内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

玄米&納豆が最強?日本人に効果的なヤセ菌を増やす食べ物について詳しく解説

「ヤセ菌」と呼ばれるバクテロイデーテス門の菌と「デブ菌」と呼ばれるファーミキューテス門の菌。この2つの菌の比率を測る「F/B比(ファーミキューテス門とバクテロイデーテス門の比率)」が高いほど太りやすいとされる検査サービスが一時期話題になりました。

しかし最近の研究では、この考え方が日本人には必ずしも当てはまらない可能性が指摘されていて、ヤセ菌とされてきたバクテロイデーテス門の菌が、食べ物から効率的にエネルギーを吸収する働きを持っており、結果的に太りやすくなるという見方が出てきたのです。そのため、これまでの「ヤセ菌」「デブ菌」の概念が覆されつつあると言われています。

もし、なかなか思ったように痩せない、食生活に気をつけているのに痩せる傾向が見えないという人は、腸内環境における「ヤセ菌」「デブ菌」の考え方を見直してみるとよいかもしれません。

今回は、日本人に効果的なヤセ菌について、またヤセ菌を増やす食べ物について詳しく解説していきます。

1. ヤセ菌とは?

体重計に乗る人
ヤセ菌とは、腸内に存在する腸内細菌のうち体重のコントロールや脂肪の蓄積を抑える働きを持つとされる細菌のことを指します。特定の細菌の名前ではなく、いくつかの腸内細菌のグループを総称した言葉です。近年、腸内環境が肥満や健康状態に与える影響が注目される中で、特にこの「ヤセ菌」に関連した研究が進んでいます。

2. ヤセ菌に対する欧米と日本の違い

日米の国旗
2010年以降、欧米では「アッカーマンシア・ムシニフィラ菌(アッカーマンシア菌)」という菌が新たなヤセ菌として発表されました。アッカーマンシア菌については、菌の役割や有用性について欧米と日本との間で考え方に違いがあります。

2-1. 欧米でのアッカーマンシア菌の役割

アッカーマンシア菌については、欧米人にはアッカーマンシア菌が腸内に多く存在しており、体重やBMIが高い人、高血糖や高脂血症の人にはアッカーマンシア菌が少ないことがわかっています。そのため、アッカーマンシア菌が多い方がダイエットや健康に良いとされています。アッカーマンシア菌が少ないと、いくらダイエットを頑張っても効果が出にくい場合があるため、この菌が注目を集めるようになりました。

2021年には、低温殺菌されたアッカーマンシア菌が「肥満をコントロールする食用菌」として欧州食品安全機関(EFSA)に承認され、海外ではアッカーマンシア菌の整腸剤やサプリメントが販売されるようになりました。ただし、欧米製品は欧米人の体重に基づいて作られているため容量が多く、日本人が使用する際には注意が必要です。

2-2. 日本人とアッカーマンシア菌

日本人の腸内にはアッカーマンシア菌がほとんど棲みついていません。アッカーマンシア菌が有効に働くためには、腸内細菌の1%以上を占める必要がありますが、これを満たす日本人は10%未満と言われています。そのため、日本人にとってアッカーマンシア菌は必ずしも効果的ではない可能性が高いのです。

先ほどのサプリメントについても、日本人が使用したとしてアッカーマンシア菌が効率的に働く環境を持つケースが少ないため、そもそも摂取しないほうが賢明です。

日本人の腸内には、酪酸菌が多く存在することが特徴とされています。酪酸菌は腸の動きを活性化し、腸内環境を整えるため、日本人にとってはアッカーマンシア菌よりも酪酸菌を増やす方が効率的で、その酪酸菌を増やすには食物繊維をしっかり摂取することが大切です。

3. 日本人におすすめのヤセ菌「ブラウティア・エクセレラエ菌」とは?

味噌汁と納豆ご飯
そもそも欧米人と日本人では腸内環境が大きく異なります。そのため、日本人にとってのヤセ菌を探る研究が進み、アッカーマンシア菌よりも「ブラウティア・エクセレラエ菌(ブラウティア菌)」がヤセ菌の候補として注目されるようになりました。

3-1. ブラウティア菌とは?

