整腸剤って便秘に効くの?服用のポイントと便秘薬との違い
みなさんはどのようなときに整腸剤を飲みますか?
整腸剤と聞くと下痢のときに飲むものと思われる方も多いと思いますが、整腸剤は便秘解消にも効果があります。
しかし便秘に悩む方の中には、整腸剤を飲んでも効果を感じられないという方もいるのではないでしょうか。
便秘になるとお腹が張ったり肌荒れを起こしたり、体にさまざまな影響を与えることがあります。
便秘改善のために便秘薬を服用する方も多いと思いますが、根本から便秘を改善するためには整腸剤を飲むことをおすすめします。
整腸剤は正しい飲み方をすることで、便秘の予防や改善の他、体にとってよい効果を得ることができると考えられています。
今回は整腸剤の特徴と便秘解消に整腸剤をおすすめする理由についてご紹介します。
一般的に、日本人の14%が便秘であるという報告がありますが、実際の臨床の現場では、もっと多い印象です。
つい最近まで、便秘についてはこれといった定義はありませんでしたが
2017年に日本消化器病学会関連研究会である慢性便秘の診断・治療研究会が慢性便秘症診療ガイドライン2017を取りまとめました。
ガイドラインによると、
「便秘」・・・便がしっかり快適に排便出来ない状態のこと
「便秘症」・・便秘のためにお腹の様々な不快な症状が出現し、医学的にその原因を調べるための検査や治療介入が必要な状態のこと
とそれぞれ分けて定義されています。
排便は1日1~2回あるといわれていますが、2~3日に1回であっても排便状態に異常がなく本人が苦痛を感じていない場合は便秘とはいいません。
一方、毎日排便があっても便が硬くて量が少なく残便感があったり、お腹に不快な症状が出現すれば、それは「便秘」であり「便秘症」なのです。
整腸剤とは腸内環境を整える薬です。整腸剤の種類によって配合されている成分は異なりますが、その主成分は人間の腸由来の菌です。
整腸剤に配合される主な菌は以下のものです。
・ビフィズス菌
・乳酸菌
・納豆菌
・酪酸菌
・糖化菌
整腸剤を服用することで便秘を解消することができます。しかし正しい飲み方をしていなければ、その効果を感じることができないこともあります。
腸内には多種多様な細菌が生息しており、その種類は1,000種類、数は100兆個といわれています。これらの細菌がバランスをとりながら腸内環境を整えています。
腸内細菌は「善玉菌」「日和見菌」「悪玉菌」の3つに分けることができ、その中でも日和見菌は腸内で優勢の方に傾くため、善玉菌が優勢となるように腸内環境を整えることが大切です。
腸内環境が乱れる原因はさまざまですが、悪玉菌は脂質や動物性タンパク質を好むため、肉類中心の食事をしていると悪玉菌が増えてしまいます。
その他にも加齢やストレスも腸内環境を悪化させる原因となります。
整腸剤には善玉菌のエサになる菌や悪玉菌の増殖を抑える菌などが配合されているため、整腸剤を服用することで腸内環境が改善し、善玉菌優位となります。
また、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌は、腸の中で糖を分解し「乳酸」や「酢酸」を産生し、腸の中を酸性に傾けます。
酸性は悪玉菌が最も嫌う環境であり、これにより悪玉菌の繁殖を抑えます。
また、これら「乳酸」や「酢酸」は腸の蠕動運動も亢進させます。
以上より、便秘を改善させる効果があります。
整腸剤の服用のポイントをまとめると以下の3つになります。
整腸剤には即効性はありません。数日服用し変化がないからと服用を中止してしまうと、整腸剤の効果を得ることができません。
整腸剤はゆるやかに効果を発揮するため、毎日コツコツと飲み続けることが大切です。
整腸剤を飲むタイミングは、胃酸が薄まる食後がおすすめと一般に言われていますが、実は食前、食後いつ飲んでも、ほとんどの菌は胃酸で死んでしまいます。
ですので、いつでも好きなタイミングで飲んで大丈夫です。
また整腸剤にはさまざまな種類があるため、自分に合った整腸剤を飲むことが大切です。
まずは4週間ほど同じ整腸剤を飲み続け、効果が感じられない場合は、自分に合っていない可能性もあるため、違う種類の生菌が配合されている整腸剤を試してみましょう。
便秘をしたときに服用する薬といえば、便秘薬をイメージされる方も多いと思います。
整腸剤も便秘薬も便秘を改善するためのものですが、この2つには大きな違いがあります。
整腸剤は腸内環境を整え便秘を改善していきます。つまり便秘の根本的な原因にアプローチするといえるでしょう。
一方、便秘薬は腸内環境にアプローチするのではなく、薬の力で強制的に排便させるものです。
一度排便しても腸内環境が改善されるわけではないため、繰り返し便秘になる可能性があります。
医療機関を受診すると整腸剤を処方されることがあります。整腸剤の種類は数多くあります。主なものは以下です。
