内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

過敏性腸症候群はどんな病気?その原因や症状、治療方法について解説

過敏性腸症候群は、下痢や便秘が起きることによって生活の質が損なわれてしまう病気です。特に下痢の症状が重くなってくると、公共交通機関利用時などには「トイレが近くにないか?」「いつ下痢になるんだろうか?」と常に考えてしまうなど、その症状に悩んでいる人も多いようです。

今回は、過敏性腸症候群はどのような病気なのか?その原因や症状、その治療方法について詳しく説明していきます。

1. 過敏性腸症候群とはどんな病気?

お腹に手を当てる女性
過敏性腸症候群(IBS:irritable bowel syndrome)とは、便秘や下痢といった排便時の異常(排便回数や便形状が通常と大きく異なるなど)が、お腹の痛みや調子と関連して数か月以上続く状態のことを言います。

ただし、通常の検査において大腸に腫瘍や炎症などの病気がないことが前提です。内視鏡検査で見ると正常に見えても、精密検査をすることで過敏性腸症候群であることがわかるため、すぐに過敏性腸症候群であると気づきにくい点が特徴となります。

1-1. 過敏性腸症候群はどんな人に多いのか?

過敏性腸症候群は、人口のおよそ10%程度の人がかかっている病気です。男性よりも女性の方に発症するケースが多く、年齢が進むにつれて発症数は減少していきます。

なお、日本人男性一般生活者2万人を対象としたインターネット調査結果によれば、男性の過敏性腸症候群の患者は、非過敏性腸症候群の患者と比べて役職や年収が高い人が多い※という結果が出ています。

1-2. 過敏性腸症候群の原因とは?

過敏性腸症候群の原因ですが、ストレスや心理的異常によるものが大きいようです。精神的に不安な状態に陥ることにより、腸の収縮運動が激しくなって腸内フローラや消化に関連するホルモンが変化し、痛みを感じやすくなる知覚過敏状態となり、これが強くなると過敏性腸症候群を引き起こし、さまざまな症状が現れます。

また、感染性腸炎にかかった場合の回復後にも過敏性腸症候群になりやすかったり、遺伝的影響もあるのではないかとも言われています。

1-3. 過敏性腸症候群の症状とは?

過敏性腸症候群の基本的な症状としては、便秘や下痢の排便頻度、軟便または硬い便といった便の硬さ、残便感、腹部膨隆などが伴います。また、お腹の痛みの程度としては、キリキリ痛むというよりはギューっとするような痛みを発症します。

過敏性腸症候群の症状自体は命にかかわるものではありません。しかし、お腹の痛みや便秘、下痢などの便通異常や不安が起きることで、多くの場合日常生活に支障をきたすことがあります。

最初にお伝えしたような公共の交通機関など利用時や、仕事・学業におけるストレスなどを抱えることで、身体の不安が心の不安にまでつながってしまうことが大きな問題です。

2. 過敏性腸症候群の症状による分類

便秘に悩む女性
過敏性腸症候群の症状は4つのタイプに分類されます。過敏性腸症候群の症状は、就寝中には起こらずに、起きている間に現れます。

2-1. 便秘型(IBS-C)

腹痛が伴う便秘が続くのが「便秘型」の特徴です。とにかく便が出にくく、便をもよおしても小さなコロコロ便が少し出る程度であるため、便が出し切れていない不快感が伴います。ひどい場合だと1週間以上便をもよおさないことがあります。

2-2. 下痢型

急激に腹痛が起こり下痢の症状が出るのが「下痢型」の特徴です。腸の動きが激しくなることで腸を便が水分を保った状態で通過してしまい、下痢が生じます。2~3日に1回程度このような症状が起きるものの、便を出し切ることで一旦症状はおさまります。

2-3. 混合型(IBS-M)

便秘型と下痢型の症状が繰り返され、常にお腹の調子が気になって休まることがないのが「混合型」の特徴です。

2-4.分類不能型(IBS-U)

