胃がん健診には、バリウムを飲む胃レントゲン検査と胃カメラ検査があります。会社などで実施される胃がん健診では、胃レントゲン検査と胃カメラ検査のどちらかを自分で選択できるケースも多いですが、皆さんはどのように選んでいますか?
胃カメラ検査は苦痛だから、体や精神的に負担が少ないからといった理由で胃レントゲン検査を選択される方も多いと思います。
しかし、胃レントゲン検査にはメリットもあればデメリットもあります。胃がん健診を受ける一番大きな目的は胃がんや胃潰瘍の早期発見です。小さな病変を見逃さないためにも、胃カメラ検査をおすすめします。
この記事では、胃レントゲン検査の特徴と注意点について解説します。
胃レントゲン検査とは、バリウムといわれる造影剤と胃を膨らませる発泡剤を飲み、X線を連続的に照射しながら、胃の中の粘膜の凹凸などを撮影する検査です。バリウムを飲むと胃の中の粘膜にバリウムがベターッと貼りつき、レントゲン撮影をすると胃がんや潰瘍でできた粘膜の凹凸が観察できるため、胃がんや胃潰瘍などの病気を発見できます。
胃レントゲン検査の正式名称は「上部消化管X線検査」といいます。
胃レントゲン検査は、前日から準備が必要です。夕食を早めに済ませておき、当日の飲食はできません。前日の夕食時間は、検査を受ける医療機関や検査機関の指示を守りましょう。胃の中に食べ物が残っている場合は、検査が受けられません。
一般的な検査の流れは以下のとおりです。
①問診をする
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②発泡剤を服用する
発泡剤を服用するとゲップが出そうになりますが、検査終了まで我慢が必要です。
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③バリウムを飲む
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④台に乗り、レントゲン撮影をする
台に寝転がり、仰向けやうつ伏せ、左右に体を回転するように指示があります。さまざまな角度から胃を撮影します。
胃レントゲン検査は検査終了から約30分後に緩下剤(かんげざい)を服用する必要があります。緩下剤を服用する理由は、バリウムは体内に吸収されないので、便として排出する必要があるためです。検査後はなるべく多くの水分を飲んで、できるだけ早く便を出すようにしましょう。排出される便は白色なのでびっくりするかもしれませんが、問題ありません。
胃レントゲン検査には、いくつかのメリットがあります。
胃レントゲン検査は、バリウムと発泡剤を飲んですぐにレントゲン撮影ができるので、検査時間は胃カメラと比較すると、短いのが特徴です。一般的には約10分程度で終了します。医療機関によって異なりますが、比較的予約も取りやすいのが特徴です。
胃レントゲン検査は胃カメラ検査と比較すると費用が安く、大勢の人を対象として検査を行う場合に向いています。検査の結果、異常が見つかった場合は胃カメラ検査が必要ですが、異常がなければ検査費用を抑えられます。
胃レントゲン検査に限らずどんな検査でも、メリットがあればデメリットもあります。胃がん健診の場合は、胃カメラ検査と胃レントゲン検査のどちらかを選択できるため、胃レントゲン検査のデメリットをしっかり把握しておきましょう。
胃レントゲン検査はバリウムが胃の中の粘膜に糊のように貼りつき、その影をX線で撮影する検査なので、凹凸がほとんどない小さな病変は見逃されてしまうケースがあります。
特に初期の胃がんは、凹凸ができずに粘膜の色が変わるだけなので、胃の粘膜の凹凸をみる胃レントゲン検査では正常と判定されてしまうのです。
レントゲン検査は放射能を使用して撮影するため、どの部位の検査であっても少なからず被爆します。胃レントゲン検査の被曝量は、胸部レントゲン検査の約150倍〜300倍といわれています。胃レントゲン検査は、さまざまな角度から胃を撮影しますが、写真を撮影している時だけではなく、検査中はずっと放射能を浴びている状態です。
人体に影響を及ぼす線量ではないとされていますが、被爆していることには違いはありません。被爆は発がんと関係があるため、できれば避けるほうがよいでしょう。被爆するリスクが高いことから、医療従事者や消化器内科の医師では、胃レントゲン検査を受ける人はほとんどいません。
