内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

タンパク質について楽しく学ぼう!

さてみなさん、三大栄養素と言えば
「糖質(炭水化物)」「脂質」「タンパク質」ですね。
それではこの中で一番大事な栄養素はどれでしょうか?
それは「タンパク質」です。

タンパク質は英語で「proteinプロテイン」と言いますが、この語源は、ギリシャ語の
「proteiosプロティオス」で「最も大切な」「第一の」という意味です。

つまり、それだけタンパク質は大事な栄養素と言うことになります。

おそらく、みなさんもなんとなく「タンパク質」が一番大事な栄養素なんだろうな、と思っているのではないかと思います。

では、なぜこの「タンパク質」が一番重要なのでしょうか?
今回はこの「タンパク質」について解説したいと思います。

1. タンパク質を摂ると体内でどのように消化吸収されるのか?

まず、タンパク質の種類ですが、約10万種類もあると言われています!
このタンパク質を作っている元となっているのが、アミノ酸です。
アミノ酸はわずか20種類しかないんです。このアミノ酸が色んな配列でつながってタンパク質ができています。
つまり、わずか20種類のアミノ酸が色んな配列でつながり、10万種類ものタンパク質を作っているんですね。

そして私たちがタンパク質を摂取すると、胃、十二指腸、小腸でどんどんアミノ酸同士のつなぎ目を切られ、1個のアミノ酸や2〜3個アミノ酸がつながったペプチドといったところまでバラバラにされます。

この、バラバラになったアミノ酸は小腸で吸収され、全身のあらゆる細胞に運ばれます。
それぞれの細胞に運ばれたアミノ酸は、そこでそれぞれ必要なタンパク質に作り変えられるというわけです。

シンプルですけど面白いですよね。
完成しているタンパク質を食べると、体内で一度バラバラにされて、その部品であるアミノ酸を色んな細胞に送り込み、その部品を使ってそれぞれの細胞で必要なタンパク質を作っているというわけです。

ということは、せっかくお肌ツルツルになるためのタンパク質であるコラーゲンを摂っても、体内で一度バラバラに分解されてから吸収されてしまうので、コラーゲンをいくら摂っても大した意味はない、ということになってしまいます。
(最近の研究では意味がないことはないそうですが、ここでは割愛します)

つまり、毎日の食事でタンパク質の摂取量が少なければ、当然ですがそれだけ体を作る部品であるアミノ酸が少なくなってしまいます。
そうなると、体の中のあらゆる細胞やホルモンなどが作られなくなってしまうんですよね。

それでは、体内ではどれくらいのサイクルで細胞が作られるのでしょうか?
解説していきましょう!

2. 体内のターンオーバーについて

私たちの体は、色々な種類の細胞がギュッと集まってできています。
具体的に言うと、私たちの体を作っている細胞の種類は約270種類ほどで、これらが合計約60兆個ほど集まって私たちの体を作っているんです。

そしてこれらの細胞は、絶えず作り替えられています。これをターンオーバーと呼んでいます。
なんならまだ作り替えられたばかりの細胞で特に傷んでもないのに、すぐに新しい細胞に作り替えられている細胞も多々あるんです。

なぜ私たちの体はそんなに絶えず細胞を新しく作り替えるのでしょうか?

個人的な見解ですが、「健康に長生きするため」だと私は思ってます。

いつまでも元気で長生きしたいと思いませんか?
死ぬ直前まで美味しいものを食べたいと思いませんか?

こんな私たちの思いは、我々の細胞レベルにまで届いています。
その思いに応えるために、常にターンオーバーをして細胞を作り替えてるんですね。
(あくまで個人的見解です)

つまり、タンパク質をきちんと摂らないと、細胞がターンオーバーできずに、どんどん老化が早まってしまい、健康寿命も短くなっていしまいます。

そんな体内のターンオーバーですが、臓器により作り替えられる日数が違います。

一番ターンオーバーが速いのはどの臓器かご存知でしょうか?

