内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

体の不調原因を細かく解析!一般の血液検査とは違う栄養解析について詳しく解説

栄養解析は血液検査の一種で、普段の検診や内視鏡検査前の採血では絶対に見ないような70項目の採血データをもとにレポートが作成されます。たとえば、この栄養解析ではビタミンDの濃度、亜鉛の濃度、フェリチンという肝臓にどれぐらい鉄が貯蔵されているか、などが確認できます。

一般的な検診だと「基準値より高いから異常」といった具合に、高い数値を出したものが異常とされる場合が多くあります。しかし数値が低すぎるのも問題で、栄養素が足りてないことがあるわけです。このように栄養療法では低い数値を拾っていき、栄養状態の改善を図るために栄養素の投与が行われます。

今回は、栄養療法とはどのようなものか?栄養解析で何がわかるのか?について詳しく説明していきます。

1. オーソモレキュラー栄養療法とは?

血液検査
オーソモレキュラー栄養医学による栄養療法とは「分子総合栄養医学」とも呼ばれるもので、血液検査の結果を生化学や栄養学などに基づいた解析によって、ひとりひとりに合わせた食事やサプリメントのアドバイスを行い、必要な栄養素の補給により細胞の合成や修繕などといった体の改善を図る治療法で、いわゆる血液の深読みをしていくものです。

1960年代にカナダで精神疾患の領域治療にてスタートしたオーソモレキュラー栄養療法ですが、現在は世界中のさまざまな診療科でも取り入れられています。オーソモレキュラーという言葉は、ギリシャ語で正しいを意味する「ortho」と分子を意味する「molecular」の造語で、ライナス=ポーリング博士によって使用されたのがはじまりとされています。

2. 栄養解析でわかること

検査結果
たとえば栄養状態を知るのに総たんぱく(Total Protein)を見たりすることがあると思いますが、総たんぱくからだけでは栄養状態を正確に判断することができません。体に大事な栄養素としてたんぱく質やビタミンB群、ビタミンDなどがあります。最近はビタミンDが特に注目されていますが、ビタミンDは免疫や筋肉量、骨粗鬆症にも関わっており、栄養解析を行うとビタミンDの血中濃度がどれぐらいかを確認することができます。

また、普段の食生活でタンパク質を十分摂っているつもりがうまく吸収できてないことも栄養解析で分かります。

2-1. 肝臓や腎臓機能の状態もわかる

さらには、肝機能の指標であるAST(GOT)・ALT(GPT)などは肝機能だけで普通は評価しますが、タンパク質の代謝状態からも肝臓の状態を判断することが栄養解析では可能です。

他にも腎臓の機能の指標であるBUN(尿素窒素)の場合、普通は腎臓の働き具合を見ているのですが、これも栄養解析によってタンパク質の代謝状態を見ます。

普段絶対見ないであろうデータから深読みして、うまく栄養素が吸収されているかどうかを見たりできるのが栄養解析の特徴です。

2-2. LDL(悪玉)コレステロール値が高いと良くない?

コレステロール値が高いと良くないという話はよく問題とされますが、心臓に疾患がある人であればコレステロールが高いと狭心症や心筋梗塞を起こしやすいものの、普通の人の場合は、ある程度高い方がよいとされています。コレステロールは細胞膜やホルモンの材料でもあるため、低すぎるのは良くありません。

実際のところコレステロール値が低すぎると長生きしないというデータもたくさんあります。そういう情報も栄養解析で見るとよくわかります。

3. 栄養解析がおすすめの人はどんな人?

