こんにちは。福岡天神内視鏡クリニック消化器福岡博多院の医師の細川です。
前回は、初回のコラムとして「胃カメラ検査ってどんな検査なのか」について皆さんにお伝えしました。
胃カメラ検査は、口や鼻からカメラ(内視鏡)を入れて、食道・胃・十二指腸を観察してこれらの臓器に何か異常がないかを調べる検査です。胃カメラ検査にかかる時間は、一般的には約5~10分です。
胃カメラ検査では食道・胃・十二指腸の中を観察するだけでなく、検査時に病気を疑う異常(粘膜異常やポリープなどが)あった場合は、鉗子(かんし)という器具で異常のある部位の組織を採取し、顕微鏡による病理組織検査で詳しく調べることも可能です。細胞レベルで異常がないかを詳細に調べることも可能です。
そこで、今回は、「どんな人に胃カメラ検査を受けて欲しいか」「胃カメラ検査ではどんな病気が分かるのか」について簡単にお話ししたいと思います。
5.胃カメラ検査(胃内視鏡検査)で分かる病気について
- 胃の病気について
- 食道の病気について
- 十二指腸の病気について
このような症状は、咽頭や喉頭・食道に異常があるときに出やすい症状です。のどや食道の知覚過敏や胃酸の逆流による症状の可能性もありますが、咽頭がんや食道がんが症状の原因となっていることもあります。症状が続く場合は、自己判断で様子を見ずに胃カメラ検査でしっかりと調べましょう。
このような症状は、胃酸が食道に逆流するときに出やすい症状です。症状が続く場合は、逆流性食道炎だろうと胃薬を服用し自己判断で様子を見るのは止めましょう。なぜ食道に胃酸が逆流しやすくなっているのかを胃カメラ検査でしっかり調べましょう。胃がんなどが原因で胃酸が食道に逆流しやすくなっていることもあります。
このような症状は、胃炎や胃潰瘍など胃に病気がある場合に出やすい症状です。良性の病気だけでなく、胃がんなどが症状の原因となっていることもあります。症状が続く場合は、胃薬を服用し自己判断で様子を見るのではなく、胃カメラ検査で症状の原因となる病気が隠れていないかしっかり調べましょう。
このような症状は、胃炎や胃潰瘍などの胃の良性の病気だけでなく、食道がん、胃がん、十二指腸がんなどが原因となっていることもあります。症状が続く場合は、胃薬を服用し自己判断で様子を見るのではなく、胃カメラ検査で症状の原因となる病気が隠れていないかしっかり調べましょう。
黒い便がでる、吐いた物が黒かった・血が混ざっていた
このような症状は、食道や胃、十二指腸から出血が起こった場合にみられる症状です。胃炎や胃潰瘍などの胃の良性の病気だけでなく、食道がん、胃がん、十二指腸がんなどが原因となっていることもあります。
1回でもこれらの症状があった場合は、様子を見るのではなく、必ず胃カメラ検査で症状の原因となる病気が隠れていないかしっかり調べましょう。
胃レントゲン検査異常は、胃炎や胃潰瘍などの胃の良性の病気だけでなく、胃がんが原因となっていることもあります。二次検診として、必ず胃カメラ検査で検診異常の原因となる病気が隠れていないかしっかり調べましょう。
検診異常(血清ヘリコバクター・ピロリ抗体陽性、ペプシノーゲン検査異常、胃がんリスク検査(ABC検診)異常)
これらの検診異常は、胃がんのリスクを高めるヘリコバクター・ピロリ菌感染の可能性を疑う異常です。胃がんの90%以上はヘリコバクター・ピロリ菌感染が原因とされています。
これらの検診異常を指摘された場合は、必ず胃カメラ検査を受けて、胃にがんが隠れていないかしっかり調べましょう。また、ピロリ菌感染があるかも調べ、感染している場合は、将来の胃がんのリスクを下げるために除菌治療を行いましょう。
過去にヘリコバクター・ピロリ菌除菌をしたことがある方
ヘリコバクター・ピロリ菌の持続感染により胃に長期間にわたり炎症が続くと徐々に胃の粘膜が薄くなり萎縮性胃炎を来たします。最近の研究によりピロリ菌感染の影響で萎縮性胃炎を来すと年齢とともに胃がんの発生リスクが増加することが報告されています。ピロリ菌除菌後も萎縮性胃炎は残存するため、胃癌のリスクは低下はするものの高い状況が残ります。
過去にピロリ菌感染を指摘されたことがある方は、必ず1年に1回胃カメラ検査を受けましょう。
20歳以上で上記①~⑤に当てはまる症状がある方は、将来の胃癌のリスクになるヘリコバクター・ピロリ菌感染を起こしている可能性があります。
ピロリ菌感染を起こしている場合、年齢が若いうちに除菌治療が出来れば出来るほど将来の胃癌のリスクが低くなります。