・ラックビー
・ビオフェルミン
・ミヤBM
・ビオスリー
・エンテロノンR
整腸剤はドラッグストアなどでも購入することができます。市販されている整腸剤にはさまざまな種類があり、配合されている生菌も種類によって異なります。
処方薬と市販薬の違いは大きく2つあります。
一つ目は生菌の配合量です。
一般的に処方薬の方が市販薬よりも多く生菌が配合されています。
二つ目は処方薬には生菌だけが配合されているのに対して、市販薬は生菌以外にも胃酸を抑える成分などが一緒に配合されていることです。
整腸剤の効果は便秘や下痢の改善だけではありません。
自分に合った整腸剤を毎日続けて飲むことで、体によい効果があります。
人の体には外から入ってきた病原菌を排除するシステムが備わっています。
感染源となるウイルスや病原菌から体を守る免疫細胞の約70%が腸にあるといわれており、これを「腸管免疫」といいます。
腸内細菌は腸内環境を左右するだけではなく、腸内の免疫細胞のトレーニング相手になる役割を持っています。
悪玉菌が優勢な腸内環境では腸管免疫の働きが低下してしまうため、整腸剤を飲んで腸内環境を整えることで免疫力が向上し風邪やインフルエンザ・大腸がんにもかかりにくくなるといわれています。
整腸剤を飲んで腸管免疫が正常に働くことで、アレルギー疾患を抑制することができます。
腸内の悪玉菌が増殖し腸管免疫の働きが低下すると、腸壁が損傷してしまうことがあります。
損傷した腸壁から本来吸収されないはずの物質が血液に入り込むと体は異物と認識し、さまざまなアレルギー疾患を引き起こします。
アレルギー疾患がある方はとくに、日頃から腸内環境を整えておくことが大切です。
8-3. エイジングケア・美肌効果もあるといわれている
腸内環境が乱れると栄養分をうまく分解できず腸内で腐敗し、有害物質が排出されます。
そうなると腸内にガスがたまったり便秘になったりすることで、肌に十分な栄養が行き届かずニキビなどの肌トラブルを引き起こしてしまいます。
「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンは、約90%以上が腸内で作られています。
腸内環境が整っているほどセロトニンをうまく作り出すことができるため、整腸剤を飲むことでセロトニンの増加へとつながります。
便秘を改善するためには整腸剤の服用に加えて食生活を見直しましょう。
また腸の働きをコントロールしている自律神経を整えるためには、生活習慣を見直すことが大切です。
肉類や魚介類・卵・乳製品などに含まれている動物性タンパク質や脂質の多い食事は、悪玉菌の増殖を引き起こします。
だからといってまったく食べないというのも、体にはよくありません。大切なことは栄養バランスのよい食事です。とくに便秘改善のためのポイントは善玉菌のエサとなるものを積極的にとることです。
整腸剤の他にも発酵食品には善玉菌が多く含まれているため、それらにプラスして善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖などを組み合わせるようにしましょう。
・発酵食品:ヨーグルト・ぬか漬け・納豆・キムチ・味噌・チーズ
・食物繊維を多く含む食品:ゴボウ・ニンジン・オクラ・ブロッコリー・ホウレンソ ウ・豆類・海藻・きのこ類・果物
・オリゴ糖を多く含む食品:タマネギ・ゴボウ・ネギ・ニンニク・アスパラガス・バナナ・豆類
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があります。
交感神経が優位になると体は緊張状態となるため、腸の動きが弱くなります。そのためリラックスした状態でできるウォーキングや軽いジョギングがおすすめです。
質のよい睡眠をとることで副交感神経が働き、腸の運動が活発になります。
質のよい睡眠をとるためには、寝る前からリラックスした状態でいることが大切です。
アルコールや食べ過ぎなどは腸への負担が大きくなるため、寝る2時間前までに夕食を済ませておきましょう。
多くの方が悩む便秘。自分に合った整腸剤を毎日飲むことは便秘改善に効果があります。しかし整腸剤がどのような薬であるかを正しく理解せずに服用をやめてしまうと、その効果を実感できません。
また整腸剤には便秘改善の他にもさまざまな効果があり、私たちの健康によい影響を与えてくれます。
整腸剤の服用や食生活・生活習慣を見直すことで腸内環境を整え便秘を解消し、健康的な毎日を送りましょう。
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この記事を書いた人
秋山 祖久医師
国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。