内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

皆さんは大腸カメラ検査を受けたことがありますか?

「痛そうなので受けたことがない」
「一度検診で受けたことがあるが、とても痛くてもう二度としたくない」
「検査の前に飲む下剤がきつい」

大腸カメラ検査というと、大体こういうネガティブな意見をよく聞きます。
しかしながら大腸カメラ検査は、私たちの健康を維持するのに非常に有益な検査です。

それでは今回は、大腸カメラ検査の必要性について解説をしたいと思います。

日本では大腸カメラ検査がお得にできる

福岡天神内視鏡クリニックでは、当院で内視鏡検査を受けるために、海外在住の日本人の患者さんも多数来院されます。

その時によく話をされるのですが、海外、特に米国では大腸カメラ検査の金額が高額であるとのことです。

米国では、地域や病院により大腸カメラ検査の金額が違うとのことですが、1回の大腸カメラ検査で平均30万円もするそうです。病院によっては1回100万円以上するケースもあるとのことです。かなり高額な検査と言えます。

ひるがえって日本ではどうでしょうか?

日本では、保険診療の医療行為は全て全国一律の価格設定になっております。
大腸カメラ検査は、3割負担で支払う金額が観察のみで約7千円程度です。大腸ポリープを切除したとしても、日帰り手術であれば最大で3万円程度で済みます。

つまり、米国の1/10の金額で大腸カメラ検査が受けられることになります。非常に経済的であることがわかります。

それなのに、米国よりも日本の方が大腸がんが多いのが現実です。なぜこのような差が出たのでしょうか?

米国よりも日本の方が大腸がんが多い理由

米国よりも日本の方が大腸がんが多い理由ですが、それぞれの国の検診の受診率の差が原因と言われています。

実は米国では、50歳以上の約67%が大腸カメラを含む大腸がん検診を受けているのに対し、日本では約40%しか大腸カメラを含む大腸がん検診を受けていないというデータがあります。この差はかなり大きいと言えます。

それではなぜ米国ではそんなに沢山の方が大腸がん検診を受けているのでしょうか?

実は米国では、50歳以上の方なら民間保険を使用して無料で大腸がん検診を受けることができるようなシステムになっています。つまり、米国では高額な大腸カメラ検査を無料で受けることができるのです。

もちろん、これは任意型検診になりますので、全員が絶対受けなければいけないということはありません。それでも、無料で大腸カメラ検査を受けられるということは、かなりハードルが下がり、大腸カメラ検査の受診率が上がるというわけです。

それとは別に、このような検診を定期的に受けていなければ、保険料が上がるような仕組みもあるのではないかと予想します。

これが米国の検診率の高さの理由です。

日本の医師の大腸カメラ検査の技術は世界一だと自負しています。これは、海外在住の患者さんからもよく聞きます。

そんな日本の大腸カメラ検査が、米国の1/10の金額で検査を受けることができます。日本は非常に恵まれています。それなのに受診率が低いのは勿体無いです。

2025年には、各種がん死亡率で大腸がんが男女ともに1位になると予想されています。
ぜひ大腸カメラ検査を定期的に受けて、大腸がんを予防しましょう。

大腸カメラ検査で大腸がんが予防できる根拠

「大腸カメラ検査を受けることで、大腸がんが予防できます」

これは、全国どのドクターも口を揃えて熱弁されています。

大腸カメラ検査を受けることが、大腸がんの予防になるというのは、なんとなく当たり前のような気がします。

大腸がんの約8割が、大腸ポリープが成長したものと言われています。
つまり、定期的に大腸カメラ検査を行い、大腸ポリープを発見して切除すれば、大腸がんを予防できるというわけです。

ところが本当にそうなのでしょうか?本当にそれで大腸がんを予防できるという、きちんとしたエビデンス(科学的根拠)が存在するのでしょうか?

もちろん、エビデンスは存在しています。

それでは、「大腸カメラ検査が大腸がんを予防する」というデータを解説したいと思います。

2022年のThe New England Jernal of medicine(NEJM)に掲載された論文です。NEJMは、医師であれば誰でも知っている権威ある雑誌です。

Effect of Colonoscopy Screening on Risks of Colorectal Cancer and Related Death.
The New England journal of medicine. 2022 Oct 27;387(17);1547-1556.

対象は、4カ国(ポーランド、ノルウェー、スウェーデン、オランダ)の55歳から64歳の健康な男女で、過去に大腸がんの既往がない、大腸カメラ検査を含むスクリーニング検査を受けたことがないことが条件となってました。

8万4,585人が対象となり、検査を受けた群(1万1,843人)と、検査を受けない群(5万6,365人)に分けられて解析されてます。

結果ですが、追跡後10年の時点での大腸がんのリスクは、検査を受けた群が0.98%、検査を受けない群は1.20%であり、検査を受けた群で18%の大腸がんのリスク低下が認められたとのことです。

そこまで変わらないのではないか?と思われている方もいるかもしれませんが、10年間だけの解析です。一生涯で考えると、もっと差が出ると予想されます。

いかがでしょうか。やはり大腸カメラ検査を受けることは、大腸がんを予防することになります。

2025年には、各種がん死亡率で大腸がんが男女ともに1位になると予想されています。
ぜひ皆さん、定期的に大腸カメラ検査を受けて大腸がんを予防しましょう。
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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。