内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

胃がん検診は何歳から受けると良い?検査内容やかかりやすい人の特徴について解説

胃がんとは、胃壁の内側の粘膜にがんが発生し、粘膜下層から固有筋層、漿膜へと浸潤していくのが特徴です。粘膜下層までにとどまっているがんを「早期胃がん」、固有筋層以下まで進行したものを「進行胃がん」と呼んでいます。早期胃がんであれば、内視鏡手術で治すこともできますが、進行胃がんとなると開腹手術や薬物療法、放射線治療が行われることとなってしまうため、早期発見が望まれます。

胃がんの早期発見には、定期健診や人間ドックによる検診が欠かせませんが、実際のところ胃がんについては40歳未満の罹患数があまり多くはありません。まれにスキルス胃がんと言われるびまん性胃がんが20代もしくは30代の若い世代に発症することがあることから、健康意識の高い人は若いうちから胃がん検診をするのがよいとも言えます。

今回は、胃がん検診は何歳から受けるのがよいのか、検診内容や胃がんにかかりやすい人の特徴などについても詳しく説明していきます。

1. 胃がん検査は何歳から受けるべきか?

がんとハート
国立がん研究センターの最新がん統計によると、日本国内における胃がんと診断される症例は124,319例(男性85,325例、女性38,994例:2019年データ)、そのうち死亡した人は42,319人(男性27,771人、女性14,548人)にのぼります。がんの罹患数では大腸がん、肺がんに続く第3位ですが、男性は3位、女性は4位とデータからもわかるように男性がかかりやすいがんです。胃がんによる死亡数も男性が3位、女性は5位と男性の順位が高いのが特徴です。

このようなデータを踏まえ、胃がん検査は何歳から受けるべきなのでしょう?

厚生労働省が定める「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年2月4日付け一部改正)」によると、胃がん検診の項目について

検査項目:問診に加え胃部エックス線検査又は胃内視鏡検査のいずれか
対象者:50歳以上 ※当分の間は胃部エックス線検査について40歳代に対し実施可能
受診間隔:2年に1回※当分の間、胃部エックス線検査については年1回実施可能

とされています。これによれば50歳からがん検診を受診するのでよいということになりますが、国立がん研究センターのがん統計データでは、40歳以上の男性は胃がん、大腸がん、肝臓がんなどの消化器系のがんでの死亡率が高くなる傾向にあるため、40代からがん検診を受診した方がよいとも考えられます。

2. 胃がん検診で何が行われるのか?

男性医師
一般的な胃がん検診で行われるのは、

・問診
・胃部X線検査
・胃内視鏡検査
・ヘリコバクターピロリ菌抗体検査
・ペプシノゲン検査

などです。医師による問診後、胃部X線検査や胃内視鏡検査を行い、特に異常が無ければ次回検診は2年後ぐらいに行うのが望ましいです。ピロリ菌抗体検査やペプシノゲン検査は必要があれば行うようにしましょう。

なお検診の結果、異常が発見された場合には精密検査を行い病変の特定を行います。その後治療が必要であれば治療を行っていき、良性の病変であれば経過観察等、医師の診断を仰ぎます。

2-1. 問診

問診では、現在抱えている症状や過去の既往歴、家族歴などが確認されます。

2-2.胃部X線検査

胃部X線検査は、胃や十二指腸内の異常を観察する検査で、バリウム検査としても知られています。バリウムと発泡剤を飲み胃の形や胃壁の表面の凹凸を撮影します。この胃部X線検査により、胃の炎症や潰瘍、ポリープ、胃がんなどの有無を調べることができます。
胃部X線検査は、診断能力の低さや、放射線の問題などもあり、近年では胃内視鏡検査を受けられる人が増えています。

2-3. 胃内視鏡検査

胃内視鏡検査は「胃カメラ」のこと。口や鼻より内視鏡を挿入して食道・胃・十二指腸を観察します。胃の粘膜を直接観察できるので、胃部X線検査よりも精度の高い診断が行えます。検査の際に疑わしい病変が発見された場合には、組織を採取して生検を行うことも可能です。
検診での胃内視鏡検査では鎮静剤を使用することが基本的にないため、苦痛を伴いながら胃内視鏡検査を受けなければいけないケースがほとんどです。

