内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

カプセル内視鏡検査で何ができるの?メリットデメリットを徹底解説!

みなさんはカプセル内視鏡検査という検査をご存知でしょうか。過去に大腸カメラを受けて苦痛でつらい経験をした方の中には、大腸内視鏡よりカプセル内視鏡の方がいいと考えている方も多いかもしれません。

また、女性の場合には肛門からスコープを入れる通常の大腸内視鏡に抵抗があり、カプセル内視鏡を考えている方もいるでしょう。飲み込むだけで検査ができるカプセル内視鏡ですが、知っておきたい弱点もあります。

今回は、カプセル内視鏡の特徴とメリット、その弱点について解説します。

1. カプセル内視鏡とは

Capsule endoscopy
カプセル内視鏡検査は、小腸と大腸の観察のみ行える検査です。
胃の中を観察することができません。つまり、胃カメラ検査の代わりにはなりませんのでご注意ください。

カプセル内視鏡は、口から摂取して自然排便と共に体外へ排出されるため大腸カメラなどに比べ苦痛が少ない検査だといえます。

カプセル内視鏡検査の特徴についてお伝えいたします。

1-1. 小腸、大腸の観察のみのための検査

大腸の内視鏡検査が必要な場合、通常ですと肛門からカメラを挿入する大腸内視鏡検査が必要なのですが、手術歴があり癒着が考えられる方や、内視鏡がきちんと挿入することができなかった方にはカプセル内視鏡検査をおすすめする場合もあります。

下から何も挿入しないので、恥ずかしさがなく、水分と一緒に飲み込んで、消化管を通過しながら腸管の内部の写真を撮影することができ、とても手軽に検査することができます。

排出されるまで日常生活を送りながら通常の内視鏡検査では難しかった小腸の内部の映像も撮影することができます。

苦痛はなく、手軽に挑戦することはできますが、カプセル内視鏡は自走性はないので写したい部分を撮影できる訳ではありません。

また、観察だけで処置や治療は行うことはできません。

よって、カプセル内視鏡検査で病変を見つけた場合は、改めて口や肛門からカメラを挿入する内視鏡検査を行う必要があります。

1-2. カプセル内視鏡の大きさ

Capsule endoscopy
カプセル内視鏡はカプセル型の形状をした内視鏡で、サイズは小腸用カプセル内視鏡が長径26mm×直径11mm、大腸用カプセル内視鏡が長径32mm×直径12mmです。
このように、大腸用は小腸用より一回り大きいです。

カプセル内視鏡に小腸用と大腸用があるということは、一度に両方の検査ができないということです。

1-3. カプセル内視鏡の構造とカメラ

カプセル内視鏡の構造は、フラッシュの役割をする白色LED・バッテリー(電池)・画像データ送信機・小型のイメージセンサ(CMOS)が内蔵されています。

イメージセンサ(CMOS)は、スマートフォンやデジタルカメラなどに使われているチップ化されたカメラのことです。大腸や小腸に到達したカプセル内視鏡は、腸管内部を進みながら写真を撮影していきます。

カプセルに内蔵されたカメラは、1秒あたり2~35枚もの写真を撮影しており総数は約5万枚です。腸内で撮影した画像は、体に貼り付けたセンサを経由して腰に装着した記録装置に転送されます。

検査が終了すると専門医は、記録装置に転送された画像データを読影し病変が映っていないか確認します。

1-4. カプセル内視鏡を用いた検査

検査時間は、個人差があるものの平均で約5~6時間かかります。
カプセル内視鏡を服用する前には、下剤を飲み腸内をきれいにする前処置が必要です。
前処置は、通常の大腸カメラ検査でも行われます。

カプセル内視鏡を服用後の検査中も、デスクワークや外出は可能で、大きな行動制限はありません。カプセル内視鏡が体内にあっても、日常生活が送れるため仕事や家事を行うことも可能です。

