こんにちは。福岡天神内視鏡クリニック消化器福岡博多院の医師の細川です。
福岡天神内視鏡クリニック消化器福岡博多院では、月に1回内視鏡医が医学知識を皆さんに分かりやすくお伝えするコラム記事を発信することになりました。
そこで、今回は私が担当する第1回目として「胃カメラ検査ってどんな検査なのか」について皆さんにお伝えしたいと思います。
実は、胃カメラ検査は、胃がん検診の検査としては、最近になってようやく受けることが出来るようになった検査だということをご存知ですか?
もちろんこれまでも、人間ドックなどの自費の検査、胃の不調な症状がある方や胃がん検診の胃X線検査で異常を指摘された方の精密検査などの保険診療としての胃カメラ検査は沢山行われています。
しかし、各市町村が費用負担する対策型胃がん検診といえば胃X線検査が中心でした。
ご存知でしたか?
このため、胃がん検診といえば胃X線検査を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
2016年2月に厚生労働省より「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」が通知され、それ以降は胃カメラ検査(胃内視鏡検査)を胃がん検診に導入することが可能になりました。
以前から胃X線検査で発見される胃がんの数は、1年間に発見される胃がんの5%程度に過ぎないと報告されており、実は胃がんの多くは胃カメラ検査で発見されています 。
もちろん、病変によっては胃カメラ検査より胃X線検査の方が発見しやすいものも存在します。しかし、一般的には、自覚症状がない胃がんを早期発見するという点では、胃X線検査よりも胃カメラ検査の方が優れた検査です 。
この理由は、胃カメラ検査は胃X線検査では発見できない胃粘膜の些細な異常も見つけることが可能だからです 。勿論、胃カメラ検査を行う内視鏡医の知識や腕前によって、検査のレベルは大きく異なってしまいますが・・・。
もともと健康意識が非常に高く定期的に人間ドックを受けている方や以前に胃カメラ検査を一度でも受けたことがある方は、定期的に胃カメラ検査を受けることにあまり抵抗感は無いと思います。
しかし、これまでに一度も胃カメラ検査を受けたことがない方や過去に受けた胃カメラ検査が非常にキツくてもう二度と受けたくないとトラウマになっている方は、胃カメラ検査を受けることに対して非常に抵抗感を持っているのではないでしょうか?
そこで、今回は胃カメラ検査について下記の項目について解説したいと思います。
胃カメラ検査(胃内視鏡検査)ってどんな検査ですか?
胃カメラ検査(胃内視鏡検査)はどうしてキツいの? どうすれば楽に受けることが出来るの?
胃カメラ検査(胃内視鏡検査)の実際
胃カメラ検査(胃内視鏡検査)にはリスクはあるの?
胃カメラ検査(胃内視鏡検査)に掛かる費用はどれくらい?
胃カメラ検査(胃内視鏡検査)ってどんな検査ですか?
胃カメラ検査は、口や鼻からカメラ(内視鏡)を入れて、食道・胃・十二指腸を観察してこれらの臓器に何か異常がないかを調べる検査です。
一般的な胃カメラ検査にかかる時間は、約5~10分です。
胃カメラ検査は観察するだけでなく、検査時に粘膜異常やポリープなど病気を疑う異常があった場合は、鉗子(かんし)という器具を使って病気を疑った部位の組織を一部採取することも可能です。 組織を採取すれば、顕微鏡による病理検査まで行うことが出来るため、細胞レベルで異常がないかを詳細に調べることもできます。
口からカメラを入れて観察する胃カメラ検査を経口内視鏡検査 、鼻からカメラを入れて観察する胃カメラ検査を経鼻内視鏡検査 といいます。
経鼻内視鏡検査と経口内視鏡検査の大きな違いは、食道に入るまでにカメラが通る場所が違うという点とカメラ自体の太さが違う点です 。
経鼻内視鏡検査は嘔吐反射を誘発する舌根部を通らず鼻から鼻腔を通って食道にアプローチすることができるため、経口内視鏡検査に比べると検査中にオエッとなりにく胃カメラ検査です。
また、経鼻内視鏡検査に使用するスコープの太さは、直径約5-6mm程度で経口内視鏡検査に使用するスコープの直径約8-9mmと比べると半分ぐらいの太さしかないため、鎮静剤を使用しない場合は 経口内視鏡検査よりも楽に検査を受けることが可能です。
これだけを聞いて、経口内視鏡検査の方が楽そうで良いじゃんと絶対に早合点しないでください 。
一番大切なのは、何のために胃カメラ検査を受けるのか?という点です 。
胃カメラ検査を受ける目的は、「楽に胃カメラ検査を終わらせること」ではありません。
「食道がんや胃がんなどの病気をいかに早く見つけるか」が最も大切な目的です 。