2-4. ヘリコバクターピロリ菌抗体検査

ヘリコバクターピロリ菌の感染は、さまざまな研究により胃がんをはじめ慢性萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因とも言われています。ヘリコバクターピロリ菌抗体検査では、血液や尿を用いてピロリ菌抗体の量を測定し、ヘリコバクターピロリ菌の感染有無を判断します。ピロリ菌は一度でも感染歴があった場合、除菌したとしても胃がんリスクが高くなります。
問題点としては、ピロリ菌に感染していないのに抗体陽性となる偽陽性が一定数いることです。

2-5. ペプシノゲン検査

ペプシノゲン検査とは、血液中にあるペプシノゲンの量を測定することにより、高確率で萎縮性胃炎の程度を調べることができるものです。ペプシノゲンとは、タンパク質の消化酵素のもととなる物質を言い、血液中のペプシノゲンが減少すると胃粘膜の萎縮が強くなります。萎縮が強いほど胃がんリスクが高くなると言われており、胃がんのスクリーニング目的で検査が行われます。

ペプシノゲン検査は、早期胃がんの発見率は高いものの、進行がんや未分化型腺がんの発見には弱いとされています。

3. 胃がんにかかりやすい人の特徴

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胃がんの主な原因として、

ヘリコバクターピロリ菌感染者
喫煙・飲酒
塩分の多い食事

などが挙げられます。

3-1. ピロリ菌感染者

胃がん発生の最大リスク要因としては、ヘリコバクターピロリ菌への感染があります。ヘリコバクターピロリ菌は胃の粘膜において炎症を起こす病原性細菌のことで、感染すると除菌を行わないかぎり長期間胃の中に宿り続けます(稀に、風邪などの時に内服した抗生物質の影響で偶発的にヘリコバクターピロリ菌がいなくなることがあります)。
ヘリコバクターピロリ菌は胃の粘膜を破壊し、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を引き起こすやっかいなもので、速やかな除菌が必要です。さらに長期にわたって感染が続くと、萎縮性胃炎を起こし、胃がん(分化型胃がん)が発生すると言われています。

日本人のヘリコバクターピロリ菌感染者はおよそ6,000万人と人口の約半分とも言われます。若いうちは感染率が低いですが、50代を超えると40%にまで上昇、60代以上だと60%もの人が感染しているとされています。そのため、胃がんリスクを低減するためには、ヘリコバクターピロリ菌抗体検査が有効と言えるかもしれません。

3-2. 喫煙・飲酒

喫煙や飲酒は、胃がんのほかさまざまな病気においても健康リスクの高い要因とされています。

喫煙の健康への影響について、喫煙者は非喫煙者に比べて2倍胃がんになりやすいという研究結果がありますし、飲酒についても飲酒しない人に比べて飲酒の多い人は胃がんリスクが高いといった研究結果が報告されています。特にお酒が弱い人はアルコール分解能が低いため、アルコールに強い人よりも胃がん発症リスクが高くなるので注意が必要です。

3-3. 塩分の多い食事

塩分の多い食事も胃がんリスクを高める要因です。胃の中の塩分濃度が高まると、粘膜が炎症を起こし胃炎が発生。その結果発がん物質による影響を受けやすくなると言われています。塩分過多は高血圧などにも影響を及ぼしますので、普段から塩分の多い食べものの摂取は控えましょう。なおヘリコバクターピロリ菌感染者は、特に塩分の多い食事を避けることが重要です。

4. まとめ

内視鏡
以上、胃がん検診を何歳から受けるとよいのか、胃がん検診の内容や胃がんにかかりやすい人の特徴について紹介してきました。
胃がん自体は若い人の罹患率が低く、40代を超え始めると徐々に発症が多くなるがんです。しかし最近は若い人のスキルス胃がん(びまん性胃がん)も確認されており、年齢問わず胃がんリスクは高くなる傾向にあります。

胃がん検診は胃がんリスクを低減する非常に大事な機会です。なかでも胃内視鏡検査は、直接胃の中を確認できるので正確な診断ができます。最近は麻酔を用いた検査が行われるため、ほとんど苦痛なく検査ができるため、積極的に胃内視鏡検査を受診することをおすすめします。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。