大腸がんの原因と発生メカニズムとは?早期発見の重要性を解説
食の欧米化や生活習慣の乱れにより、大腸がんの罹患率が高くなってきています。なぜ食の欧米化や生活習慣が乱れると、大腸がんを発症するのでしょうか?
大腸がんの発症メカニズムはこれまでさまざまな研究がされてきていますが、まだ完全には解明されていません。しかし、大腸がんは、次の5つの発生メカニズムにより発症するのではないかと考えられています。
私たちが大腸がんを予防するためには、大腸がんの発症原因を知り、定期的な大腸がん検診を受けることが大切です。健康な体を維持するために重要な大腸の役割と、大腸がんの基本的な知識を押さえ、体の小さな異変を見逃さないようにしましょう。
この記事では大腸の役割と、大腸がんの発生メカニズム、大腸がん検診に内視鏡検査がおすすめな理由について解説します。
大腸がんにはさまざまな原因が考えられます。原因だけではなく、大腸がんが発症するメカニズムを知ることで、大腸がんがどのような病気であるかがより理解しやすくなります。
大腸がんの原因は一つだけではなく、さまざまな要因が重なり合い発生すると考えられています。大腸がんのリスクを上げるといわれているものをご紹介します。
・肥満
・内臓脂肪
・高身長
・赤肉(牛、豚、羊の肉)
・加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)
・アルコール
・喫煙
・遺伝
これらを引き起こす要因として運動不足や野菜や果物、食物繊維の不足が挙げられます。近年、日本で大腸がんの死亡率が高くなっている背景には食の欧米化が関係しているといわれており、食生活の改善も大きな課題となっているのです。
現在まで大腸がんの発生メカニズムはさまざまな研究が行われてきていますが、いまだ完全に解明されていません。しかし、大腸がんの発生メカニズムには5つのパターンがあると考えられています。
・adenoma-carcinoma sequence
adenoma-carcinoma sequenceは良性のポリープである腺腫が大きくなりがん化したもので、大腸がんの発生メカニズムの中でもっとも多いといわれています。形は盛り上がった隆起型をしており、ポリープが徐々に大きくなっていったものです。
・de novo carcinoma
de novo carcinomaは、正常な大腸の粘膜が直接がん化して発生したものです。形は2種類あり、平らな形をした「表面型」と隆起せずにポリープの中央部がくぼんでいる「陥凹型」です。
de novo carcinomaの場合、がん細胞の大きさに関係なく、小さくてもがんとして発生します。そのため、大きさがどれだけ小さくても注意が必要です。
・serrated polyp neoplasia pathway
serrated polyp neoplasia pathwayは「hyperplastic polup(過形成ポリープ)」と「sessie serrated adenoma/polyp(SSA/P)」の2つの種類があります。
過形成ポリープはadenoma-carcinoma sequenceと比較すると、がん化する確率は低いとされています。がん化する確率は低いとはいえ、その可能性はゼロではないことから発見された場合は切除します。
もう一つのsessie serrated adenoma/polyp(SSA/P)には、日本語表記はありません。鋸歯状(きょしじょう)病変とよばれるポリープが、がん化し大腸がんを発症します。
・dyplasia-carcinoma sequence
dyplasia-carcinoma sequenceは、自己免疫異常が原因となって発生する潰瘍性大腸炎のことです。この炎症が長期間続くとがん化する恐れがあります。
潰瘍性大腸炎が疑われる場合は検査を行う必要があります。検査の結果、潰瘍性大腸炎と診断された場合は、大腸がんになるのを防ぐためにも、継続的な治療が大切です。
・過誤腫のがん化
受精卵が細胞分裂を繰り返し胎児の体を形成していく胎児期に、奇形の一種とされる形態異常の細胞の増加によってできた、ポリープのようなものを過誤腫といいます。過誤腫自体は良性ですが、時間の経過とともにがん化する恐れがあります。
また胎児期による奇形だけではなく、過誤腫ができやすくなる病気があります。代表的なものは「Peutz-jeghers症候群」と「若年性ポリポーシス症候群」です。