検査後1~2日でカプセル内視鏡は便と一緒に排出されますので、そのまま流さず拾って病院の提出する必要があります。

2. 小腸カプセル内視鏡

カプセル内視鏡には小腸カプセル内視鏡と大腸カプセル内視鏡の2種類あります。
それぞれについて詳しく解説いたします。
腸
小腸カプセル内視鏡のサイズは長径26mm、直径11mmです。大きめのサプリメントと同じ感覚で服用することができます。

飲み込むときに少し飲み込みづらさを感じることがありますが、飲み込んでしまえばその後の苦痛はありません。

海外では、小腸カプセル内視鏡は小腸疾患全般の診断やクローン病の粘膜状態を確認するために利用されています。

小腸カプセル内視鏡には前方に一つカメラが付いており、レントゲンではわかりにくい小さな潰瘍やびらんを見つけることができます。

2-1. 小腸カプセル内視鏡のメリット

小腸カプセル内視鏡のもっとも大きなメリットは、従来の内視鏡検査では観察することができなかった小腸を観察し画像撮影できることです。

従来の内視鏡では小腸まで届かないことや、もともと小腸の病気自体が少ないことから、小腸は「腸管の暗黒大陸」ともいわれています。ちなみに小腸の疾患は、全消化管の病気のうち1%未満(10万人に1人)といわれています。

3. 大腸カプセル内視鏡

大腸
大腸カプセル内視鏡のサイズは長径約32mm、直径約12mmです。大腸カプセル内視鏡は、小腸カプセル内視鏡よりも一回り大きくなります。

前後にカメラを搭載しています。体に貼り付けた画像を受信するためのセンサーを経由して腰に装着した記録装置に転送していくのです。カプセルは、腸の蠕動運動によって肛門に向かい自然排泄されます。

4. カプセル内視鏡のデメリット

カプセル内視鏡のデメリット
カプセル内視鏡は、飲み込むだけで小腸や大腸の状態を撮影できる画期的な検査方法です。また苦痛も少なく体外へカプセル内視鏡が排出されれば、検査も終了します。

ただしカプセル内視鏡検査には、メリットもありますがデメリットとなる弱点もあります。

4-1. 保険適応になるのはごく限られた場合のみ

小腸、大腸共に非常に限定的な疾患や症状のみに保険適用となります。
保険適用の条件に当てはまらない場合には、自費診療となるため1回の検査で10〜12万円ほどの高額な費用がかかります。
保険証

小腸カプセル内視鏡の保険適用

小腸カプセル内視鏡検査は、2007年10月に保険適用になりました。
当時は、原因不明の消化管出血に対する検査のみに適用され、消化管狭窄が疑われる病気は適用外となっていましたが、2012年7月には、病気で消化管が狭くなっている場合にも保険適用になりました。

これは、消化管開通性確認用のカプセル(パテンシーカプセル)が保険適用になったためで、小腸カプセル内視鏡は小腸疾患全般の検査として使用できるようになったのです。

パテンシーカプセルとは、バリウムを固めて作られたダミーカプセルで、消化管が狭くなっている可能性がある場合に使用します。
まずはパテンシーカプセルを飲んでもらい、消化管の開通があることを確認した後、改めてカプセル内視鏡で本検査を行います。

小腸カプセル内視鏡で見つかる主な病気は以下の通りです。

● クローン病
● ベーチェット病
● 小腸ポリープやがんなどの腫瘍
● たんぱく漏出性胃腸症
● NSAIDs潰瘍
● 小腸憩室
● メッケル憩室

一般的には、3割負担で30,000~35,000円の費用がかかります。また、保険適用になる症例が決まっているのも特徴です。小腸カプセル内視鏡検査がどのような場合、保険適用になるのかをまとめてみました。

