内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

鎮静剤を使用する、内視鏡検査のメリットとデメリットについてご存じですか?

メリット

  1. 腹部圧迫感、腹痛などの苦痛を感じることが少ない
  2. 胃カメラ時の「おえっ」「げーげー」となるような苦しい検査を避けることができる
  3. 時間をかけた丁寧な検査が可能になり、十分に胃や大腸のヒダをひろげることができるため病変の見逃しが少なくなります

デメリット

  1. 鎮静剤使用に熟練した医師やきちんと整った設備が必要となりますが、実際には鎮静剤を適切に使うことができる医師や施設が限られています。
  2. 内視鏡検査後に1時間程度の休息が必要であり、すぐに帰宅することができません。
  3. 内視鏡検査当日は鎮静剤の影響が残る可能性があるため、自動車やバイク、自転車の運転ができません。

鎮静剤は、静脈から血管内に注射することで意識が「うとうと」する薬です。

鎮静剤を使うことで胃カメラの場合は、

  1. スコープがのどを超えるときの不快感(イメージするとこれが一番きついかもしれません)をなくすことが可能
  2. 観察時に胃の中が空気でパンパンになる苦しさを和らげることが可能
となります。

また、大腸内視鏡検査の場合は鎮静剤を使うことで

  1. スコープが挿入されていく時の、お腹が突き上げられるような苦しさをなくすことが可能
  2. 観察時に大腸内が空気でパンパンになる苦しさをなくすことが可能
  3. 検査中の肛門が押し広げられている不快感を和らげることが可能
となります。
では、どうして鎮静剤を使わない施設があるのでしょうか?
まず、鎮静剤をつかうことで制約が出てきます。

その制約とは?

  1. 検査後、1時間は休息が必要です。これは鎮静剤からしっかりと目を覚ますため必要な時間です。
  2. 検査当日はわずかですが鎮静剤の影響が残るため、自動車やバイク、自転車の運転ができません。
この2つの制約が煩わしいと思い、守れない方は鎮静剤を使用することができません。
また、施設側にも鎮静剤を使用しない理由があります。

まず鎮静剤の使用に精通した医師が不在の場合です。種類や量を誤ると呼吸抑制や意識がなかなか戻らないなどの問題が生じます。当院では鎮静剤に関して熟練した医師が使用しているため安心して検査を受けることができます。

また、医師以外のスタッフも鎮静剤に精通していなくてはならず、スタッフ確保が難しいことも使用しない原因のひとつに挙げられます。先に述べたように、検査後に1時間休息するスペースが必要ですが、そのスペースが取れないため使用しない施設もあります。
鎮静剤を使用した胃カメラ

鎮静剤を使用した胃カメラ

反射やげっぷが起きないため胃のひだをしっかり伸ばして検査ができます。
鎮静剤を使用しない胃カメラ

鎮静剤を使用しない胃カメラ

胃に空気を入れてヒダをのばそうとするとげっぷが出てしまい、ひだとひだの間の観察が不十分になり、そこに隠れた病変を見逃してしまう可能性があります。

時間とお金をかけて検査を受けたのに・・・

  1. つらく、苦しかった。
  2. 胃腸の観察をしっかりしてもらえなかった
ということはとても残念なことです。
私たちのクリニックでは、軽度の鎮静剤を使用することで
「当日の自動車などの運転を控えていただき、検査後に少しお休みする時間はいただきますが、全く苦しくない無痛の内視鏡検査ができて、なおかつしっかり観察する」
ことが可能になります。

楽に検査を受けていただくことが前提ですが、鎮静剤も患者さん各々に応じた適切な量を検討してから使用していますので、お帰りが遅くなったり気分が悪くなったりすることはほとんどありません。
また鎮静剤の量が最小限で済むように、苦しくならないような検査中の操作技術や工夫を随所に入れております。

当クリニックでは驚くほど楽に、そしてしっかりと観察ができる内視鏡検査を実施していますので、これまでの検査がきつかった方や検査を受けることに不安をお持ちの方は、ぜひ相談に来ていただきたいと思います。

症例 01 ひだとひだの間に存在した胃悪性リンパ腫の症例

しっかりと胃に空気を充満してひだをしっかりと伸ばさないと見つけられなかったと思われます。

鎮静剤を使用しないとげっぷが出やすいため、ひだの間の観察が不十分になることがあります。

症例 02 以前、他院で受けた大腸内視鏡検査がとても痛くて、つらかったため検査がトラウマになっていた方

3年間連続で便潜血陽性を指摘されていましたが、大腸内視鏡検査を避けていました。

当院の評判を家族から聞いたため、当院で大腸内視鏡検査を受けられました。

過去の検査での痛みのトラウマから、大腸内視鏡検査を先延ばしにしていたため進行大腸がんの状態で見つかってしまいましたが、外科的手術を受け、現在では元気に社会復帰されております。
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この記事を書いた人

平島 徹朗医師

国立佐賀大学医学部 卒業。
大分大学医学部附属病院消化器内科、国立がん研究センター中央病院内視鏡部など、多くの病院・内視鏡専門クリニックで消化器内視鏡診断・治療を習得後、2011年たまプラーザ南口胃腸内科クリニック開院。