胃がん検診として胃カメラ検査を受ける方の多くは、胃の不調などの自覚症状も無く、胃カメラ検査をしても何も異常が無い方がほとんどです。だから、ついつい検査を楽に終わらせることにばかり意識が向きがちですが、ちょっと待って下さい!!これは大きな間違いです。
繰り返しになりますが、「自覚症状も出ないような初期のがんを見落とすこと無く、早期発見できること」が最も大切です 。
経鼻内視鏡はスコープの直径が細いため、経口内視鏡と比べて高性能で高画質のカメラが搭載できません。もちろん最新鋭の経鼻内視鏡スコープには、経口内視鏡スコープと遜色ない画質のものもありますが、これらのスコープは非常に高価なため、導入している施設はほとんどないというのが現状です。また、経鼻内視鏡スコープには、病変部をズーム観察可能な拡大観察機能も搭載されていないため精密検査には適しません。
このことからも初期の食道がんや胃がんを早期発見するためには、経鼻内視鏡検査では無く、経口内視鏡検査を受けることをオススメします。
福岡天神内視鏡クリニック消化器福岡博多院では、検診の胃カメラでもより詳しく観察が可能な経口内視鏡を用いた胃カメラ検査のみを行っています 。
胃カメラ検査(胃内視鏡検査)はどうしてキツいの? どうすれば楽に受けることが出来るの?
胃カメラ検査がキツくなる一番の理由は、検査中に起こる咽頭反射が原因 です。
咽頭反射は歯を磨くときに歯ブラシがのどに当たったときなどに起こる反射をイメージすると分かりやすいと思います。
胃カメラ検査では、胃カメラがのどを通るときに舌根部(舌の付け根部分)に当たってしまうと、オエッとなる咽頭反射が出現します 。一度、この反射が出現すると検査中ずっと継続してしまうため、「胃カメラ検査=キツい検査」となってしまいます。特に、年齢が若い人ほど、反射が強く出やすいため、キツい検査となる可能性が高くなります 。
では、どうすれば咽頭反射を起こすこと無く、楽に検査を受けることが出来るのでしょうか?
その答えは、「鎮静剤を使用した胃カメラ検査を受けること 」です。
鎮静剤を使用すると、咽頭反射が抑えられるため、身体への負担が非常に少なくなります。また、鎮静剤を使用すると眠っている間に検査が出来るため、苦しみや痛みも無く検査を終えることが可能という点もメリット です。
福岡天神内視鏡クリニック消化器福岡博多院では、保険診療、自費診療を問わず、胃カメラ検査は全例で鎮静剤を使用した検査を行っています。
検査室入室後は、検査ベッドに腰掛け、まずはコップ1杯の水を飲みます。この水はガスコン水といいます。胃の中の泡や粘液を取り除き、胃を綺麗にして観察しやすくする水です。
水を飲んだ後は、検査ベッドに仰向け(上向き)に寝ます。
その後、血圧を測定します。血圧が問題なければ、のどにスプレー麻酔をします。このスプレー麻酔はキシロカインスプレーといいます。歯医者などでも使用する局所麻酔薬で、のどの感覚を麻痺させて嘔吐反射を抑えます。麻酔によりのどの感覚が麻痺するため、少し腫れぼったい感覚になります。
スプレー麻酔後は、マウスピースをくわえ、身体の向きを左向き横向きに変えます。
検査開始直前に鎮静剤を注射し、少しずつウトウトし始めたところで胃カメラ検査を開始します。
胃カメラが舌根部に触れて嘔吐反射を誘発しないように気を付けながら、食道にスコープを挿入します。
食道に異常が無いか観察しながら、食道胃接合部(食道と胃のつなぎ目)までスコープを進めます。
胃内にスコープを入れたら、ガスコン水だけでは取り除けなかった泡や粘液を水で洗い落として胃を綺麗にしながら、胃の出口に向かって胃内を詳細に観察しながら、スコープを進めます。
胃の出口からスコープを十二指腸に進め、十二指腸下行部まで観察します。
十二指腸下行部まで観察後は、スコープを胃内に戻して、胃の入り口に向かって再度、胃内を詳細に観察します。
胃内を観察した後は、カメラを抜きながら、再度、食道を観察し、検査を終了します。この時は、特殊光観察で食道を観察します。特にオリンパス社製の胃カメラにはNBI(Narrow Band Imaging)という狭帯域光観察モードというものが搭載されていますが、NBIで食道を観察すると非常に高い精度で早期の食道がんも発見が可能です。 福岡天神内視鏡クリニック消化器福岡博多院では、狭帯域光観察モードだけでなく、より高精度にがんを診断可能な表面構造を拡大してみることができる拡大観察機能も備えた最新鋭のオリンパス社製の胃カメラスコープを用いています。
胃カメラ検査の検査時間は約5-10分です。検査が終わった後は、マウスピースを外し、完全に目が覚めるまでリカバリー室で休みます。
【狭帯域光観察って何だろう?】
私たちが普段見ている様々な物の色は、実は赤、青、緑の3色が基本となり、この3色の組み合わせで作り出されています。この3色は「光の三原色」と呼ばれ、目に見える光の最も基本の色です。
赤いリンゴを赤と認識できるのは、何故かご存知ですか?
