内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

血便はどうして起きる?考えられる原因6選を詳しく解説!

トイレでお尻を吹いた際にトイレットペーパーに血が付いたり、便に血が混じっているのが確認されれば、誰しもがびっくりして「ヤバい病気かも?」と不安になるのではないでしょうか。とはいえ、単なる痔だと思って医療機関を受診しない人も多いため、実は大きな病気が潜んでいることに気づかないこともあります。

血便があった場合にはがんを疑う人も多いと思いますが、血便はがん以外にもさまざまな原因があります。血便があった際には安易に考えず、早急に医療機関を受診することが安心にもつながります。

今回は、血便が起きる理由について、また血便の原因となる病気6例を取り上げて詳しく説明していきます。

1. 下血と血便の違い

トイレの模型
消化器疾患として消化器管からの出血としては「下血」と「血便」があります。下血と血便は同じものと思っている人も多いと思いますが、実は全く別のものです。

まず下血についてですが、黒いスミのような便で「タール便」とも言われます。下血の原因としては胃や十二指腸からの出血です。

一方の血便ですが、下血とは異なり赤い血が混じった便で赤黒いことが多く、主に大腸や肛門から出血します。

なお、下血や血便のように目に見える形での血液が確認できるケースは自覚できるのでまだよいものの、少量の出血については目に見えないため、健康診断などで行われる便潜血検査で初めて発覚することもあります。

便潜血検査では早期がんの約50%を発見することができるとも言われており、特に病気に関する自覚症状がない人にとっては大腸内視鏡検査など、詳しい検査を受診するきっかけにもなります。

1-1. 便が黒くなる理由

便がなぜ黒くなるかというと、たとえば胃から出血した場合、胃のあとに十二指腸や小腸、大腸などを通りますが、その過程で胃液や腸内細菌によって酸化してしまったり、消化酵素によって変色してしまったりするためです。特に胃や十二指腸といった消化管の始まり部分に関しては、便となる時に黒くなることが多いと言われています。

なお、出血箇所は便の色によってだいたいこのあたりから起きているといった予測が可能です。

・黒色便…食道や胃、十二指腸からの出血
・暗赤色便…小腸付近からの出血
・鮮血便…大腸や肛門からの出血

2. 血便の原因6選を紹介

お尻をおさえる女性
ここからは血便の原因とも言われる6つの病気について見ていきます。これ以外にも考えられる病気はありますが、代表的なものを取り上げてみましたので、ぜひ参考にしてみてください。

2-1. 感染性腸炎

感染性腸炎とはいわゆる食中毒の状態のことで、腸に炎症が起こることによってじわじわ粘膜から出血します。通常は下痢を伴い、およそ1週間程度で治ることがほとんどです。病原体としては細菌やウィルス、寄生虫などが挙げられます。また人やペットとの接触感染も見られます。

よく牡蠣や鶏肉を食べた際になるとも言われますが、血便に至るまでとなるとかなりひどい腸炎で、O-157(腸管出血性大腸菌感染症)ぐらいの腸炎であれば血便が起こりやすいです。

2-2. 炎症性腸疾患

炎症性腸疾患とは、クローン病や潰瘍性大腸炎など自己免疫の病気で、1週間程度で治るようなものではなく慢性的な下痢や軟便がずっと続きます。なかでも潰瘍性大腸炎は安倍晋三元首相の持病として、また総理辞任の理由でもあったことでも有名です。

この潰瘍性大腸炎は腸に炎症や潰瘍ができて、そこからじわじわ出血が起こることが多いです。典型的な症状としては1日に5~10回の下痢や血便が続くとされていますが、重症度は患者さんによって異なり、ひどい人だと1日20回以上も下痢が続く人もいると言われています。

