内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

ペプシノゲン検査は、直接的に「胃がん」を見つける検査ではないことをご存じですか?

ペプシノゲン検査はあくまで胃がんのリスク要因の代表である胃の萎縮を間接的に予測するだけのものです。

そのため、胃がんにかかっているかどうかを直接検査する胃がん検診では決してありませんので注意してください。

検診や人間ドックなどで「ペプシノゲン検査」という検査を受けたことはありませんか?

「胃がん検診」と称して、ペプシノゲン検査が行われていることがよくありますが、これは大きな間違いです。

確かに採血だけで胃がんの有無が分かれば、これほど楽な検査はないのですが・・・。

ペプシノゲンとは胃の粘膜から分泌される消化酵素ペプシンを作る物質のことであり、食べ物の消化を助ける働きがあります。

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ペプシノゲンの99%が胃の中に出ますが、1%が血液中に入ってきますので、この血液中に出たペプシノゲンを調べるのが「ペプシノゲン検査」です。

胃粘膜の萎縮(胃の老化現象)が進行するほど胃がんが発生しやすくなると言われていますが、ペプシノゲンを調べることで萎縮の程度を大まかに推測できるという原理です(あくまで推測です)。
萎縮はピロリ菌感染があり、胃に長い年月をかけて慢性的に炎症が生じて、徐々に進行していきます。

症例 01 萎縮性胃炎あり(ピロリ菌陽性)【60歳代 女性】

胃粘膜が薄くなり(萎縮)ゴツゴツしている様子が分かります。

症例 02 萎縮性胃炎なし(ピロリ菌陰性)【70歳代 女性】

胃粘膜は厚みを保ち均一な肌色である様子が分かり
ます。
「ペプシノゲン検査が陽性」→「萎縮性胃炎があるだろう」→「胃がんのリスクがある」→「胃カメラを受けてください」ということになります。
では、逆に「ペプシノゲン検査が陰性」であれば「胃がんのリスクなし」と言えるのでしょうか。
答えは「No(ノー)」です。
あくまでも、ペプシノゲン検査は間接的に胃がんを「推測する」だけの検査であり、直接胃がんを調べているわけではないのです。
検診ではペプシノゲン検査を「胃がん検査」と表現されていることがありますが、大きな間違いですし、誇大表現です。あくまで「胃の萎縮があるのかないのか調べられそう」くらいの検査と思っていた方が良いと思います。実際にペプシノゲン検査について、胃がん検診としての効果は立証されていません。
また、次の①、②に該当する人はペプシノゲン検査(胃粘膜の萎縮の程度を推測する検査)を受ける意味は全くありませんので注意してください。
  1. 一度でも胃カメラで胃粘膜萎縮の有無をしっかり確認した人(既に萎縮の有無が分かっているため)
  2. ピロリ菌を除菌した人(胃粘膜の萎縮は除菌後も残るため)

今後も検診の採血項目などで、ペプシノゲン検査は続いていくだろうと思われます。

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ペプシノゲン検査は良い風にとらえるのならば、胃カメラを受けるきっかけに一役買っていると思われます。ペプシノゲン陽性ならば胃の粘膜が萎縮している可能性があるため、「胃がんを早期発見するためにも、そして胃粘膜の状態を確認する意味でも一度は胃カメラを受けてみよう」というきっかけになるのかもしれません。

逆に、ペプシノゲン検査が仮に陰性であっても、「あくまで胃の萎縮がないかもしれない」くらいの意味合いしか持たないとも言えます。ペプシノゲン検査が陰性であっても、ぜひ一度は胃カメラを受けていただいて、胃粘膜の萎縮(老化)があるのかないのかを調べてもらいましょう。そこから将来の胃がんのリスクも推し量ることが可能となるでしょう。

最近では、「ピロリ菌陰性胃がん」も増加しています。
このような方ではペプシノゲン検査は多くは陰性になります。
毎年検診を受けているのですから、胃がんの早期発見のためにはもう一歩だけ踏み込んで、胃カメラまでやってみることを強くお勧め致します。

症例 01 ピロリ菌陰性胃がん

わずかな粘膜の色調の変化(退色)だけですし、萎縮性胃炎は認めませんでした(ペプシノゲン検査陰性)。

早期胃がんとして内視鏡治療のみで完治しましたので、いかに胃カメラでの早期発見が重要かということが認識できます。
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この記事を書いた人

平島 徹朗医師

国立佐賀大学医学部 卒業。
大分大学医学部附属病院消化器内科、国立がん研究センター中央病院内視鏡部など、多くの病院・内視鏡専門クリニックで消化器内視鏡診断・治療を習得後、2011年たまプラーザ南口胃腸内科クリニック開院。