それは、我々の専門である腸管です。
正確に言うと、胃、小腸の粘膜は3日でターンオーバーが終了して完全に新しく入れ替わります。
大腸の粘膜は10日でターンオーバーが終了して完全に新しく入れ替わります。


ちなみに他の臓器のターンオーバーにかかる日数ですが、

皮膚;1ヶ月
肝臓:1ヶ月
腎臓:1ヶ月
筋肉:2ヶ月
血液:4ヶ月
骨:5ヶ月
です。

これらから考えても、胃腸の粘膜がいかに速いスピードで入れ替わっているかが分かりますね。

豆知識として、小腸は3日で細胞が入れ替わってしまうため、がん細胞ができる暇がないので、小腸にがんはできにくいです。
大腸は細胞が入れ替わるのに10日ほどかかってしまうのですが、小腸と比べ7日ほど時間が遅いです。この7日の差の分で、大腸がんができてしまいます。

それでは、胃の場合はどうでしょうか。胃も小腸と同じ3日で細胞が入れ替わるのに、日本人は胃がんが非常に多いですよね。

色々と原因がたくさんありますが、一番はヘリコバクター・ピロリ菌の存在です。

ピロリ菌が胃の細胞のアポトーシス(細胞死)を遅らせ、これにより胃の細胞の入れ替わりを極端に遅らせてしまうんですよね。
これにより、ターンオーバーが遅れて胃がんが発症しやすくなってしまうんです。

それでは、なぜ胃腸の細胞はこんな速いスピードで細胞が入れ替わるんでしょうか?
それは、
・食べ物を消化吸収するという生きていく上で最も重要な働きがあること。
・胃酸や腸液が存在しているという過酷な環境に常に晒されており、細胞がすぐに傷みやすいこと。
・外の環境にもさらされているため、常にウイルスや細菌などの感染のリスクがあること。

以上のような理由からだと言われています。

タンパク質は非常にデリケートです。酸化したり、変性したりすると、すぐに機能不全になってしまいます。
このような要因があるから、次々と新しい細胞に入れ替える必要があるんですね。
つまり、私たちの長生きの鍵は「腸」が握っていると考えられます。

3. タンパク質の種類〜動物性と植物性、どっちを食べたらいいの?〜

みなさんもご存知の通り、タンパク質には、肉、魚、卵などに含まれる動物性タンパク質と、大豆、小麦などに含まれる植物性タンパク質があります。
それぞれの特徴をご存知でしょうか?ここでまとめてみたいと思います!

A. タンパク質の消化吸収率が違う!

まずは、タンパク質の消化吸収率が違います。
動物性タンパク質の消化吸収率 約90%
植物性タンパク質の消化吸収率 約80%
と言われており、動物性タンパク質の方が消化吸収率が高いです。
つまり、筋トレ後にプロテインを摂るなら動物性タンパク質が効率的ですね。

B. アミノ酸の吸収スピードが違う!

動物性タンパク質の方がアミノ酸の吸収スピードが速いです。
植物性タンパク質は、ゆっくりと吸収されていきます。
つまり、タンパク質摂取後の血中アミノ酸濃度は、動物性タンパク質で急速に上がります。その代わり、血中濃度の持続時間が短いです。
対して植物性タンパク質は、血中アミノ酸濃度はゆっくりと上がります。植物性タンパク質ほどの血中濃度の上昇はありませんが、ダラダラと長時間持続します。
つまり、植物性タンパク質は夜に摂ると、絶食時間が長い就寝中でも血中アミノ酸濃度が維持され、筋肉の分解を防ぐことができますね。

C. プロテインの合成と分解の比率が違う!

前述したように、我々の体内では、タンパク質をアミノ酸まで解体し、そしてそのアミノ酸を使って細胞を合成しています。
そして、体内でアミノ酸が少なくなってきたら、筋肉を分解してアミノ酸に変換されます。
動物性タンパク質も植物性タンパク質も合成能と分解能を持っているのですが、

動物性タンパク質は、筋肉などの合成を促進する力が強い。
植物性タンパク質は、筋肉などの分解を抑制する力が強い。

と言われています。
ただ、結果的にはどちらのタンパク質も、合成の方が分解よりも多いため、体内での合成が促進されることになります。

その他、動物性タンパク質は必須アミノ酸の含有量が植物性タンパク質よりも多いのが特徴です。
植物性タンパク質は脂質が少なく、脂肪燃焼効果が高いという特徴があります。

4. タンパク質の上手な摂り方

まずはタンパク質を摂る上で、覚えてほしい原則があります。
・タンパク質は食べ溜めができません!
・タンパク質は、1回の食事で少なすぎても多すぎてもダメです!
・動物性と植物性の比率は1:1で摂るのが理想!