現在この潰瘍性大腸炎にかかっている人は日本においてかなり急増しており、10代、20代といった若くして罹患する人が多くなっています。

2-3. 大腸がん・大腸ポリープ

患者さんが最も心配するのが、大腸がん・大腸ポリープといったものではないでしょうか。

大腸がんの場合には腫瘍の表面がもろく出血しやすい状態になります。そこからじわじわと出血が継続していくのですが、がんが大きくなるとひどい便秘が起きたり出血が続くことで貧血になることもあります。特に貧血になるケースでは、がんがかなり進行している状態と見てよいでしょう。

また、大腸ポリープは、皮膚や粘膜などの面から突出して茎を持つ卵球状の腫瘤のことを言います。この大腸ポリープが硬い便の通り道に出来ると、便の通過の際にすれが生じて出血します。

大腸ポリープは大腸内視鏡検査の際にその場で切除することもできますので、怖がらず検査を受けることをおすすめします。

2-4.痔

痔は肛門からの出血で、一般的には痔核(いぼ痔)か裂肛(切れ痔)によって生じる出血と考えられます。サラサラとした鮮血が特徴で、排便後のトイレットペーパーに血が付いたり、ぽたぽたと出血したりすることで自覚できます。

軽度の痔だと一時的に出血したもののその後数日経っても血が出ないことが多いため、わざわざ医療機関への受診をしない人もいると思います。しかし、痔による出血で病院にかかる人は多く、軽度のものであれば外科的手術や注射は必要なく、軟膏などで様子をみることになります。

ちなみに一般的に痔の治療は消化器内科でなく肛門科で行います。診断の際には大腸内視鏡検査をして奥に出血しているものがないことを確認した上でないと「痔である」と明確に言えないこともあり、肛門科につなぐための検査として消化器内科での内視鏡検査がとても重要となります。

2-5. 虚血性腸炎

虚血性腸炎とは、大腸の下行結腸やS状結腸部分の血流が一時的に悪くなることで腸に炎症が起きてじわじわと出血するものです。症状としてはいきなり左下腹部に激しい痛みがあり、その後下痢や血便が出ます。この症状は大腸の粘膜が損傷を受け、腸管壁から粘膜が剥がれ落ちることによって生じます。

虚血性腸炎の原因は、慢性的な便秘やストレス、生活習慣の乱れなどと言われています。虚血性腸炎が進行した場合には腸閉塞の症状が現れることもありますので、注意が必要です。

虚血性腸炎の疑いがある場合には、すぐに病院での受診を行いましょう。その結果医師に虚血性腸炎と診断されたら、大抵は整腸剤で様子を見ることになります。

2-6. 憩室出血

憩室出血とは、大腸憩室内の血管が傷ついて激しい出血が起こるものを言います。ちなみに憩室とは、消化器官のちょっとしたポケットのような部分で、大腸の腸管壁の一部が外側に袋状に突出した状態のものを言います。その憩室から暗赤色または新鮮血のような血液が大量に出るため、かなり貧血が進み輸血が必要な場合もあります。そのため、非常に緊急性が高く、輸血可能な総合病院で治療や診断をしてもらうのが賢明です。

憩室出血は地味な印象があるものの、罹患した場合は必ず入院となるような病気です。貧血がひどいと意識を失う人もいますし、最悪の場合、手術や血管内の治療となることもあります。

なお、憩室出血の予防策について以前は便秘を解消すれば憩室ができにくく出血も起きにくくなると言われていましたが、現在のところ明確な予防策は見つかっていません。憩室ができる人であっても全く出血しない人もいる一方で憩室出血を繰り返す人もいるため、どういう人がなりやすいかということがわかっていないのが現状です。

3. まとめ

大腸検査
以上、血便についての基礎知識、また血便の原因となる6つの病気について紹介しました。

血便をきたす病気はさまざまあるものの、いずれも早く医療機関で検査を受けて治療することにより、その後の経過が良くなることがほとんどです。

便潜血検査で陽性を放置した結果、大腸ポリープが大きくなってしまったということは往々にしてありますので、便潜血検査で陽性となったらすぐに医療機関で検査を受けましょう。大腸内視鏡検査などを受け、正確な診断をしてもらうことが安心につながります。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。