上記の便秘型、下痢型、混合型に該当しない症状がある場合は「分類不能型」と診断されますが、ほとんどは3つのどれかに当てはまります。

これらの発症の割合について、混合型の発症数が最も多い結果となっており、男性よりも女性が多く発症している傾向にあります。また、下痢型と便秘型は同数程度ですが、男性に多いのが下痢型、女性に多いのが便秘型となっています。

2-5. 過敏性腸症候群の治療方法

過敏性腸症候群の診断基準については、国際的に用いられる「ローマⅣ基準」というのがあり、繰り返し起こる腹痛が最近3カ月のうち平均して少なくとも週に1日以上あり、なおかつ次の項目の2つ以上が該当する場合に過敏性腸症候群と診断されることとなります。

・排便に関連を伴う(とりあえずトイレに行けば症状が治まるまたは緩和される)
・排便頻度の変化を伴う(トイレに行く頻度が増減する)
・便形状の変化を伴う(便の硬さや外観に変化がみられる)

さらに確定診断のため、大腸がんや炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)などがないかどうか、症状や経過および大腸内視鏡検査などを組み合わせたうえで正式な診断が行われます。

3. 過敏性腸症候群の治療方法

ストレッチをする女性
過敏性腸症候群の治療方法としては、「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3つが行われます。

3-1. 食事療法

食事療法では、規則正しい食事を摂ることから始めます。一般的には脂質やカフェイン、香辛料を多く含む商品、牛乳や乳製品、アルコールなどは症状を悪化させると見られています。

これらの食品摂取を控えることと、食事の際にはゆっくりよく噛んで食べることを心掛けましょう。

3-2. 運動療法

運動療法では、ヨガやウォーキング、ストレッチといったあまり身体に負担のかからない運動をするのが効果的だとされています。

適度な運動をすることで腸の働きを正常な状態に戻すことができますし、運動によってストレスを解消することもできます。1日数分~数十分程度、継続して行うことを徹底しましょう。

3-3. 薬物療法

薬物療法では、消化管機能調整薬やプロバイオテックス、高分子重合体などが用いられることがあります。

下痢型の過敏性腸症候群の人には、腸の運動異常を改善させるセロトニン3受容体拮抗薬(5-HT3拮抗薬)が、一方で便秘型の過敏性腸症候群の人には、便を柔らかくする粘膜上皮機能変用薬が使用されるケースもあります。

4. 過敏性腸症候群の治療期間

腹痛の女性
過敏性腸症候群は短期間で治るものではありませんが、なんとなく治療していても効果があるかどうかの判断が難しいこともあり、治療期間の目安としては一つの治療に「1か月」と考えられています。それで効いていないようであれば、追加の治療を行っていくなどの処置が取られます。

なお、生活習慣の改善で症状が良くならない場合には薬物治療が行われることがあります。薬物治療の場合、4~8週間程度投薬を続けた結果、改善すれば治療の継続または終了となります。

5. 薬局で買えるおすすめの薬は?

薬を飲む女性
市販の薬の中で過敏性腸症候群の人におすすめなものとしては、「ストッパ下痢止めEX(ライオン)」が挙げられます。

急な下痢に非常によく効くとされ、いざという時に重宝しますので、普段から持ち歩いておくと安心です。ただし、医療機関にて出されている処方薬がすでにある場合には、医師に相談しておくことをおすすめします。

6. まとめ

男性医師
以上、過敏性腸症候群という病気について、その原因や症状、治療方法を紹介してきました。

過敏性腸症候群は、医療機関にて大腸内視鏡検査を受けることにより、過敏性腸症候群以外の疾患を除外することで診断される病気です。しっかりと診断すれば、いろいろな治療方法がありますので、今まで外出や食事に行くのに不安があった人も生活の質(QOL)を上げることができるようになります。

過敏性腸症候群の疑いがあり、一度も診断を受けたことのない人は、まずは医療機関にて医師の診察や大腸内視鏡検査を受けてみることをおすすめします。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。