● 従来の胃カメラ・大腸カメラ検査を受けたが異常がない場合
● 原因不明の消化管の出血がある場合
● 下痢・腹痛をきたす症例がある場合
● 消化管狭窄・狭小化がある場合や疑われる場合(パテンシーカプセルを使

大腸カプセル内視鏡の保険適用

2014年1月に保険適用になった大腸カプセル内視鏡は、以前行った大腸内視鏡検査が困難で、大腸全体の検査ができなかった場合に受けられます。

麻酔などを使用する必要もなく、カプセルを服用したは小腸カプセル内視鏡と同じく通常の生活を送れます。

大腸内を広げることがないため、カメラが通過することによる痛みを感じることはありません。
大腸カプセル内視鏡で見つかる主な病気をまとめてみました。

● 大腸型クローン病
● 潰瘍性大腸炎
● 大腸ポリープやがんなどの腫瘍
● 大腸憩室症

大腸カプセル内視鏡検査が保険適用になる場合は以下になります。

● 以前大腸カメラ検査を受けたことがあるが、大腸の奥まで到達できなかった場合
● 腹部の手術歴や大腸が長く大腸カメラの挿入が困難と予測ができる場合
● コントロール不能な便秘がある場合
● 高血圧・慢性閉塞性肺疾患・慢性心不全があり大腸カメラの挿入が困難と予測できる場合

4-2. 観察だけで処置ができない

カプセル内視鏡が撮影した画像に病変を疑うものが映し出されていても、その場で処置することはできません。

カプセル内視鏡は小腸または大腸を通過する際にどのような状態なのかを撮影するのみです。つまり、観察だけしかできない医療機器になります。

撮影された画像の中に病変を見つけた場合には、精密検査が必要になります。小腸の精密検査では、小腸内視鏡検査が行われます。小腸内視鏡検査で使用されるスコープは、2mの長さがある特殊なものです。

そのスコープを口または肛門から挿入し検査を行いますが、検査時間が長くかかり体への負担も大きいため入院が必要になります。

大腸で病変が発見された場合には、再度下剤や洗腸剤を服用し大腸をきれいにしてから大腸カメラ検査を行います。腫瘍やポリープがないかを大腸カメラで観察し発見すれば、生検鉗子を用いて腫瘍の一部を採取し、ポリープと判断できればその場で切除する処置が行われます。

カプセル内視鏡では観察だけで処置ができないため、もし病変を発見した場合には再度内視鏡検査を行い処置が必要です。

4-3. 検査画像の読影に時間がかかる

カプセル内視鏡では、小腸や大腸で撮影される画像データ数が約5万枚になります。それらを一枚ずつ専門医が読影し病変がないかを確認します。そのため検査結果が出るまでに時間がかかります。

お腹が張る、便秘や下痢が続くなど不安な症状がある場合には、できる限り早く結果を知りたいと思うでしょう。

カプセル内視鏡は、苦痛なく飲み込むだけで検査できるメリットがあるものの解析に時間がかかるというデメリットがあるのです

4-4. 検査後の後処理が面倒

カプセル内視鏡は検査日からおおよそ1~2日後に排便と共に体外へ排出されます。カプセル内視鏡は、医療廃棄物になるためそのまま便と一緒に流すことができません。

検査後、便意があれば医療機関から渡された紙を便座に敷き便の中からカプセルだけ取り出し医療機関に持って行く必要があります。便意がなかなかない場合は、下剤を服用しカプセルを排出させたり、場合によっては手術でカプセルを摘出することもありま

5. まとめ

カプセル内視鏡検査は、飲み込むだけで小腸や大腸の病変の有無を確認できる検査です。観察のみ行える検査で、病変を発見できても処置ができません。

病変が発見された場合には、精密検査として小腸や大腸の内視鏡検査をする必要があります。

また、保険適用に当てはまる条件がごく限られており費用もかかります。病変を疑うような症状がある場合には、専門医とよく相談しカプセル内視鏡を使用するのかを判断した方がいいでしょう。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。