内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

迷ったらコレを飲めば安心!自分に合った整腸剤の選び方について解説

日々の健康は、腸内環境の良し悪しに大きく左右されます。食生活の乱れやストレス、生活習慣の変化で腸の働きが低下すると、便秘や下痢、さらには肌荒れや免疫力低下など、全身に影響が広がることもあるでしょう。そんなとき、整腸剤を摂取すれば腸内環境を整え、健やかな日々をサポートしてくれる強い味方となります。

とはいえ、市販の整腸剤は数も多く、どれを選んだらよいかよくわからないという人も多いのではないでしょうか。今回は、自分に合った整腸剤の選び方について詳しく解説していきます。

1. 腸内環境を改善してくれる乳酸菌

腸のイメージ
整腸剤と乳酸菌には密接な関係がありますが、乳酸菌は腸内の善玉菌として働き、腸内環境を整える役割を果たします。整腸剤には、こうした乳酸菌やそれに類似した成分が含まれていることが多く、腸内環境の改善をサポートしてくれます。

ちなみに乳酸菌は、小腸にある免疫細胞を刺激して、免疫を活性化するスイッチを押してくれる役割があります。小腸には「パイエル板」という免疫をコントロールする場所があり、乳酸菌を取り続けることでこのスイッチが常にオンの状態になり、免疫が活性化し続けてくれるのです。

意外かもしれませんが、健康な人の体でも1日に約5,000個のがん細胞が自然に生まれています。ただ、免疫システムが正常に働いていればそれらをしっかり排除してくれるため、がんは発生しません。しかし、加齢や生活習慣などで免疫力が低下すると、がん細胞を排除しきれず発がんのリスクが高まります。

免疫細胞は、体内の異常な細胞やエラーを修正してがん細胞の発生を防ぐ重要な働きをしてくれますが、免疫力が高いほど体を守る力が強くなり、その免疫を強化する助けをしてくれるのが乳酸菌と言われています。

2. 整腸剤によって乳酸菌を摂るメリット

乳酸菌を摂ることは、生活習慣病の予防につながります。一見、乳酸菌と肥満、高血圧、高血糖、脂質異常といった生活習慣病の原因とは関係なさそうに思えますが、これら4つのうち3つ以上に当てはまると、生活習慣病のリスクが30倍になると言われています。乳酸菌は、この4つを予防する力があると言われています。

たとえば、乳酸菌には脂質を脂肪酸に分解して脂肪の吸収を抑える働きがあり、肥満を防いでくれます。また、血管を若々しく保つことで動脈硬化を予防、血圧を下げるサポートをしてくれる機能もあります。さらには、血糖値の上昇を緩やかにし、脂質異常症の原因となる悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールとのバランスを整える効果もあります。

ほかにも、乳酸菌は心を落ち着かせて自律神経のバランスを整える働きもあります。「腸脳相関」という考え方では、腸と脳が神経でつながり、互いにシグナルを送り合っています。腸で作られる「セロトニン」という幸せホルモンがその代表です。

このセロトニンの8~9割が腸で作られ、気分が落ち着き、幸福感が得られるとされています。腸を整えることで、体だけでなく心の健康も支えられるのです。

3. 乳酸菌を摂る際のポイント

薬を飲む男性
「生きたまま腸に届く乳酸菌」といったCMをよく目にしますが、これには少し注意が必要です。

一般的に乳酸菌は、培養という方法で数を増やします。培養期間が長いほどたくさん乳酸菌を増やせますが、時間がかかると菌が死んでしまうこともあります。そのため、「生きたまま腸に届く」と宣伝されている製品は、短期間で培養されていることが多く、菌の数が少ない可能性が高いです。

乳酸菌の働きで免疫を活性化させるには、数が多いことが重要で、実は死んでいる乳酸菌(死菌)の方が長い時間をかけてたくさん培養できるため、乳酸菌の数を増やしやすいのです。死菌は免疫を上げる効果が期待でき、生きた菌が少数届くよりも効果的だと言われています。生きた菌が少し腸に届いても、整腸作用がわずかにある程度で、免疫を高める効果はほとんどないのです。

腸内環境を整えるためには、乳酸菌を「兆」単位で摂ることが理想的とされています。腸内には約1,000種類、100兆もの腸内細菌がいるため、それに負けないくらいの乳酸菌が必要で、目指すべきは腸に1兆以上の乳酸菌を送り込むこと。数が多い乳酸菌を選ぶことが、腸と免疫を元気にするポイントとなります。

4. 市販されている代表的な整腸剤

色々な薬
薬局で売られている整腸剤は本当に種類が多く、どれを選べばいいか迷うことがあると思います。ここでは代表的な整腸剤のなかからおすすめのものを特徴別にまとめてみました。