年齢が若くても上記①~⑤に当てはまる症状がある方は、胃カメラ検査を受けて、胃の症状の原因とピロリ菌感染の有無を調べましょう。感染している場合は、将来の胃がんのリスクを下げるために除菌治療を行いましょう。
ヘリコバクター・ピロリ菌感染は起こしていても胃の不調な症状を起こす人の方が少なく、ピロリ菌感染を起こしていても多くの人は症状がありません。このため、検査を行わなければ、自分がピロリ菌感染を起こしていることに気付くこともなく、萎縮性胃炎が進行し加齢とともに胃癌のリスクが高まります。これを防ぐためにも胃の症状の有無にかかわらず30歳を目途に一度は胃カメラ検査を受けてピロリ菌感染や萎縮性胃炎の有無を調べましょう。
以前に胃カメラ検査を受けたことがあるが、2年以上胃カメラ検査を受けていない方
胃癌の多くは、ヘリコバクター・ピロリ菌感染が原因と考えられていますが、ピロリ菌感染に関係のない胃癌も存在します。これらの胃癌も含めて早期発見・早期治療するためには1.5〜2年毎に胃カメラ検査を受けるのが望ましいと考えております。
胃は大まかに次の部位に分けることができます。
食道と胃のつなぎ目(胃の入り口にあたる場所です)
胃の上部
胃の下側にあたる大きくカーブした部分
胃の上側にあたる小さくカーブした部分
胃体部小彎側の折れ曲りの支点になる部分
胃と十二指腸のつなぎ目(胃の出口にあたる場所です)
食道は大まかに次の部位に分けることができます。
食道入口部から胸骨上縁までの部分
胸骨上縁から気管分岐部下縁までの部分
気管分岐部下縁から食道胃接合部までを2等分した上半分の部分
気管分岐部下縁から食道胃接合部までを2等分した下半分の部分
食道裂孔上縁から食道胃接合部までの部分
十二指腸は大まかに次の部位に分けることができます。
十二指腸上部の起始部
十二指腸球部から下行脚へとつづく折れ曲がりの部分
十二指腸角から空腸の間の部分
胆汁の通り道である総胆管と膵液の通り道である主膵管が十二指腸に開口する部分
胃カメラ検査では次のような病気を見つけることが出来ます。
胃がんは胃の表面から発生し、進行すると粘膜の下に浸潤していきますが、早期胃がんはがん細胞の浸潤が胃粘膜の表面近くでとどまっているものです。早期胃がんの状態で発見できれば、外科手術ではなく内視鏡手術で完治できる可能性があります。
しかし、早期胃がんは基本的に自覚症状が無く、進行癌でも症状がないことも多くあります。症状の有無にかかわらず一度は胃カメラ検査を受け、その後は定期的に検査することをお勧め致します。
がん細が胃壁の筋層より深く浸潤した胃がんが進行胃がんです。胃がんは粘膜の下に深く浸潤すればするほど、転移を起こす確率が高くなり治癒を目指すのが難しくなります。
胃がんは、食事が通過できない状態になるぐらいまで進行しないと自覚症状が出現しにくい病気です。しかし、早期胃がんの状態で見つかれば完治を目指すことが可能です。症状の有無にかかわらず一度は胃カメラ検査を受け、その後は定期的に検査することをお勧め致します。
スキルス胃がんは悪性度が高く進行が非常に早い胃がんです。
スキルス胃がんはがん細胞がバラバラになって胃の粘膜下を広がっていくため、がん自体が粘膜表面に現れにくく早期発見が難しい胃がんです。
比較的若い年齢で発症しやすく、特に30~50歳代の女性に発症しやすいと言われています。進行が非常に早く、転移も起こしやすいため、発見時には既に治療できないことも多いがんです。
症状の有無にかかわらず一度は胃カメラ検査を受け、その後は定期的に検査することで早期発見出来る可能性が高くなります。
悪性リンパ腫は血液細胞に由来するがんですが、ピロリ菌感染に関連し胃に発症することがあります。
胃悪性リンパ腫は進行するまで自覚症状が出にくいため、早期発見するためには症状の有無にかかわらず一度は胃カメラ検査を受け、その後は定期的に検査することが大切です。
胃の粘膜表面から発生する良性の腫瘍ですが、将来がん化する可能性がある前がん病変です。
見つけた場合は、定期的に内視鏡検査でフォローアップすることもありますが、将来の胃がんのリスクを取り除くために見つけた時点で内視鏡手術を行うこともあります。
ピロリ菌感染やNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と呼ばれる痛み止めの常用などが原因で胃や十二指腸の粘膜に傷がつき、その傷が粘膜の下まで深く及んだものです。
みぞおちの辺りの鈍い痛みや腹部膨満感などの症状が出現しますが、約50%は無症状と言われています。症状の有無にかかわらず一度は胃カメラ検査を受け、ピロリ菌の有無を調べておくことをお勧め致します。
