内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

細胞が若返る「サーチュイン遺伝子」「オートファジー」について胃腸のプロが詳しく解説!

人生100年とも言われる現代では、長寿を目指してさまざまな老化予防に取り組んでいる人も多いと思います。そのような取り組みをするなかで、「サーチュイン遺伝子」「オートファジー」という言葉を耳にしたことがある人も多いと思います。

サーチュイン遺伝子やオートファジーは、老化を防ぐメカニズムとして最近注目されているものの、詳しい内容については知らない人も多いのではないでしょうか?

今回は、老化を止める鍵とも言われるサーチュイン遺伝子やオートファジーについて詳しく解説していきます。

1. サーチュイン遺伝子とは?

高齢の夫婦
サーチュイン遺伝子は日本語では「長寿遺伝子」「抗老化遺伝子」と言われています。このサーチュイン遺伝子は、2000年にマサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ教授と今井眞一郎氏によって発見されたもので、細胞の老化や寿命に深く関与する一群の遺伝子とされています。

そもそも、サーチュイン(Sirtuin)とは、細胞の老化や代謝、ストレス応答に関与するタンパク質を指します。正式には「サーチュイン遺伝子群」と呼ばれ、主にNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を補因子として機能する酵素です。脱アセチル化酵素として働き、特定のタンパク質からアセチル基を除去することで、その活性や機能を調節します。

ちなみに、サーチュイン遺伝子群にはSIRT1~SIRT7の7種類があり、「サーチュインファミリー」と呼ばれています。

サーチュインファミリー一覧

サーチュインファミリー一覧

1-1. サーチュイン遺伝子の役割とは?

サーチュイン遺伝子には以下のような重要な役割があると言われています。

1-1-1. 老化の抑制

サーチュイン遺伝子は細胞の老化プロセスを遅延させる働きがあり、寿命の延長に寄与する可能性があります。特にカロリー制限がサーチュインの活性を高めることが研究で示されています。

1-1-2. DNAの修復

サーチュイン遺伝子は、損傷したDNAの修復を促進してゲノムの安定性を維持すると言われています。このことによって、がんやその他の遺伝子関連疾患リスクを低減する可能性があるとされています。

1-1-3. 代謝抑制

サーチュイン遺伝子は、エネルギー代謝や脂質代謝を調整し、糖尿病や肥満などの代謝疾患の予防に寄与します。

1-1-4. 抗炎症作用

サーチュイン遺伝子は、炎症反応を抑制して慢性炎症性疾患の予防や治療に役立つとも言われています。

1-2. サーチュイン遺伝子については知らないことが多い

長寿遺伝子であるサーチュイン遺伝子が活性化されると寿命が延びると言われていますが、まだ研究段階ということもあってはっきりと分かっていないことが多いです。

現在サーチュイン遺伝子について分かっていることとして、活性化されるとインスリンの分泌を促して糖代謝を促進するだけでなく、脂肪の代謝も促進させる可能性が高いこと、また神経細胞を保護して記憶や行動を制御したり、オートファジーを活性化させたり、自分の作り替えリペアを活性化するのではないかとも言われています。

1-3. サーチュイン遺伝子の活性化で注目されているNAD

サーチュイン遺伝子を活性化させるためには、カロリー制限やレスベラトロール(赤ワインやブドウの皮などに含まれるポリフェノールの一種)の摂取、NADの増加といったものがあると言われています。

サーチュイン遺伝子の活性化に関わって注目されているNADですが、細胞内のミトコンドリアでエネルギーを生み出すために不可欠な補酵素で、サーチュイン遺伝子の活性化をさせる役割を担っているとされています。しかし、加齢とともに組織内のNAD濃度は減少していくため、NADを増加させることができればサーチュイン遺伝子を活性化させ、老化の進行を遅らせるのではないかと期待がされています。

ちなみに、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)というビタミンB3の一種である物質を摂取すると体内で細胞のエネルギーとなるNADに作り替えられます。サプリメントなどでこのNMNを摂取することで、サーチュイン遺伝子を活性化させて若返りが期待できるのではないかとも言われています。

2. オートファジーとは?

味噌汁を飲む若い女性
老化防止のメカニズムとして、サーチュイン遺伝子と同様によく耳にする言葉に「オートファジー」があります。

オートファジーとは、細胞が自身の不要な部分や損傷を受けた構造物を分解または再利用する細胞内の浄化・リサイクルシステムです。オートファジーは、ギリシャ語の「自己」を意味する「auto」と「食べる」を意味する「phagein」に由来しており、別名「自食作用」とも言われています。その名の通り細胞が自らの構成要素を「食べる」ことでリサイクルする機能です。

このオートファジーは、細胞の恒常性を維持しストレスや栄養不足といった環境変化に適応するためには不可欠な作用と言われています。オートファジーを車の部品で例えると、常に少しずつ新しい部品に交換して、新車の状態を保つイメージだと思ってください。

しかし、オートファジーは加齢とともに機能が低下してしまうため、自分で細胞のリサイクルができなくなってしまいます。そうなると、当然体内の細胞が新品の状態を保てなくなってしまうため老化の原因となってしまうのです。

2-1. オートファジーの活性化を促すには?

老化予防のためには、オートファジーの活性化は不可欠だと言われていますが、実際にオートファジーの活性化を促すには、カロリー制限や適度な運動、薬剤投与などを行うことが必要ではないかと言われています。それによって、オートファジーを通じ細胞の健康を促進し、老化や関連する疾患のリスクを低減する可能性があります。

3. サーチュイン遺伝子とオートファジーの相乗効果は期待できる?

ストレッチをする高齢者
サーチュイン遺伝子とオートファジーは、細胞の健康維持や老化防止において強く関連し、相乗効果を発揮することが知られています。

サーチュイン遺伝子の中でも特にSIRT1は、オートファジーの誘導に重要な役割を果たすとされています。SIRT1は、NAD依存性の脱アセチル化酵素として機能し、細胞内のタンパク質や転写因子を脱アセチル化することでオートファジー関連遺伝子の発現を促進し、これにより細胞内の不要なタンパク質や損傷したミトコンドリアが効率的に分解かつ再利用されるプロセスが活性化すると言われています。

サーチュイン遺伝子とオートファジーの相乗効果は、細胞の若返りや加齢関連疾患の予防において大きな可能性を秘めているといっても過言ではありません。

4. まとめ

医者たち
以上、老化を防止し細胞を若返らせると言われるサーチュイン遺伝子、オートファジーについてまとめました。

サーチュイン遺伝子は、老化や寿命延長が期待されているものの、現在はまだ研究段階ということもあり、そのメカニズム解明は次々と明らかになりつつありますが多くの課題がまだまだ山積み状態です。ただし今後、研究の進展次第では健康寿命の延伸やアンチエイジング医療の新たな道が開かれるかもしれません。

いつまでも若々しく健康でいるためには、サーチュイン遺伝子やオートファジーを積極的に活性化させるライフスタイルを取り入れることが大切です。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。