キッチンに立つ高齢者夫婦
栄養解析がおすすめの人としては、体の本当の栄養状態を知りたい、不足しているものが何なのかを知りたいといった人です。「数値が高いから良くない」というのではなく、「低いから栄養状態が良くない」「こういうのを取った方がいい」ということがより詳しくわかるのが栄養解析の最大の特徴です。

よって、健康にすごく気を配っている人に行ってもらうと非常に効果的と言えるでしょう。自分の体が今どういう状態にあるのか、免疫が高いのか低いのか、骨粗鬆症になりやすいのかそうでないのかがわかります。

4. 栄養解析からわかる現代人のビタミンD不足

ビタミンDのサプリメント
年齢とともに筋力や心身の活力が低下し、介護が必要になりやすい虚弱な状態や概念のことをフレイルと言います。このフレイルになる原因の一つとして、ビタミンD不足があります。加齢などで筋肉量が減少すると活動量が減り、エネルギー消費が低下して食欲が低下してしまいます。その結果たんぱく質などの摂取が減るため栄養が不足することとなり、結果として筋肉量が少なくなるわけです。栄養解析ではフレイルになるかどうかもわかります。

4-1. フレイルとビタミンDとの関係

フレイルになる状態においては、ビタミンDとの関係性が強いとされています。現代ではビタミンD不足(ビタミンD欠乏:20.0ng/mL未満)の人が非常に増えていますが、ビタミンDには免疫を調節する作用があるので、不足している人はサプリメントを摂取するなどを積極的に行う必要があります。

最近は日焼け予防のため直接日光に当たらない人が多く、女性の場合は8割ぐらいの人がビタミンD不足と言われています。その結果、骨粗鬆症や筋肉量の低下、骨折転倒、免疫の低下による感染症、発がんなどを引き起こしやすくなってしまうため、ビタミンDはすごく大事な栄養素であると言えます。

4-2. ビタミンDと花粉症

花粉症にもビタミンDの摂取はとても効果的です。ビタミンDは腸とも関係が深く、腸の粘膜がビタミンD不足になると上皮細胞の隙間が開いてしまいいらないものまで吸収してしまうことがあります。その結果、いらないたんぱく質や不消化なたんぱく質まで腸の中に取り込んでしまい、アレルギー症状を起こしたりすることがあるのです。

しかし、ビタミンDをしっかりと摂取することで、上皮細胞における隙間が少なくなるため、花粉症などのアレルギーが改善されます。

4-3. ビタミンDと脳の関係

ビタミンDは脳の神経伝達物質の働きを潤滑にし、神経伝達物質の生成と調整を助けてくれます。神経の伝達が良いということは脳の機能が良くなることを意味し、認知症予防につながるのではないかという期待も最近は高まっています。

5. 栄養解析から隠れ飲酒もわかる?

ビール
栄養解析の結果からは、普段お酒を飲んでいるかどうかもわかります。赤血球の大きさを調べるのに平均赤血球容積(MCV)という検査項目があるのですが、飲酒習慣があるとこのMCVが高くなる傾向があります。

よくお酒関連で見られるデータとしては、たんぱく質を分解する酵素の一種であるγGTPが有名ですが、栄養解析を行うことで、普段とは違う角度から飲酒傾向がわかったりするのも特徴のひとつです。

6. 数値が高いイコール異常ではない

尿酸値
栄養解析では、低い数値を拾うことで不足している栄養素を補おうとする栄養療法が取られます。日本の血液検査の場合「数値が高い=異常」と判断される傾向が強く、これによりさまざまな併害が起こることがあります。

たとえば、「コレステロールが高すぎるから良くない」となれば、女性の場合ホルモンの関係で高くなることは往々にしてあります。
また、尿酸値が低すぎる人はがんになりやすいとも言われており、低すぎるのがよくないケースです。尿酸値は高いと痛風などになりやすいため高すぎもよくはありませんが、低すぎるのも代謝が悪かったり免疫が低かったりという指標になるため、栄養解析によって低い数値をしっかりと拾っていくことも健康にはとても大事です。

7. まとめ

男性医師
以上、栄養療法とはどのようなものか、栄養解析で何がわかるのかについて紹介しました。

栄養解析は一般的な血液検査よりも深読みし体の状態を細かく分析するものです。この解析結果からは、普段の検診では異常がないと言われたものでも健康上よくない数値を拾い出し、不足している栄養素を見つけて体質や症状の改善を目指します。

「健康のためにどのような栄養を摂ったらいいかわからない」「健康に気を使っているもののあまり改善が見られない」といった方は、一度栄養療法を受けてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。