内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

【胃レントゲン検査の真実】初期の胃がんが見落とされる危険性についてお腹のプロが解説

これまでの胃がん検診といえば、胃レントゲン検査(上部消化管造影検査)を行ったのちに異常が見つかった際には胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)を行うのが一般的でした。しかし最近は胃レントゲン検査だと初期の胃がんが見落とされる危険性から、定期的な胃がん検診として、最初から胃カメラ検査を受けることが推奨されています。

今回は、胃がんはどのようにして発生するのか、また初期の胃がんを胃レントゲン検査では見落とされることがあるのかどうかを詳しく見ていきます。

1. 胃がんとは

胃痛のイメージ
国立がん研究センターの統計情報では、胃がんと診断された人は2019年データで124,319例(男性85,325例、女性38,994例)あり、死亡した人は2020年のデータだと42,319人(男性27,771人、女性14,548人)にのぼります。

胃がんの罹患数の男女総数は大腸がん、肺がんに続いて第3位(男性が3位、女性は4位)、胃がんによる死亡数は、肺がん、大腸がんに続いて同じく第3位(男性が3位、女性が5位)と、日本人のがん罹患数・死亡数でも上位に位置しています。

胃がんは胃壁の内側を覆っている粘膜細胞が何らかの原因でがん化したものを言います。胃がんは進行が進むと粘膜下層から固有筋層、漿膜へと外側に広がります。粘膜下層までで止まっているものを「早期胃がん」、固有筋層より深く達しているものを「進行胃がん」と呼びます。

1-1. 胃がんの症状について

初期の胃がんは自覚症状がほとんどありませんが、がんが進行すると胃やみぞおちの痛みや違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振、不快感、食事がのどに詰まったり、体重が減少するなどの症状が起こることがあります。またがんから出血が起きると、貧血が起こったり黒色便が出る場合もあります。ただし、これらの症状は胃がんに限定されるものではなく、胃潰瘍や胃炎などでも確認されるものです。自覚症状が現れたら早急に医療機関を受診するようにしましょう。

1-2. 胃がんの原因

胃がんの主な要因はピロリ菌感染と言われています。それ以外にも飲酒や喫煙、ストレス、塩分過多、刺激物の摂取なども要因とされています。

1-3. ピロリ菌感染

ピロリ菌(ヘリコバクターピロリ菌)は、通常は4~5歳程度の幼少期までに感染するものであって、大人になってから感染することはほとんどありません。

ピロリ菌感染そのものは症状をほとんど引き起こしませんが、ピロリ菌感染により発症する慢性的な胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍が起こることがあります。

通常ピロリ菌は一度除菌してしまえば再感染することはほとんどなく、ピロリ菌の再感染率は1年間で約0.2%程度とされています。この0.2%という数字に関しても、再感染ではなくピロリ菌の除菌がきちんとできていなかったケースであると見られており、ピロリ菌が再感染するリスクはほぼないというのが定説です。

ピロリ菌の除菌治療をしてから次の検査をするまでの期間が短いと、実は除菌できているのに除菌できていないような判定がでることがありますので、きっちり時間を置いてからもう一度ピロリ菌除菌ができているかを検査することが大事です。

2. 胃レントゲン検査と胃カメラ検査の違い

内視鏡
胃がん検診で行われる胃レントゲン検査と胃カメラ検査。普段の検診では特に気にも留めず医師の指示のもとに検査を行っている人は多いのではないかと思います。ここで改めて胃レントゲン検査と胃カメラ検査について詳しく触れておきましょう。

2-1. 胃レントゲン検査とは?

胃レントゲン検査は、正式名を上部消化管造影検査と言います。胃造影剤を用いて発泡剤で胃を膨らませ、レントゲンを胃に照射して撮影します。胃レントゲン検査では、食道や胃、十二指腸に異変がないかをチェックします。体を回転させながら胃造影剤が消化管を流れる様子を観察し、極端に狭くなっている箇所がないかを見ていきます。胃造影剤が粘膜表面を滑り落ちる様子を見ながら、胃ポリープや隆起箇所を確認するのが胃レントゲン検査です。

2-2. 胃カメラ検査とは?