4-1. 乳酸菌とビフィズス菌が入った整腸剤

・ラクエイド
・新ビオフェルミンS錠
・ザ・ガードコーワ整腸錠α3+
・ヤクルトBL整腸薬

これらの整腸剤には、腸内の善玉菌を増やす乳酸菌やビフィズス菌が含まれており、腸内環境を整える効果が期待できます。

なかでもラクエイドは、1日に乳酸菌を1兆個、ビフィズス菌を200億個摂取できる整腸剤。1ヶ月で乳酸菌を30兆個摂ることができます。善玉菌のエサとなるキシロオリゴ糖も含まれており、腸内環境をさらにサポート。乳酸菌が産生する有用物質(乳酸菌産生物質)が直接体に吸収されます。
またヤクルトBL整腸薬は、ヤクルトに含まれる乳酸菌シロタ株とミルミルに含まれるビフィズス菌BY株が入っているため、ヤクルトを飲むより断然いいです。

4-2. 酪酸菌が入った整腸剤

・ビオスリーHi錠
・強ミヤリサン錠

酪酸菌は腸内のエネルギー源となり、腸の動きを活発にしてくれる働きがあります。ただし、酪酸菌が入った整腸剤はあまり多くありませんので、ご紹介した2つの整腸剤がおすすめです。

酪酸菌の良い点は、腸内環境を整える短鎖脂肪酸の一つである酪酸を作り出すことにあります。酪酸は、腸の蠕動運動を活性化するエネルギー源として働き、腸の動きをサポートしており、実際に腸の蠕動運動の約8割が酪酸によって支えられています。そのため、体内の酪酸が不足すると、蠕動運動が低下し便秘や便通異常の原因になることがあります。

なお、酪酸は余った分が他の臓器でも利用されるため、非常に効率的な働きを持つのも特徴です。ただし、免疫を向上させる効果はやや弱めとされています。

おすすめの整腸剤として紹介している強ミヤリサン錠には、医療用処方薬「ミヤBM」と同じ酪酸菌が含まれています。1錠あたり約5,000~6000万個の酪酸菌が含まれており、1日3錠摂取すれば合計1億8000万個程度を摂ることができます。ただ、この量はやや少なく、市販薬より医療用の酪酸菌の方が数は多いです。腸の調子を整える目的で摂取するには強ミヤリサン錠で十分ですが、免疫力を大幅に向上させたり、がんや感染症を予防する効果を期待するには難しい場合があります。

4-3. 乳酸菌・ビール酵母が含まれた整腸剤

・強力わかもと

強力わかもとには、乳酸菌に加えてビール酵母が含まれており、栄養補給にも役立つ成分が入っています。

4-4. ビール酵母だけのサプリメント

・エビオス

エビオスには乳酸菌は含まれていませんが、腸内環境を整えるビール酵母が主成分として含まれています。ただし、15歳以上の場合は1日30錠が必要で、さらに整腸剤を併用すると40錠近く飲むことになり、量が多くて負担に感じることがあります。

5. 整腸剤はいつ飲むのが良い?

サプリメント
整腸剤のパッケージには「1日3回服用」と書かれていることが多いですが、実はこれを分けて飲む必要はありません。一度にまとめて飲んでも、効果に違いはないとされています。医学的には、1日3回に分けて飲むことに特別な意味はなく、自分の生活スタイルに合わせて服用すれば問題ありません。

6. 整腸剤はどれくらい飲み続けるべき?

サプリメントを飲む女性
整腸剤を試す場合、まずは1ヶ月続けてみるのがおすすめです。まれに、整腸剤を飲んで便秘になったりお腹が張ったりすることがあるかもしれません。特にSIBO(小腸内細菌過剰増殖症)の人の場合、整腸剤が逆効果になる場合もあります。

SIBOのような特別な疾患がない場合は、整腸剤を1ヶ月間試してみて、自分の腸に合うかどうか確認してみると良いでしょう。効果を感じられない場合や症状が悪化する場合は、早めに医師に相談することをおすすめします。

7. まとめ

お腹に手をあてる女性
以上、自分に合った整腸剤の選び方について紹介してきました。

整腸剤を選ぶ際、特に重要となるのは含まれる菌の「数」です。腸内で効果を発揮するためには、一定以上の量が必要となります。

また、整腸剤には乳酸菌やビフィズス菌、酪酸菌などさまざまな種類があり、それぞれ腸内環境に与える効果が異なります。たとえば、便通を整えるもの、免疫力を高めるもの、腸内細菌のバランスを改善するものなどさまざまあるので、自分の体調や目的に合った整腸剤を選ぶことがとても大切です。

どの整腸剤が自分に合うかは、実際に試してみたり医師に相談して見つけましょう。自分に合った整腸剤を選ぶことで、腸内環境の改善が期待できます。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。