胃カメラ検査と比較すると体の負担や苦痛を軽減できると思われがちですが、実は胃レントゲン検査の際に飲むバリウムが飲みづらくて苦痛を感じる方も多くいます。バリウムは飲みやすいように味がついているものもありますが、胃の凹凸をしっかり見るために粘度が高いため、水のように一気には飲めません。
また、バリウムを飲む前に胃を膨らませる発泡剤も飲みますが、この発泡剤はガスを含んでいるためゲップが出やすい状態になります。しかし、検査が終了するまでゲップを我慢しないといけないため、胃レントゲン検査に苦手意識を持つ方もいます。
胃レントゲン検査を終えるとバリウムを排出するために、緩下剤を服用します。バリウムがうまく排出されずに腸の中で固まってしまうと、腸が破裂して便が腹部内に出てしまい腹膜炎になったり、腸閉塞(ちょうへいそく)などの重篤な症状を引き起こしたりする恐れがあります。そうした場合は、緊急手術が必要です。
腹膜炎の場合は開腹手術によって一時的に人工肛門を造設し、腸を休めて便を外に排出する必要があります。人工肛門は直腸がんの治療の一つとしてよく知られていますが、この場合の人工肛門は半年ほど経過してから、人工肛門をとる手術が必要です。
4. 胃がん健診には胃カメラ検査と胃レントゲン検査、どっちがいい?
胃カメラ検査と胃レントゲン検査のどちらを選択したらいいのか迷う場合は、胃カメラ検査をおすすめします。消化器内科の医師はもちろん医療従事者のほとんどは、胃がん健診を受ける場合、胃カメラ検査を選択します。
胃カメラ検査を選択する理由は、胃レントゲン検査で何か異常が見つかった場合に、胃カメラ検査を受ける必要があることや、胃レントゲン検査では発見しにくい病変を胃カメラ検査なら発見できるためです。
胃カメラ検査のメリットはいくつかありますが、その中でももっとも大きなメリットといえるのが、小さな病変を発見できることです。
胃カメラ検査は内視鏡を使用して直接、胃の中の粘膜を観察できます。1mm程度の小さな病変も発見でき、さらに内視鏡のズーム機能で気になる病変を拡大し、詳細に粘膜表面の観察が可能です。
また、胃の粘膜の色で疑わしいと思われる病気の見当をつけることができます。たとえば、粘膜が赤くなっていると炎症が疑われ、白色の場合は早期の胃がんを疑われます。胃カメラ検査は、胃レントゲン検査では判断が難しい胃粘膜の形状や色まで観察できるのです。
胃カメラ検査と胃レントゲン検査の大きな違いは、病気の早期発見が可能かどうかだけではありません。胃カメラ検査の場合、検査中に気になる部位を見つけたときに、その場ですぐに組織を採取し、顕微鏡で組織を詳しく調べる「生検組織診断」に出せます。しかし、胃レントゲン検査では気になる病変が見つかった場合、後日胃カメラ検査を行って生検を受ける必要があります。
胃カメラ検査を選択しない理由でもっとも多いのが、苦痛だからというものです。しかし、鎮静剤を使用して眠った状態や意識がぼんやりした状態で検査を受けられる医療機関も多くあります。
鎮静剤を使用した場合、注意点が一つあります。それは、鎮静剤を使用すると、検査後の交通手段に制限があることです。検査終了後も鎮静剤の効果は数時間継続するため、車の運転は控えなければいけません。そのため、検査当日は公共交通機関の利用や送迎を依頼する必要があります。
胃レントゲン検査には、メリットとデメリットがあります。胃がんは早期発見、早期治療が大切です。胃がんの早期発見という観点から見ると、胃レントゲン検査では初期の胃がんを発見できない恐れがあるため、胃カメラ検査をおすすめします。
胃カメラ検査は苦痛を伴うと思う方も多いかもしれませんが、鎮静剤を使用したり、胃カメラ検査の実績が多い医師がいる医療機関で検査を受けたりすることで、苦痛を軽減できます。胃の病気がある方も胃の症状がない方も、健康を維持するために定期的に胃カメラ検査を受けましょう。
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この記事を書いた人
秋山 祖久医師
国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。