胃カメラ検査とは、正式名を上部消化管内視鏡検査と言います。口や鼻から先端にカメラが付いた内視鏡を挿入し、食道や胃、十二指腸を観察していきますが、直接消化管にカメラを通すため、色や隆起、陥没など消化管の粘膜を確認することができます。

胃カメラ検査では、鼻から内視鏡を通す経鼻内視鏡を使用する場合と、口から内視鏡を入れる経口内視鏡の2つがあります。経口内視鏡を使った検査の場合、内視鏡が舌の根元部分に触れてしまいやすく嘔吐反射が起こりやすいため、負担の少ない検査を希望する人、もともと咽頭反射が起こりやすい人は経鼻内視鏡検査を選択する方がよいでしょう。なお胃カメラ検査では鎮静剤を使用した検査も可能です。

この胃カメラ検査では、病変を発見した際にその場で細胞の一部を取り生検に回すことができます。生検によりがんかどうか、悪性度はどれくらいかなどを詳しく診断することが可能です。

2-3.胃がんは胃レントゲン検査で見落とされる可能性が高い?

初期の胃がんはかなり見つけにくく、5mm以下の初期のがんは本当にわかりづらいと言われています。このような初期の胃がんを胃レントゲン検査で見つけられるかというとほとんどわからないのが実情です。たとえば、胃カメラ検査で発見・特定している初期の胃がんを胃レントゲン検査で描出するのは非常に難しいです。がんがそこにあるとわかっていても、見つけるのが難しいのに、最初から胃レントゲン検査を行って早期胃がんを発見するのは至難の業だと言わざるを得ません。

では胃レントゲン検査で分かるがんはどのようなものかというと、かなり進行している胃がんだということになります。激しく隆起していたり形が分かるぐらいの大きな潰瘍だったり、胃がスキルスで小さくなっていたり、固くなっていたりという場合には胃レントゲン検査でもわかるかもしれませんが、早期胃がんでは難しいでしょう。

3. 胃にできたポリープは取っておくのがよい?

胃のイラスト
ポリープとは診断名ではなく形状を示したもので、丸くて出っ張っているものを総称してポリープと呼んでいます。よく大腸ポリープは耳にすることが多いですが、大腸以外にも、胃や食道、声帯、鼻、子宮、胆のうなどにもできます。

胃のポリープには過形成ポリープや胃底腺ポリープなどがあり、それ以外に腺腫などもポリープの一種として含まれています。胃の過形成ポリープは直径2~3cm程度で赤く表面に凹凸があるもの、また胃底腺ポリープは数mmほどの半球状のポリープであり、複数発生することが多いのが特徴です。

この過形成ポリープや胃底腺ポリープはほぼ胃がんになることがありません。そのため、胃にできたポリープは切除せずそのまま経過観察が取られます。

なお、大腸にも過形成ポリープという同名のポリープがありますが、大腸の場合はポリープを経てからがんになることが多いため、見つけると切除されることがほとんどです。

4. まとめ

定期検査
以上、初期の胃がんは本当に胃レントゲン検査でわからないのかを見てきました。

胃がんは初期の自覚症状がほとんどないがんです。そのため、会社の健康診断や人間ドック、自治体等で行う胃がん検診を定期的に受診し胃がんの疑いがないかを確認しておく必要があります。その際に胃レントゲン検査や胃カメラ検査のどちらを受けたらよいか悩む人がいるかもしれませんが、これからは間違いなく胃カメラ検査を受けるようにしていきましょう。

胃レントゲン検査では初期の胃がんはほとんど確認できないため、気づいた時には進行胃がんになっている可能性が高いです。胃カメラ検査の方が少し費用は高いですがそれほど高額な検査ではありませんので(5,000円~15,000円程度 ※3割負担の場合)、まだ胃カメラ検査を受けたことがない人は、恐れずに受診してみることをおすすめします。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。