1回の食事量でのタンパク質の摂取量の理想は、20g〜30gです。これより少ないとタンパク質合成のスイッチが入りません。多すぎてもある一定以上は合成されません。
つまり、こまめにタンパク質を摂るのが良いです。

また、夕食から朝食までの時間が絶食時間が一番長いため、起床時はタンパク質が枯渇した状態になっています。
一般的に、朝食は少なめに食べる方が多いと思いますので、朝食こそ意識してタンパク質を摂るようにしましょう!

また、動物性と植物性は1:1で摂るのが理想ですが、おすすめは一緒にまとめて摂ることです。
これにより、お互いの長所、短所を補いながら、さらに相乗効果が期待できます。

また、タンパク質を摂取する上で意識してほしいのが、DIAAS(digestible indispensable amino acid score)/消化性必須アミノ酸スコアです。
これは、2013年にFAO(国際連合食糧農業機関)が提唱した、アミノ酸スコアに変わる新しい指標です。
9種類の必須アミノ酸の消化吸収率を含んだ指標になり、数値が高いほど質の良いタンパク質になります。
一般的に、動物性タンパク質の方が、植物性タンパク質よりもDIAAS値は高いです。

5. 毎日食べたい!オススメのタンパク質豊富な食材

それではオススメの食材を、動物性タンパク質と植物性タンパク質に分けて発表します!
ポイントとしては、

・時短で簡単に摂れること
・無理なく毎日摂れること
・腸内環境を良くしてくれること

この3つを考慮して選びました!
タンパク質が豊富な食べ物は沢山ありますが、手軽に美味しく毎日食べられるものをチョイスしています。

動物性タンパク質

・卵・・・1個で約6gのタンパク質。DIAAS 1.15
ビタミンCと食物繊維以外の栄養素を全て含むと言われている完全栄養食品。これを食べずに何を食べるのかというレベル。卵1個で約6gのタンパク質を含んでます。しかも9種類の必須アミノ酸を全て含んでます。
卵1個はそれほど大きくなく、かつ美味しいですし、どんな料理にも使えるという優れもの。毎日でも食べることができますね。
また、卵1個に2μgのビタミンDが含まれています。ビタミンDは大腸ポリープができるのを予防してくれますが、これはサプリメントではなく、食べ物のビタミンDのみが予防できるとのことです。
Total Vitamin D Intake and Risks of Early-Onset Colorectal Cancer and Precursors.
Hanseul Kim et al,Gastroenterology. 2021 Oct;161(4);1208-1217.

オススメの食べ方は、半熟です。半熟が一番タンパク質の吸収率が高いと言われています。


植物性タンパク質

・納豆・・・1パック(50g)で約6gのタンパク質。DIAAS0.90
卵に続き、我々の動画でもよく出てくる食品。たった1パックで6gのタンパク質が摂れます。タンパク質だけでなく、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランスよく含み、さらには納豆菌も入っており、腸内環境を良くしてくれること間違いなしです。
血液サラサラ作用があるナットウキナーゼを考えると、夕方に食べるのがベストと言われていますが、私は別にいつ食べても良いかなと思ってます。


ちなみに、卵1個と納豆1パックで動物性タンパク質:植物性タンパク質=1:1が摂れ、2つ一緒にとればこれだけで合計12gものタンパク質が摂れます。

半熟の納豆オムレツなんか最高ですね。温泉卵と納豆を混ぜて食べても良いのではないかと思います。

いかがだったでしょうか?
タンパク質の重要性がよく分かるように解説しました。
普段からタンパク質を摂り、健康に過ごしましょう。
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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。