これらの病気の検査ではポリープを採取し、良性であるかの確認が必要です。しかし検査時は良性であっても、将来的に見ると大腸がんや胃がんのリスクは高いと考えられています。
そのため、過誤腫がある場合は大腸内視鏡検査や胃の内視鏡検査などが重要です。
大腸がんは、大腸の内側の粘膜に発生する悪性腫瘍です。大腸がんには良性のポリープががん化するものと、正常な粘膜から直接がんができるものがあります。
初期の大腸がんは自覚症状がほとんどないため、症状が現れたときには進行していると考えられます。大腸がんの代表的な自覚症状の一つに血便がありますが、がんの発生部位によって症状は異なります。
大腸の長さは1.5〜2mほどあり、「盲腸(もうちょう)」「結腸(けっちょう)」「直腸(ちょくちょう)」の3つにわけられています。
結腸には便を作る役割があり、体に必要な水分やナトリウムなどの電解質を吸収し、小腸で消化できなかった食物繊維などを発酵させ、便を直腸に送る働きがあります。
結腸は大腸の中でももっとも長く、盲腸から上に伸びる「上行結腸(じょうこうけっちょう)」、上行結腸の上部から真横に伸びる「横行結腸(おうこうけっちょう)」、横行結腸から下に伸びる「下行結腸(かこうけっちょう)」、下行結腸から直腸までつながる「S状結腸(えすじょうけっちょう)」の4つにわけられています。
盲腸・上行結腸・横行結腸は大腸の右側にあります。盲腸の先端には虫垂(ちゅうすい)とよばれる、小指くらいの大きさの袋があります。虫垂自体は退化しており、とくに役割はないと考えられています。
この部位で見られる便は液状であり、また腸管が太いため便通異常の症状はほとんど見られません。またこの部位で出血していても排便までに時間がかかるため、排便したときに血便と認識するのがむずかしく、血便を見逃す場合があります。がんが大きくなり出血による貧血や腹部のしこりができた時点で、はじめて症状を自覚するケースが多いのが特徴です。
がんが大きくなると腸管が狭くなり、下痢や便秘などの便通異常が見られるようになります。さらにがんが巨大化すると便だけではなく食べ物が通過できなくなり、腹痛や腸閉塞のような症状が出現するケースもあります。
直腸とは肛門につながる部分であり便を溜めておく役割を担っています。直腸が便でいっぱいになると便意をもよおし、排便します。
直腸にできたがんを腸がんといいます。直腸は肛門に近いため、この部位にがんができると鮮やかな赤色をした鮮血が便に付着しているため、症状を発見しやすいのが特徴です。がんが大きくなると直腸が狭くなるため、残便感や便の狭小化などの症状が見られます。
大腸がんの自覚症状として、体重減少が見られるケースもあります。
大腸がんで亡くなる人は、近年増加傾向にあります。厚生労働省が発表した『令和元年(2019)人口動態統計(確定数)の概況』よると、日本人の死因の第一位は悪性新生物です。がんの死亡数を部位別でみると、男性の場合は大腸がんと直腸がんを合わせると肺がんについで多く、女性の場合は大腸がんがもっとも多いと発表されています。
4. 大腸がんの早期発見に欠かせない大腸内視鏡検査
初期の大腸がんは自覚症状がないため、症状に気づいたときには進行している恐れがあります。しかし必要以上に恐れる必要はありません。
定期的に大腸内視鏡検査を受けていれば、ポリープが大きくなる前に発見できる可能性が高くなります。もしも内視鏡検査でポリープが見つかった場合、検査中にとることもできるため、大腸がんの予防につながります。
大腸がんの発生メカニズムははっきりと解明されていませんが、発生には5つのメカニズムが関係していると考えられています。いずれにしても、早期発見、早期治療が大腸がんの予防や進行を防ぐためには大切です。
一般的な大腸がん検診では便検査が行われますが、より正確にポリープなどの病変を発見するには、大腸内視鏡検査が有効です。
初期の大腸がんは自覚症状がないため、35歳を過ぎたら定期的に大腸内視鏡検査を受けるようにしましょう。
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この記事を書いた人
秋山 祖久 医師
国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。