尿素窒素(BUN)の数値から何がわかるの?数値が高い原因・低い原因や改善方法を解説!
普段、私たちが行う健康診断ではさまざまな項目について詳しく知ることができますが、その項目のひとつに尿素窒素(BUN)があります。
尿素窒素からは腎臓の働きや体に重要なたんぱく質や代謝を把握することができますが、実際のところ、患者さんは尿素窒素の検査値について知らないことがほとんどで、医師でもあまり知らないのが現状です。ただし、数多い検査項目の中でもこの尿素窒素の値を重視している医師もおり、見逃せない検査項目でもあります。
そんな尿素窒素(BUN)の数値からどのようなことがわかるのでしょうか?尿素窒素が高いまたは低いとどのような症状があるのでしょうか?
一般的な健康診断では数値が異常に高いと気にする人は多いものの、数値が低い場合にはあまり気にしない人がほとんどだと思います。ただし、低ければ低いほど良いというものでもありません。
そこで今回は、尿素窒素(BUN)ついてくわしく解説していくとともに、尿素窒素が低い場合の改善方法についてもご紹介していきます。
尿素窒素とは、タンパク質が体内で代謝されたのちにできる老廃物のこと。健康診断の「腎機能」の項目に入っているもので、尿素窒素(BUN:Blood Urea Nitrogenの略)、クレアチニン(Cr)と書かれているので目にしたことがある人もいると思います。検査では尿素内の窒素を測定して数値を算出します。
この尿素窒素の基準値は、通常基準値が8~21mg/dlとされており、15mg/dl以上であれば高い、15mg/dl未満だと低いと考えられています。尿素窒素は腎臓でろ過されたのち尿として体外に排出されますが、腎機能に問題がある場合には、ろ過しきれない尿素窒素が残ってしまうことから数値は高くなります。
尿素窒素について語るうえで外すことのできない腎臓の基本的な働きについても知っておきましょう。
腎臓は背中側の腰骨上部に左右1つずつあるにぎりこぶし程度の大きさ(約150g)の臓器です。体内環境を最適に保つためのさまざまな機能を持つ重要な臓器のひとつとされています。
そんな腎臓には、大きく5つの働きがあります。
・老廃物を尿として体外に排出する
・血圧を調整する
・体内環境のバランスを保つ
・血液を作るサポートを行う
・ビタミンDの活性化により骨を強化する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
腎臓はコーヒーのフィルターのように血液をろ過して体に溜まった老廃物や水分、塩分などを尿と一緒に体外に出してくれます。一方で必要なものは再吸収して体内にとどめる働きもあります。この機能が低下すると老廃物や毒素が体内に蓄積されてしまい、透析を受けなければならなくなる場合もあります。
腎臓は、塩分量と水分量をコントロールすることで血圧を調整します。
血圧が高い時は、塩分と水分を排出させて血圧を下げます。逆に、血圧が低い時は、塩分と水分の排出を抑制することで血圧をあげます。
また、腎臓から血圧を上昇させるホルモンを分泌して血圧を上げる作用もあります。
腎臓は、体内のイオンバランスを調整したり、体内に必要となるカルシウムやカリウム、リンなどを取り込む機能を持っています。腎機能が低下すると血液中のカリウムの値が上昇してカリウムが溜まってしまい、不整脈が引き起こされる場合もあります。
腎臓ではエリスロポエチンというホルモンが分泌されており、赤血球の数を調整する役割を持っています。腎臓が正常に機能しなくなると、赤血球が十分に作られずに貧血などの症状が現れることがあります。
腎臓ではカルシウムを体内に吸収させる作用を持つビタミンDが作られます。活性型ビタミンDは腸からカルシウム吸収を助ける働きがありますが、腎臓の機能が低下するとカルシウムの吸収ができず、骨が弱くなるなどの症状が現れることがあります。
このようなさまざまな機能を持つ腎臓ですが、上記でも紹介したように腎臓が正常に働かなくなるといろいろな腎機能障害が発生するほか、老廃物が蓄積したりするなどの症状が現れます。そこで、尿素窒素の数値を見ることで腎機能の状態だけでなく腎臓の排泄能力を知ることができたり、機能障害や病変がないか体の栄養状態を把握することができるのです。
尿素窒素の数値を把握することは、腎臓の状態を知る上で非常に大事ですが、それ以外で医師が気にして見ているのはタンパク質の量です。
尿素窒素で何がわかるのかというと、上昇している場合には腎機能障害や脱水症状などが疑われます。一方で下降している場合にはタンパク質の摂取が足りていないかビタミンB6不足などが疑われます。尿素窒素はタンパク質の代謝において最終的にできる産物であるため、数値が高いか低いかでタンパク質が体の中で代謝されているのかいないのかがわかります。
人間の体は水分が60%、タンパク質(アミノ酸)は20%、あと脂質糖質などで構成されているため、タンパク質量はとても重要で、タンパク質が少ないと体にさまざまな不調が生じてきます。
以下は尿素窒素が高い場合、また低い場合で疑われる疾患例です。
タンパク質は体の細胞を作る材料のひとつでもあり、タンパク質が不足するとさまざまな症状が現れます。たとえば、体が疲れやすくなったり、食欲がなくなる、やる気がなくなったりするなどが代表的な症状です。また筋肉もタンパク質から作られるため、筋量が落ちることで体がだるくなったりすることもあります。
一般的に成人に必要とされる1日の推奨タンパク質摂取量は、標準体重1kgあたり1.0~1.5gとされていますので、50kgの女性の場合では50kg×1.0~1.5g=50g~75gが必要です。たとえば卵1個に含まれるタンパク質は約6.2g、納豆1パックは約6g、肉類のたんぱく質は100gあたり約15~20g(種類や部位によって異なる)ですので、食事だけでたんぱく質を摂取するのは少々難しいと言えるかもしれません。
また、ビタミンB6はエネルギー代謝の補酵素として重要なビタミンで、タンパク質の分解を助ける成分です。タンパク質だけを摂取していても代謝が回らずタンパク質が増えない原因につながるので、ビタミンBも併せて摂取するとタンパク質がより吸収されやすくなるといったメリットがあります。
では摂取すべきタンパク質やビタミンB6が不足している場合、どのように補ったらよいでしょうか?
当然、不足分を補うには普段の食事が大事です。たとえば、タンパク質であれば食事で摂れない分をプロテイン摂取などで補うように努力しましょう。なおプロテインには植物性と動物性のものがありますが、植物性プロテイン(ソイプロテイン)がおすすめです。プロテインを摂取する際には、タンパク系の食べ物を最初に摂取したうえで、血糖値の上昇とインスリンの分泌を抑えることで肥満を防止する「プロテインファースト」といった考えで臨むとよいでしょう。
一方、ビタミンB6は水溶性ビタミンのため尿で排出されてしまい、体内に貯めておくことができません。そのため、毎日十分な量を摂取する必要があります。豚肉などにもビタミンB6が多く含まれていますが、腸内環境を良くすることで8種類のB群とビタミンKを腸内細菌が勝手に産生してくれます。
腸内細菌がビタミンB6を作っていることは多くの方が知らないと思いますので、食事をきちんと摂り乳酸菌もしっかり摂取して腸内環境を整えるだけで約3割のビタミンを賄うことができることについてはぜひ知っておくと良いでしょう。
いずれにせよタンパク質、ビタミンB6ともに継続して摂取できるよう習慣化することが重要です。
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この記事を書いた人
秋山 祖久医師
国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。