十二指腸潰瘍とはどんな病気?消化器科内科専門医がその原因や治療法について詳しく解説
ストレスなどを抱えたり、薬剤の副作用によって胃や腸がきりきりと痛む、そんな時は胃潰瘍や十二指腸潰瘍が疑われます。胃潰瘍に比べ十二指腸潰瘍の患者数はそれほど多くありませんが、生活習慣や食べ物の欧米化により、十二指腸潰瘍にかかる人も増えてきています。
なお厚生労働省が発表した「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況)」によると、令和4年には2,543人が胃潰瘍または十二指腸潰瘍で亡くなっており、軽く考えていると命を落としかねない危険な病気のひとつでもあります。
今回は、十二指腸潰瘍とはどんな病気なのか?その原因や治療法について詳しく説明していきます。
十二指腸とは、指を横にして12本分の長さほどであることで名付けられた消化器官です。実際の長さは約30cm程度と言われています。十二指腸は小腸の一部で、胃と小腸をつなぐ胃腸管の先に位置しています。
十二指腸潰瘍とは、この十二指腸部分に潰瘍ができてしまうことを言いますが、胃酸の刺激により炎症を起こし十二指腸の粘膜がただれてしまっている状態を指します。
十二指腸潰瘍で起きる症状として最も多いのが腹痛です。特に空腹時に痛むことが多く、右上腹部や背中あたりに痛みを感じます(十二指腸は背中側に位置するため)。自覚症状がない人もいますが、腹痛に加えて胸やけや胃もたれ、吐き気、げっぷ、食欲不振などが併せて起こるようであれば十二指腸潰瘍の疑いがあります。
十二指腸の粘膜は非常に薄く、十二指腸潰瘍が進行した場合には、粘膜から出血が起き、血便や下血、さらには貧血などの症状が出ることがあります。また、十二指腸の壁に穴が開く十二指腸穿孔は緊急手術が必要となることもあるかなり危険な状態です。
本来胃や十二指腸は健康な状態であれば、粘膜による防御作用によって強い胃酸でも粘膜が傷つかないようになっています。しかし、この防御作用が何らかの原因によってうまく機能しなくなった場合、その部分が胃酸にさらされ粘膜を傷つけてしまい十二指腸潰瘍を発症してしまいます。
十二指腸潰瘍になる原因はさまざまですが、
・ヘリコバクターピロリ菌の感染
・非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の服用
・胃酸の過剰分泌
・過度なストレス
・アルコールや喫煙
などが主な原因となります。この中でも、特にヘリコバクターピロリ菌の感染が圧倒的に多いと言われています。
ヘリコバクターピロリ菌とは、胃の中に生息する糸状の細菌です。このヘリコバクターピロリ菌は強酸にさらされた胃の中でも活動できる厄介な細菌で、このヘリコバクターピロリ菌に感染すると、十二指腸の粘膜が傷つき潰瘍を引き起こします。ヘリコバクターピロリ菌の感染により粘膜萎縮が起こるとがんの発症にもつながるため、適切に除菌を行う必要があります。
2-2. 非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の服用
非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)とは、頭痛などの痛みや炎症を抑えたり、解熱目的で使用される薬を言います。代表的なものとしては、イブプロフェン、アセトアミノフェン、ロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン)、ナプロキセン、インドメタシンといったものがあります。
これらの非ステロイド性消炎鎮痛剤を長期間にわたり服用すると、十二指腸の粘膜が減少し潰瘍を引き起こします。薬の服用で腹痛が起きるようであれば服用をすぐに停止し、消化器内科を受診しましょう。
先ほど紹介したヘリコバクターピロリ菌の感染により、菌が胃の上皮に付着して胃酸分泌を抑制する因子が壊されると、胃酸の過剰分泌が起こることがあります。胃酸が過剰分泌されることで、十二指腸の粘膜を傷つけてしまい十二指腸潰瘍を発症してしまうのです。胃酸の過剰分泌が起こると胸やけや腹痛といった症状が起こるため、気になるようであれば医療機関に相談してみるとよいでしょう。
過度なストレスも十二指腸潰瘍の原因のひとつです。現代社会の中でストレスを抱えずに生きるのは非常に大変です。そのため、子供から大人まで幅広い人がストレスにより潰瘍を引き起こす可能性があります。仕事や勉強の悩み、人間関係、睡眠不足などは、過度にストレスを引き起こす要因です。
ストレスがどのように潰瘍を発症させるかというと、十二指腸を胃酸から保護している粘膜は血液によって運ばれていますが、過度なストレスを受けることにより血管が狭くなり、血流が悪くなって粘膜が十分に供給されなくなります。その結果、粘膜が胃酸から保護できなくなり、潰瘍の発症につながります。
過剰なアルコールの摂取、喫煙などの嗜好品は、胃酸の分泌を刺激し十二指腸潰瘍を引き起こす原因となります。
たとえば、アルコールについてはたしなむ程度(ビールであれば中瓶1本、日本酒なら一合程度)であれば、ストレス解消にも良いかもしれません。しかし、大量かつ高濃度のアルコールの摂取により胃酸の粘膜を破壊してしまいますので注意が必要です。
また喫煙についてですが、喫煙者は非喫煙者よりも十二指腸潰瘍を発症するリスクが高いという調査結果もあるなど、体に良いことはありません。また喫煙によって粘膜への攻撃因子の働きを強めてしまいますので、ヘビースモーカーの人は本数を減らしたり、禁煙することも検討してみましょう。
十二指腸潰瘍の検査・診断は、医師による問診で症状の確認や食生活などの確認が行われた後、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)が行われるのが一般的です。胃内視鏡検査により、ヘリコバクターピロリ菌の有無やその他病変の確認も行えます。
その他、血液検査や尿素呼気試験なども行われることもあります。
十二指腸潰瘍の治療については、基本的に入院はせずに薬物治療や食事療法がとられます。処方される薬は、胸やけを抑えるもの、胃酸の分泌を抑えるもの、吐き気を抑えるものなど患者さんの症状に合わせて出されます。また、十二指腸からの出血や十二指腸内で穿孔が起きている場合には入院治療が必要となる場合があります。十二指腸穿孔の手術は腹腔鏡手術での対応が可能ですが、炎症がひどい場合には開腹手術となることもあります。
十二指腸潰瘍の治療期間は潰瘍の程度にもよりますが、プロトンポンプインヒビターの6週間内服が保険適応となっており、これにより9割の人が改善できるとされています。
十二指腸潰瘍を発症したら、食事についても気を付ける必要があります。暴飲暴食は避け、腹八分を心掛けましょう。また、消化の悪い根菜類や脂の多い食べもの、香辛料などの刺激物も避けましょう。
また飲み物についても注意が必要です。たとえば、コーヒーや紅茶などにはカフェインが含まれており胃酸の分泌を増進させるため、薄めのコーヒーを飲む、ミルクを入れるなど胃や、十二指腸に負担をかけないように気を付けましょう。炭酸飲料も胃酸の過剰分泌を誘発しますので、できるだけ控えるようにしましょう。
以上、十二指腸潰瘍とはどんな病気なのか?その原因や治療法について紹介してきました。
十二指腸潰瘍は胃潰瘍と違って発見しにくい病気です。腰痛や背中に痛みがあると整形外科を受診しがちですが、長くその痛みが消えない状態が続くようなら、消化器内科で胃内視鏡検査を受診してみることをおすすめします。
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この記事を書いた人
秋山 祖久医師
国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。