は見た目がふくよかな人が多いのは事実です。しかし、アルコールによる脂肪肝の場合は違っていて、比較的痩せている人も多いです。

炭水化物が原因の脂肪肝は、体重や体型に比例しますが、アルコールの場合は気づかないことがほとんどです。痩せていて脂肪肝になる人の中には、健康診断で脂肪肝だと診断されてびっくりされる人もいらっしゃいます。

2-3. 脂肪肝は放置すると危険?

脂肪肝には基本的に自覚症状がありません。そのため脂肪肝であることに気づかない人は非常に多いです。単純に肝臓に脂肪がついているだけであれば「単純性脂肪肝(NAFL)」といってそれほど問題になりませんが、脂肪がどんどん蓄積していくと長年蓄積した中性脂肪が肝臓の細胞を傷めつけていきます。そうなると肝臓が炎症を起こしてきて脂肪性の肝炎を発症します。このような状態になると体がだるい、疲れが取れない、食欲がないといった症状が出てくるようになります。これはいわゆる「不定愁訴」であって、検査をしても原因となる特定の病気が見つからない状態であることが多いのが特徴です。

肝臓は本来柔らかい臓器ではありますが、それが硬くなってしまい戻らなくなるのが問題です。肝臓自体再生は行われますが、炎症を繰り返しているうちにだんだん線維化(組織が繊維成分に置き換わって硬くなること)が起きてしまい弾力がなくなっていきます。最初のころはすぐに治り簡単に脂肪肝は改善しますが、度を超してしまうと硬くなって元の柔らかさには戻らなくなってしまい、取り返しのつかないことになってしまうため、脂肪肝を放置することは避けなければなりません。

2-4. アルコールを飲んでいる人は脂肪肝が起きやすい?

やはり、アルコールを日常的に摂取している人は脂肪肝が起きやすい傾向にあります。アルコール性の脂肪肝の人は、アルコールを飲み続けることで脂肪肝がひどくなり、その結果炎症を起こしてアルコール性の肝炎を起こしてしまいがちです。さらに悪くなると肝硬変を引き起こす恐れがあります。脂肪肝から肝炎、肝硬変、その先には肝臓がん、さらには肝不全という完全に肝臓機能がストップして亡くなってしまうケースもあります。

肝臓は、血流が戻ってくる臓器として1日に2,000リットル以上の血液が流れ込み、解毒や代謝、胆汁生成をしてくれる非常に重要な機能を担っています。そんな肝臓が硬くなってしまうと血液が入りにくくなってしまい、分散して血流が逃げてしまうのです。お酒を飲むと顔が赤くなる人がいますが(赤ら顔)、これは血管が拡張して肝臓の血流が違うところに行った結果を表しています。

なお、肝臓が悪くなって硬くなりかけている人に多い症状には、食道・胃の静脈瘤があります。これは肝硬変などで血液が胃や食道表面の静脈に流れ込み、瘤(こぶ)を作ってもろくなってしまうもので、この症状が出ている場合も肝臓が硬くなってしまっている証拠となります。

3. アルコール性脂肪肝の予防法

禁酒
肝臓がんにまで発展してしまうと治療できないケースもありますが、脂肪肝を未然に防ぐ方法としてはアルコール性脂肪肝の場合、禁酒しかありません。手遅れでないレベルの肝炎の人であれば、肝臓には再生能力があるのでそれだけで元に戻ります。

通常、肝炎まで行く人の場合はほとんどがアルコール依存症ですので、そこまで行かない程度に飲むレベルにとどめましょう。たとえば、休肝日を週に2日ほど設けたり、アルコールの量を調整するなど飲み方をご自身で決めておき、あとは自己責任で楽しむようにしましょう。

4. 過食性脂肪肝の予防法

和朝食
一方、過食における脂肪肝の予防としては糖質を過剰に摂りすぎないことに尽きますので、バランスの良い食事を心掛けるようにする必要があります。

多くの方が誤解しているもののひとつに、体にいいと思って果物を多く摂ることが挙げられます。たしかに果物からはビタミンやミネラルを摂ることができますが、それでも過剰に摂りすぎるのは健康によくありません。果糖のため中性脂肪や脂肪肝の原因となってしまいますので、果物の食べ過ぎには注意しましょう。

5. 脂肪肝の予防には適度な運動がベスト

ウオーキングをする男女
食事以外の脂肪肝予防には適度な運動が効果的です。肝臓学会が出している脂肪肝のガイドラインには、食事よりも運動が脂肪肝には効果があるといったエビデンスが出ています。

ですから食事療法は行わなくても運動だけは1日30~40分、有酸素運動を週3~4回やるのはとても効果的です。たとえば通勤時に一駅歩くといったことはすぐにでもできる有酸素運動のひとつです。ただし、ただ歩いても全く意味がないので、少し早足でかつ大またで歩くなどの工夫は必要です。

5-1. 体重はどれくらい落とすのがよい?

脂肪肝の予防としては、少なくとも現在の体重の最低5%は減らしましょう。理想として7%以上減らすことができれば合格です。ただし体重が減らなくても脂肪肝は取れる、効果があるといったエビデンスもあるので、継続的な運動を心掛けましょう。

6. まとめ

男性医師
以上、脂肪肝とはどのようなものなのか、また脂肪肝の予防法について紹介してきました。

脂肪肝は自覚症状がほとんどないため、検査等で気づいた時にはかなりの脂肪がついている状態になっていることが多く、定期健診もさることながら、生活習慣の見直しも重要となってきます。脂肪肝であることが判明し、アルコールや過食を予防するなど生活改善に踏み切ることができれば、脂肪肝は改善できる可能性もあります。しかしすでに進行して肝硬変に至ってしまうと改善が難しく、さらには肝臓がん、肝不全に至る可能性もあります。

脂肪肝と診断された場合には、放置することなく医師の診断を仰ぎながら適切な処置を受けましょう。

癌にならない腸活実践メルマガ講座

「癌にならない腸活実践メルマガ講座」では、がんで亡くなる人・苦しむ人を一人でも多く減らすために日常生活の中で実践できる

・免疫を上げる方法
・正しい腸活の知識
・腸内環境とお肌の関係
・健康的なダイエット方法
・乳酸菌のすごい効果

などを、腸の専門医が毎日メールでお届けいたします。

免疫力をアップして、いくつになっても健康的な毎日を過ごしたい方におすすめの内容になってますので、気になる方はぜひ記事下のバナーをクリックしてお申し込みください。
↓↓
癌にならない腸活 実践メルマガ講座 乳酸菌バナー 内視鏡チャンネルバナー

この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。