ウイルス性肝炎などの肝障害が進行し肝硬変になると、食道や胃の静脈が風船の様に膨らみ食道・胃静脈瘤を形成することがあります。
食道・胃静脈瘤は大きくなると破裂する可能性があるため、ウイルス性肝炎などの肝障害がある方は少なくとも1年に1回の胃カメラ検査を受けましょう。
胃の粘膜より下にある深い層から発生する腫瘍が胃粘膜下腫瘍です。
胃粘膜下腫瘍は良性のものもあれば、胃GIST(Gatrointestinal Stromal Tumor:消化管間質腫瘍)などの悪性腫瘍の場合があります。腫瘍のサイズや形態によって経過観察をするか、治療を行うかが決まります。
様々な原因で胃酸が出過ぎたため、胃粘膜に炎症が起こり生じる胃炎です。胃カメラ検査では、胃粘膜に赤い線状の炎症として認めます。
ストレスや暴飲暴食が続くと胃痛や胃もたれなどの胃の不快な症状が出現します。生活習慣や食生活の見直しが必要です。
ヘリコバクター・ピロリ菌の持続感染により胃の粘膜が薄くなる胃炎です。ピロリ菌感染により萎縮性胃炎をきたすと年齢とともに胃がんの発生リスクが増加します。
萎縮性胃炎が更に進行すると、胃粘膜が腸の粘膜に置き換わる腸上皮化生を起こします。腸上皮化生は、非常に胃がんの発がんリスクが高い状態です。
胃カメラ検査をした際に萎縮性胃炎を認めた場合は、現在もヘリコバクター・ピロリ菌感染が継続しているかどうかを調べるために迅速ウレアーゼ試験などで感染の有無を調べます。現在も感染が継続している場合は、除菌治療が必要です。
症状の有無にかかわらず若いうちから一度は胃カメラ検査を行い、「萎縮性胃炎や腸上皮化生の有無やその進行の程度」から将来の胃がんのリスクを把握することが大切です。
胃の前庭部(胃の出口あたり)の粘膜に鳥肌の様に表面が隆起した変化を起こす胃炎が鳥肌胃炎です。ピロリ菌感染に対して身体の免疫応答が過剰に反応し起こる胃炎です。
鳥肌胃炎は悪性度が高く進行の早い未分化型胃がんのリスクが非常に高くなります。症状の有無にかかわらず若いうちから一度は胃カメラ検査を行い、ピロリ菌感染がないかをしっかりと診断しましょう。
胃の壁の一部が外側に向かって飛び出たくぼみが胃憩室です。胃の筋肉の層が薄くなっているところに力が加わり続けることで出来るくぼみで特に治療は不要です。
アニサキスは寄生虫の一種で、サバやアジ、イカなどの魚介類を生で食べることで人の胃に感染します。原因となる魚介類を食べた数時間後に突然、みぞおちの辺りに激しい腹痛が出現し、吐き気などの強い症状が出現します。治療は胃カメラ検査で胃壁に感染しているアニサキスを取り除きます。
ピロリ菌感染のない胃にみられる良性のポリープです。がん化のリスクは極めて少なく、基本的には治療は不要です。自然に小さくなり消えて無くなることもあります
ヘリコバクター・ピロリ菌感染により胃粘膜の萎縮(老化)がある胃で発生しやすいと言われている基本的には良性のポリープです。病理組織学的には、腺窩上皮の過形成性変化が主に認められ、粘膜固有層に炎症細胞の浸潤を認める炎症性ポリープの一種です。
自然経過では、ポリープのサイズは不変または増大することが多く、自然消失するものはほとんどありませんが、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療後に縮小したり消失することが多いポリープです。
早期の食道がんは、ほぼ自覚症状はなく、進行がんになると食道の管腔が腫瘍で塞がれるため、胸がつかえるような症状が出現します。
食道がんは、早期からリンパ節や他臓器に転移しやすいため、胃カメラ検査で早期発見し、早期治療するのが大切です。飲酒や喫煙をする方は、症状の有無にかかわらず一度は胃カメラ検査を受け、その後は定期的に検査することをお勧め致します。
内臓脂肪の増加や年齢とともに食道と胃のつなぎ目の筋肉が緩み食道裂孔ヘルニアを起こすと胃酸が食道に逆流しやすくなり逆流性食道炎を起こします。胸やけ、胃痛、胃もたれ、嘔気・嘔吐、つかえ感、のどの違和感など様々な症状の原因となります。
十二指腸は胃や大腸と比べるとがんが出来にくいため十二指腸がんは稀な病気です。胃カメラ検査での早期発見が大切です。
如何だったでしょうか?
胃カメラ検査はどんな人が受けた方が良いのか?、胃カメラ検査ではどんな病気が分かるのかについてイメージするのに役立ったでしょうか?
ご不明な点があれば、クリニックに一度ご相談下さい。
この記事を書いた人
秋山 祖久医師
国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。