ブラウティア菌は、かつて「デブ菌」とされていたファーミキューテス門に属する菌で、日本人の腸内には欧米人より多く存在しているものです。2019年の弘前大学の研究にて、内臓脂肪が少ない人にブラウティア菌が多いことが明らかになり、その後2022年には肥満や糖尿病の予防・改善に寄与する可能性があると報告されました。これにより、日本人にとってブラウティア菌は新たなヤセ菌として期待されています。

3-2. ブラウティア菌の特徴

ブラウティア菌は、日本人の腸内細菌において平均で約3%の割合を占めていますが、その効果を十分に発揮するには6%程度の割合が理想とされています。日本人の約9割が腸内細菌の1%以上にブラウティア菌を持っており、多くの人がブラウティア菌を増やす可能性を秘めていると言われています。

3-3. ブラウティア菌を増やす方法

現在、ブラウティア菌を直接含む食品やサプリメントは存在しません。そのため、自分の腸内にいるブラウティア菌を増やすことが重要となります。

ブラウティア菌が好む食材には次のようなものがあります。

・食物繊維: 大麦、玄米など
・発酵食品: 味噌、納豆など
・バランスの良い食事: 三大栄養素を適量摂取

普段からこれらの食品を積極的に摂ることで、ブラウティア菌が増えやすい環境を作れます。特に日本食や和食がブラウティア菌を育てるのに適しており、昔ながらの朝食として、玄米ご飯や味噌汁、納豆などが理にかなっているとされています。しかし一方で、欧米化した食生活が広がるにつれて腸内環境が乱れ、腸漏れ(リーキーガット)の人が増えていることも指摘されています。

3-4. ブラウティア菌はビフィズス菌と相性が良い

ブラウティア菌はビフィズス菌と相性が良いとされており、ビフィズス菌を増やすことでブラウティア菌も増えることが期待できます。そのため、ビフィズス菌を含む整腸剤や食品を併用するのも効果的です。

4. デブ菌についても知っておこう

ジャンクフード
日本人特有のデブ菌として「フシモナス菌」があります。この菌を多く持っている人は、肥満になりやすくインスリンの効き目が悪くなるため、糖尿病のリスクも高まると2023年に発表されました。フシモナス菌は、かつて「デブ菌」として知られたファーミキューテス門に属しており、日本人の腸内ではヤセ菌とされるブラウティア菌も同じファーミキューテス門に属しているのが特徴です。

まだ研究段階で詳細は明らかになっていませんが、フシモナス菌は高脂肪食を好むとされており、脂肪分の多い食事が腸内のフシモナス菌を増やす原因になる可能性があります。このことから、肥満や糖尿病を防ぐためには、脂肪分の摂取量を抑え、腸内環境を整えることが重要だと考えられます。

5. まとめ

以上、日本人に効果的なヤセ菌について、またヤセ菌を増やす食べ物について紹介してきました。

欧米人と日本人は元々の腸内細菌の種類が違っており、欧米ではアッカーマンシア菌がヤセ菌として注目されサプリメントも販売されていますが、日本人の腸内にはほとんど存在していないなど、日本人の腸内環境には従来の「ヤセ菌=バクテロイデーテス門、デブ菌=ファーミキューテス門」という概念が当てはまらないことがわかってきました。

その代わり、日本人にマッチするヤセ菌「ブラウティア菌」が新たに発見され、日本人の食生活に欠かせない和食に多く使用される大麦、玄米、味噌、納豆などを好むことがわかっています。また日本人特有のデブ菌「フシモナス菌」が、高脂肪食を好むこともわかってきました。

現在思ったように痩せないと嘆いている人は、ブラウティア菌を腸内で増やす食事を摂ること、フシモナス菌を増やす高脂肪食を摂らないようにすることで、腸内環境を整えつつ健康的なダイエットにつなげることができるようになりますので、意識した食生活を心掛けましょう。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。