光の三原色からなる自然光が赤いリンゴにあたった場合、青と緑の光はリンゴに吸収されますが、赤い光はリンゴに吸収されず反射し、赤だけが見ている人の目に返ってくるため、そのリンゴは赤いと認識することになります。
では、赤いリンゴに赤を抜いた光を当てた場合どうなるか分かりますか?
青と緑の光は変わらずリンゴに吸収されますが、赤い光がないため、リンゴは反射する光が無いため、見ている人は黒として認識することになります。
この理屈を利用したのが、胃カメラ検査の狭帯域光観察(NBI)モードです。狭帯域光観察(NBI)モードでは、赤を含まない光を照射して観察するため、血管が黒く観察されます 。
がんの部分は正常部分と比べて、栄養を集めるために血管が異常に増殖しています。このため、狭帯域光観察(NBI)モードで食道を観察すると、異常血管があった場合、その部分が黒く認識されるため、食道がんを見つけやすくなります 。ちなみに狭帯域光観察(NBI)モードで観察すると正常な食道粘膜は青緑色に見えます。
図2.食道がんの画像(NBI:狭帯域光モード観察)
正常な部分と食道がんの部分の粘膜の色調の違いがしっかり視認可能です
胃カメラ検査(胃内視鏡検査)にはリスク(偶発症)はあるの?
胃カメラ検査は、基本的には安全に受けて頂ける検査ですが、ごく稀に検査に伴うリスク(偶発症)を起こすことがあります。
胃カメラ検査に伴う偶発症は、大きく次の3つに分けることが出来ます。
咽頭反射を抑えるための局所麻酔薬のスプレーによるアレルギー
局所麻酔薬のキシロカインスプレーは、稀にアレルギーを起こす方がいます。ひどい場合にはアナフィラキシーショックを起こすことがあります。
過去の報告では、局所麻酔薬に伴う偶発症の発生頻度は0.0046%(2万2千人に1人)と報告されています。
過去に歯医者の麻酔で気分不良などを起こしたことがある場合は、必ず検査前に申し出て下さい 。
胃カメラの挿入・観察・生検による組織検査で出血・穿孔のリスクがあります。
過去の報告では、胃カメラ検査に伴う偶発症の発生頻度は0.005%(2万人に1人)と報告されています。
鎮静薬はクスリです。全てのクスリには可能性は低くても副作用が起こるリスクがあります。鎮静剤で起こりえる副作用としてはアレルギーや血圧低下、呼吸抑制などがあります 。
過去の報告では、鎮静薬に伴う偶発症の発生頻度は0.02%(5千人に1人)と報告されています。
これらのリスクの可能性を事前に把握するため、事前診察時にクスリや食べ物でのアレルギー歴や基礎疾患、既往歴などを確認させて頂きます。
胃カメラ検査(胃内視鏡検査)に掛かる費用はどれくらい?
福岡天神内視鏡クリニック消化器福岡博多院では、自費の胃カメラ検査と保険診療での胃カメラ検査を行っています。
自費の検査の場合は、同じ日に大腸カメラを受けることが出来る同日内視鏡ドックをオススメしています。
同日内視鏡ドックの詳細はこちらを見て下さい。
また、保険診療での胃カメラ検査の場合は、厚生労働省の設定した保険点数に基づいた全国一律の料金です。
自己負担額の割合や検査内容(観察のみなのか、生検まで施行したのかなど)により料金は変わります。
保険診療の胃カメラ検査の詳細はこちらを見て下さい。
如何だったでしょうか?
胃カメラ検査がどんな検査かイメージするのに役立ったでしょうか?
次回は、どんな人に胃カメラ検査を受けて欲しいか、胃カメラ検査でどんな病気が分かるかなどについてお話ししたいと思います。
ご不明な点があれば、クリニックに一度ご相談下さい。
この記事を書いた人
秋山 祖久 医師
国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。